動物病院HOME < 院長のコラム < 自分が望む自分でいること
謹んで初春のご挨拶を申し上げます。
そしてこのめでたい年の始まりに、よりにもよってインフルエンザに罹患いたしまして、スタートダッシュから皆様にご迷惑おかけしまして、大変申し訳ありませんでした。
まさかまさかの十数年ぶりのインフルエンザ!
今回、息子からうつされたので、ワクチンを打っていたにも関わらずかなりのしんどさでした……!
なぜ子供からうつされたときって、強毒株になっているんでしょうね…お子様をお持ちのお母様方がこぞって頷くのですが、先にかかった子供の方はすぐに全快するのに、大人は絶対にそれより長く患いますよね。
そう、もしかして、これが加齢…?
いえいえ、彼らの健康な体から排出されたウィルスが、感染当初よりさらに元気になって、看病疲れの免疫の弱った大人に飛び込んでくるからだと信じたい……
医療関係者とは思えない発言ですが、久々の39℃後半はこの年にはたいへん堪えました。
コロナウィルスのワクチンの副反応となかなか良い競り方をしてくれたくらいにはしんどかったです。
熱が下がっても体がミリとも動かせないあの全身筋肉の痛み、立ち上がっても関節が抜けているのか?と思うほどガクガクして歩行がおぼつかないわ、平衡感覚がぶち壊れてるのか?と思うくらい揺れてトイレに行くのに転びかけるわ、座ったらめまいと吐き気だわ、そして咳と痰がひどくて眠れないときたもんだ、こいつあすげぇぜ!たいしたもんだぜ!
と心の中の江戸っ子オッサンが鼻を啜り上げるくらいには凄かったです。
年末年始に罹患されたご家族も多いと思いますが、あの高熱をくぐり抜けた同志として心から平癒をお祝いしたいです。
そんなわけで開業してほとんどしたことのない体調不良による臨時休診をしたわけですが、そんな中でもご足労頂いてしまった飼い主様たちには温かい声をかけて頂き、スタッフも私も本当にありがたさで涙が出ました。
ご迷惑をおかけしてしまったのに、逆にお気遣いをいただくことばかりで、本当に恵まれているな、ありがたいなぁ、頑張っていて良かったなぁ、と心から思いました。
もうずうっとずうっと昔のことですが、やはりインフルエンザにかかってしまって、誰かにうつすリスクも考えて1日だけ診察をお休みした時に、
「せっかく来たのに、自己管理ができてない!臨時休診が多すぎるんじゃないの?」
と言われたことがありました。
これがちょっとした呪いの言葉になっていたということに、今さらのように気づきました。
そしてそれが今回解けたことに本当に感謝したいです。
そしてそこから気づいたことがあります。
あの言葉を言われたときに受けた衝撃は、今さら語ることでもないのですが、逆に言った側の気持ちを私は「診察に来るほど心配な子がいたのに、診てもらえないことがどれだけ不安なのか」という点でしかとらえられなかったんです。
ですが、これ、そんな浅はかな問題じゃないんですよね。
それはもちろん基本ですが、おそらく発言した飼い主様自体が、ご本人自身にそれだけ強い職業意識を持たれて、その仕事に責任感を強く持っている、ということだと思うんです。
とても素晴らしいことですし、尊敬すべきことです。
そして私もそうありたいと思い続けて、はやン十年になったわけなんですが、ちょっと待って。
そんなに完璧に自分自身をコントロールできるってありえますか?
たとえば不確定要素の多すぎるこの世界で、そんな完璧なプログラムってあるんでしょうか?
自分が制御できる範囲、セルフコントロールできる領域ってそんなに大きくないんですよ、ってことに2024年1年かけて気づいたんです。
今回でいえば、
と、考えられる予防的措置は行っていたわけです。
これをしていなかったら、それこそ自己管理の問題です。
じゃあなぜそこまで頑張ったけど感染したのか?
私の免疫が落ちていたから他ならないわけです。
Q、それってなぜ?
A、昨年1年間、人生で経験がない恐ろしいほど緊急処置が続き、一ヶ月に一度は緊急事態への対処を行っており、ようやくたどり着いた長期休みの際には必ずなにか緊急対処を行うことが続き、その結果ろくろく休まず、ほぼ気を抜くことなく仕事をしていたため。
仕事が仕事なだけに、完璧であろうとすれば当然こういう年もあるんですよね。
正直なお話、いつ倒れてもおかしくないかなーと自分で自覚がありました。
そう指摘してくださる飼い主様たちも多く、休むことの重要性をいっぱい忠告していただいたにも関わらず、お休みになるたびに何か発生するので、本当にこう、なんというか……限界を?試されている?神様に?仏様に?
これは人間としての徳を高めるステージに来たのか?
それともなにかの罰か禊かどっちだ?
何の罪?すみません、美味しい頂き物のお菓子をこっそり一つ余分に食べました、今ここで懺悔します。
でもそれだけでここまで過酷なことある?
いや、乗り越えられない課題を主はお与えにならない、おそらく仏様や神様もそうだろう。
ぐだぐだ泣いてる暇はない、全力をもって眼の前の敵を駆逐せよ、心臓を捧げよ!
脳内はひとり調査兵団ですが、もう考えるより感じろ、レベルで難題が押し寄せてきていて、自分が気をつければ避けられたんじゃないか?というエマージェンシーではなく、必ず外からもたらされた緊急事態でしたので、避けようがありませんでした。
飲み込むのみ、そして駆逐するのみ。
さて戦いが終われば兵舎に戻り、休息を取るのが戦士の必須ですが、それができない者はどうなるでしょうか?
