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小学校時代の電車通学
小学校時代の電車通学

年明けしてはやひと月、めまぐるしい時間の流れにその実感が湧きません。

妙に気温が低くない日々が続いているせいもあるのでしょうか。

いまいち現実感のない忙しない日々を毎日ワタワタと過ごしております。

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ジャネーの法則というのをご存知でしょうか?

19世紀フランスの哲学者、ポール・ジャネーが提唱し、その甥である心理学者のピエール・ジャネーが著作で紹介したもの。

主観的に記憶表象される年月の長さは、生活年齢に反比例して年少者にはより長く、年長者では短く評価される、という考えです。

反論はさまざまになされていて、人により年齢が実感させる時の流れの早さは異なり、実際加齢による実感される時間は反比例より緩やかであるとされています。

確かにジャネーの法則に基づいた計算式で導き出した実感時間を見ると、今の私の年齢ではなんと一年間が8日となっていたので、これは流石に短すぎるなあと思いました。

でも小学生の時の一学期、夏休み前までの時間は、今の一年くらいにはなっている気がします。

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あの頃、夏休みまでがやたらに長くて、毎日毎日続く学校生活は永遠のようにすら思っていました。

今の小学校のように教材を学校に置いておくことを推奨してくれるなんてなかったので、ギッチリと詰まった教科書とノートがコードバンのランドセルを余計重くし、肩にがっしりとのしかかります。背中とランドセルの背当ての間に汗をかき、被った通学帽子の下にも神が額に張り付くほど汗をかきました。電車通学だったので、冷房の聞いた車内に入ると一気に汗が冷えてそれが爽快でした。決して学校が大好きだった子供ではなかったのですが、通学途中に見る都心の街並みは好きでした。

お堀に枝を伸ばす桜が春には川面をピンク色に染め、入道雲を担いだ聖橋と強い日差しに白く浮かぶ東京ドーム、秋は市谷駅のそばの公園に積もる落ち葉の赤と黄色。スノーブーツを履いて登校するときは、お隣の私立中学の壁に積もった雪は小さな雪だるまになって飾られていました。

片道子供の足で40分程度、毎日同じようで変わり続ける風景はいつもワクワクするもので、その通学路を決して遠く感じたことはないのです。よく学校が遠くて大変ねえと言われることがありましたが、正直それが当たり前すぎて近所に歩いて登校する学校のイメージがいまだに浮かばないのです。

チェーンにガッチリしたゴムがついた定期券、忘れないように、落とさないように、すぐに駅員さんに見せられるように、みんな同じようにランドセルの肩紐の下の方につけていましたっけ。子供と印字されたそれは使う経路によって色が違ったり、背景の柄が違ったりして個性がありました。申込書に書いた手書きの名前がそのまま印刷されていてなんとなく特別感もありました。定期券入れは革製で黒か朱色が多かったように思います、当時は子供用のビニール製の可愛いものなんてあまりなかったのでしょう。

朝のラッシュ時に電車に乗れば、ランドセルは邪魔者でしたので、心無い大人に意地の悪い言葉をかけられたり、ひどい時にはランドセルの上にカバンを置かれたりしました。

今でも忘れないのが、黒いクマの刺繍のスタジアムジャンパーをきた中年のご婦人で、毎回ものすごい勢いでランドセルを押してくるのですが、こちらも毎日に通学している歴戦の小学生ですので、意に介さず両足で踏ん張って立っていると、一緒に降車した駅のホームで舌打ちをされながら「子供は1時間くらい早く乗りなさいよ!」と怒鳴られたことでしょうか。恐れるどころか怒りに燃えた私は「1時間前なんて学校開いてません!」と言い返したものですから、一層憎々しげに睨んで去っていきました。まあ、満員電車の小学生は珍しいでしょうし、身長も低くて邪魔だったでしょうし、仕方のないことでしたが、大人は全てが正しい生き物ではない、ということをあの当時学んだなと思います。

痴漢もいましたし、酔っ払いもいました。優しい大人も怖い大人も気持ちの悪い大人もいました。それまで真綿でくるむように育てられていた子供にとって、親の庇護なしに社会の縮図のような混んだ電車に放り込まれたことは、非常にいい体験だったと思います。

大人に混じって通学する小学生たちは、当たり前のように親以外の人々は全て警戒対象でしたし、危うい雰囲気をいち早く察知する能力に長けていた気がします。甘言に惑わされることもなく、防犯ブザーがなくとも怪しいそぶりの大人からはまず逃げる。危ない気配というのはその人からだけでなく、それを見つめる周辺の大人たちのそぶりからも推察できるものなので、あれもまた学習だったのだと思います。

人身事故での遅延もしょっちゅうありましたが、乗り換え案内の検索もできないのに、皆ちゃんと他の路線に乗り換えて通学していました。

子供であっても、その場で起こることに対してどう振る舞うべきかを、一人の間として頭を使い判断しなければならない、ということを携帯電話のない時代の子供は理解していたのだと思います。それは今から思えば、大変貴重な教育であったのだという思いを禁じ得ません。

ひっきりなしに轟音と共にやってくる地下鉄に乗り、乗り換えて地上に出てまた電車に乗る。電車は毎日乗るもので、色々な人のさまざまな姿が見られるもの。

そんな電車通学が私は好きでした。

電車の中だけは大好きな本をいくら読んでも誰も怒らなかったのもあって、本当に楽しい時間でした。

ただ、電車通学は辛くなかったけれど、長時間の電車通勤は辛かったですね。

片道2時間弱は流石に長いなあと感じましたし、当時は家にいる時間が睡眠時間を入れても約6時間程度しかなかったので本を読む隙もなく、ただひたすらに寝ていました。

世の電車通勤の社会人の方々、本当にお疲れ様です。お休み明けでまだ本調子ではなく、暖房と外気の寒暖差で余計に眠くなってしまうとは思いますが、どうか終電で寝過ごし、目的の駅を通り過ぎないでくださいね。

治安の良い日本ですが、嫌な思いをすることだってあるはずですから。

お財布にはチェーンが必要かもしれません。

かつての子供達の定期券のように。

2024-01-31

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