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温かいお茶とともに
温かいお茶とともに

最近、急に秋が深まって寒くなりましたね。

金木犀の花もあっという間に散って、乾いた風が街の中を駆け抜けています。

すぐにこれが木枯らしになって、北風の冷たさに手足の先を温める時期になることでしょう。

夏場、冷たい飲み物をペットボトルで買っていたのに、いまは病院内で温かいお茶を飲むことが多くなりました。

人の感覚とは不思議な物で、いくら天気がよくてもこれだけ冷えるとアイスやジュースなどに食指が動かないものですね。

病院では各自のマグカップがあって、お湯を沸かすことが出来ます。

本人の好みで各自、様々なお茶を入れています。

もともとコーヒーを飲むことができないため、基本的に紅茶党ですが、今はフレーバーティーを始めとして、パッケージも見た目も美しくて可愛らしいお茶が沢山あって幸せです。

お茶というのは基本的に同じ茶葉から出来ているそうですね。

緑茶も番茶もほうじ茶もウーロン茶も紅茶も発酵の度合いが違うだけで、皆兄弟の様な物なんだそうです。

緑茶に含まれる成分には、カテキン、テアニン、ビタミン、カフェインなどがふくまれ、中国の三国時代の医薬書「神農本草」にも記載があるように、古来より薬効がよく知られています。

「朝茶は七里帰っても飲め」という諺があるように、朝飲むお茶は厄よけであり健康を守るためにも有効な手段と言えます。

ただこれは薬効のことだけではなく、お茶を入れてこれを飲む時間を作り、これからの一日に備え気持ちを準備する、ということが失敗を避け、怪我や不慮の事故から身を守る一助になる、ということを含んでいるように思えます。


朝はとかくばたばたと忙しなく、ゆっくりとお茶を入れ味わう余裕もなく家を出発する、というのが朝に弱い私の定番なのですが、焦れば焦っただけ忘れ物はする、出かけに足を引っ掛けて転ぶ、気持ちだけ急いてイライラする、と良いことが一つもありません。

早起きに関しても、「早起きは三文の得」などのように格言は多く、ようするに余裕を持って行動すること、そのための時間管理をすること、ひいては前日早く眠ること、眠れない様な行動は慎むこと、など全体の生活についての見直しを迫られ、やや気が遠くなります。

思い返せば子供の頃から、宵っ張りの朝寝坊で夜はなかなか眠れないのに、朝はぐずぐずと起きられず、母に叱られた物でした。すぐ下の弟は目覚ましが鳴る前に目を覚ましてさっさと起きるタイプでしたので、弟からしても理解不能の宇宙人を見るごとき目線で見られていたように思います。

こればっかりは何故だかどれだけ早く寝ようとも、一度眠ると寝汚く布団からでられないタイプで、低血圧だからとか、睡眠不足だから、というよりはもう性質なのではないか…と真剣に悩んだこともありました。

一番眠っていたのは、おそらく高校の頃でしょうか。帰ってきてそのまま眠り夕ご飯を食べ勉強をしてまた11時くらいに眠り、朝7時くらいに起きる、それでもまだ眠かったのです。 大学に進んで眠り病という名前を聞いたとき(これは寄生虫病です)、自分がこれなのではないか、と思ったものでした。

でもそうではなく、あれは逃避だったのだろうと思うのです。

受験勉強が辛くて、学校が辛くて、兎にも角にも安寧は眠りの中しかなかった、だからいくらでもそこへ逃げ込んでいた、ということだったのだと。

体力的な問題で眠るのではなく、精神的に疲弊してひたすら睡眠を取っていたのは、ある意味ストレス解消だったのでしょう。それでバランスを保っていた、と言えば聞こえは良いですが、朝私を起こす母は相当苦労したはずなので、申し訳ない気持ちで一杯です。


今どうしてそう思うかというと、朝起きられないということが大学に入ってからほとんどなくなったからです。

私は町屋から相模原まで通学していましたので、大体一時間四十分、片道にかかります。ですから当然起きる時間は早くなりますし、授業もぎっちり詰まっています。その後部活動をすれば夜終電近くになることもざらでした。

それでも毎日が楽しくて楽しくて、前期日程が終わった後、夏休みが二ヶ月もある、と気づいた時にどうしたら良いのか分からなくなったのを覚えています。

その当時から今までずっと仲の良い親友達に、恥を忍んで前期日程の最終日、「ねえ、明日から大学休みで皆に会えないと、何していいか分からないんだけど…」と打ち明けると、「私も!」「そう思ってた!」と同意の声があがり、取りあえず次に会う日を決めてようやくホッとしたのでした。

今考えると、本当に楽しい六年間でした。これだけ楽しいなら朝寝坊している暇もありませんし、眠りに逃避している場合でもない訳です。

卒業した後は、これは正しく肉体的にも精神的にも疲労して、起きるのに苦労しましたが、あの学生時代のような物とは一線画していたように思います。

要するに、どこに立って良いか分からなかった、何をしてどこへ向かうかに明確な目標を決めきれず、その先の未来に確定がないことに怯えていた時代は、朝が来るのが苦痛であり、逆にそれが明確になって目標と覚悟がしっかりと定まってからは、朝が待ちきれなかったのです。

あの時、眠りに逃げることしか出来なかった私は、一歩間違えれば今で言う引きこもりになっていたのかもしれません。動きたくない気持ちだけをかかえて、外に出ることをやめてしまっただろうと。

そうならなかったのは、家族がいてくれたからです。

朝起きるのが辛いということをただの怠惰として扱わずに、だからといって決して諦めずに起こし続けてくれた家族に、心から感謝したいと思います。


そうやって昔のことを冷静に分析できるようになるまでに大分かかりました。

私にとっては過去になりましたが、今現在、そうやって悩んでいる方がいたら、実はそういうことかもしれないよ、と言いたいです。

置かれている状況は、いやでも変化します。

同じ日は来ない、同じでいることは出来ない、平凡で変わりばえのない毎日が積み重なって、それが遠い未来にたどり着くのでしょう。

だから、今をゆっくり見つめて、それからこの先を少しずつでも見て行けば良いのだと思います。

今悩んでいることもいずれ過去になるのですから。

動物達よりゆっくりと進む私たち人間の時間には、そのくらいの時間はあります。

日が暮れるのが早くなったのをみながら、なんと開院から四年目になったジャンボどうぶつ病院の診察室で、時の流れに想いを馳せる秋でした。

2016-10-15

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