当然、いつかは倒れるわけですよね。
それが戦場であれば死です。
敵もろとも倒れて塵芥となるでしょう。
それならまだいいけれど、敵を倒しきれずに志半ばで死んだ場合が最悪のシナリオです。
今回、兵舎に戻ってからのタイミングで倒れたんだな、ラッキーだったなぁ、というものすごい納得感があります。
自分自身がコントロールできる範囲のことで忙しくして、自分のせいで休めないのは、愚の骨頂だと私も思います。
繰り返しますが、自己管理ができてないよ、って話です。
ではなくて。
対なにか、誰かのために力を尽くさないと、その命が消えてしまう、だから休まないし休めない、という事態が続いてしまったのは、もうこれどうにもできない範囲のことだな、と思ったんですよね。
天命的な?運命的な?
人がどうこうできない範囲のことだろうと思いました。
誰かに託せればよかったけれど、そんな事ができる時間はない、それをしたらおそらく死んでしまう、という目の前の緊急事態に立ち向かわない理由は一つもありません。
そしてその判断に誤りも後悔もありません。
ですから、その結果、自分の免疫が落ちて倒れたのは必然だなあ、どうしようもないな、と。
かつての自分なら自己嫌悪で胃痛胸やけ求◯求◯になっていたとおもいますが、今回はそう自分を許すことにしました。
そして倒れない限り休めないたちだというのもわかっていたので。
どうしようもないこと、自分がどんなに頑張ってもどうにもならないことって、世界には満ち溢れていて。
どれだけ意識高く自分を鍛えていても、避けがたいものは必ずあるんですよね。
だからあの時、厳しい意見をおっしゃってくださったあの方にも、どうかそんなふうに自分に厳しくあり続けないでほしいな、と全くいらない老婆心で思っています。
自分に厳しいことはとても素晴らしいと思います。
怠惰よりずっといい。
でも、厳しさだけでは乗り越えられなくなる日が来るんですよね。
どこかで誰よりもあなた自身が、自分自身がおのれを許すことを覚えなければならない。
物事を受け止めたり受け入れるキャパシティは人によって全く異なりますし、分野ごとにその大きさって変わるものだと思います。
だから許す強さを会得するタイミングは人によって異なると思うのですが、おそらく四十代から五十代がこの時間なのかな、と感じています。
不惑の年といわれますが、まだまだそこまでの達観は得られないので、時間はもう少しかかるのでしょうけれど。
避けがたく、ぶつかって傷つくとわかっていても、ぶつからざる得ないものもある。
逃げればいいよ!って言われても逃げない選択をする方、いますよね!
はい!お仲間です!!
私は自覚のある逃げられないタイプです。
逃げたら後悔すると分かっていて、そんな自分を嫌いになるくらいなら、戦って死にたいタイプです。 いや、死ななくていいんですけどね。
戦って血反吐を吐きながら乗り越えた先でしか、わからない世界が必ずあります。
過酷な苦しみをなんだかわからない大きなものから理不尽極まりなく与えられた人たちは、その先をみることになるんです。
できたらソフトにその先とやらに到達させてほしいんですが、私の場合は人間としての生はまだ一周目なので、このくらいしないとこいつ、徳積めないだろ、と思われてる可能性もありますが……
その先は少し、気持ちが楽になります。
なにが自分にとって本当に大切なことなのかがクリアになる。
尊敬する心理学を修めた知人から教えてもらったのですが、置かれた立場上こうでなければならない、こうしないと周りに迷惑がかかる、誰かのためにこう行動しないと!という他者ありきの行動原理はいつか崩壊するそうです。
勝手に自分で煮詰まってその先の未来が描けなくなるそうです。
私も全くそう思います。
結論として、自分にとってなにが大切で必要で、だからこう行動するんだ、という意志がないといけないんですよね。 だって、これは私自身の人生ですから。
別件ですが、昨年友人から、「あなたは自分の痛みを無視することに慣れている」といわれて、ハッとしました。
頑張ってるね、無理しないでって言われること数多あったのですが、無理しない選択肢がなくて。
だって、無理しないと目の前のことが解決しないから、と。
でも、確かに苦しかったり辛かったりすることがあっても、その場で小さなボックスに詰めてとりあえず見ないで置いておく、ということが実際多かった。
言いえて妙とはいいますが、彼女の言語化能力の高さに本当にちょっと感動してしまいました。
これだわー!って思いました。
ここでなんでその言葉を上げたかというと、この言葉に心当たりがある方が多いのではないかな?と思ったからです。
頑張ってるね、でも無理しないで、って言われがちなあなた。
あなたの痛みを無視しがちではないですか?
私が前記のような気持ちになったきっかけは、この言葉からだったように思います。
だから新年、もしこの言葉が心に響く方がいたら、これをきっかけにちょっと立ち止まって自分をよく見てほしいんです。
自分が望む自分でいてほしいと願います。
しつこく書くのは訳がありまして。四十代からって突然死が増えるんです。
いきなり不穏で申し訳ないんですが、過労死やら自死やらそういう話が急激に増えてくるんです。
心身の健康状態が!心配な時期なんです!
もちろんそれよりお若い方も、上の方も、同じように心配です。
ただ人生の半ばまで来たあたり、ちょっと足踏みすべきタイミングが逆に最も忙しい時期なので、より自らの不調により気づきづらいのだと思います。
ですからどなた様も、どうぞこの言葉がなんだか引っかかったら、いま一度、ご自身を見つめ直してあげてください。
それが今するべきタイミングなんだと思って。
年始のご挨拶がいつもとは少し違うテイストになってしまいましたが、今年1年もジャンボどうぶつ病院は、そんな戦う皆様と動物達の強い味方であるように、精進を重ねて参ります。
どうぞ本年もよろしくお願いいたします。
2025-01-15
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