フィラリア予防について

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フィラリア症とは?
フィラリア症とは?

フィラリア感染のしくみ 最近ではかなりメジャーになってきたフィラリア症について、簡単にお伝えいたします。

ほかのワクチンなどと混同される方もいらっしゃるのですが、 フィラリア症、これは日本語で犬糸状虫症(しじょうちゅうしょう)といわれるもので、 糸状虫という寄生虫によって引き起こされる病気です。

そう、ワクチンなどで予防する、ウイルスや細菌とは異なり、 どちらかといえばサナダムシのような、虫としての生態がはっきりしているものです。

糸状虫はその名の通り、白くて細くて長い、糸状の虫で「そうめんみたい」と食べ物に例えるのもどうかと思いますが、これが虫なの?という形態をしています。 成虫になれば5~15センチにもなり、そこにいれば、しっかり目で見ることが出来ます。

もちろんこんなグロテスクなものがそのまま体に入るわけではなく、 蚊を通して感染するのです。これを「蚊が媒介する」といいます。

一匹の蚊がいるとします。 この蚊がフィラリアに感染している動物を吸血します。 するとこの体内にはフィラリアの子虫である、「ミクロフィラリア」が流れ込んできます。 ミクロフィラリアは蚊の体内にいないと、感染性をもつ「感染幼虫」まで成長できないため、しばらく蚊の中に住むことになります。

感染幼虫になると、その蚊がほかの正常な動物を吸血するときに唾液に交じって 体内に入っていきます。 これで感染が成立するのです。 感染幼虫は約3ヶ月間、皮下や筋肉の中で成長します。 初めから血管の中にはいないのです。 そのあと静脈から血管に入って血液の流れに乗って心臓に向かい、 感染から約6か月後に心臓(特に右心房)や肺動脈に住みついて「フィラリア成虫」になります。

ここでオスとメスがいた場合、生殖機会を得て、「ミクロフィラリア」を産みます。 このミクロフィラリアには感染力がなく、繁殖力もありません。 ですからこの状態で万が一、ほかの動物に血液が接触しても感染することはないのです。 感染幼虫に成長するために、蚊に吸われるのを待っている状態です。 そして新たに蚊に吸血されると・・・・冒頭に戻るわけです。

このように、蚊と犬の体内をめぐりながら子孫を増やしているのが、フィラリアという虫なのです。 成虫の寿命は5から6年もあり、その間子虫を生み続けることになります。 子虫自体は動物の体内で白血球に随時食べられていきますが、 感染幼虫になるために蚊の吸血まちをしています。 感染した動物が一頭いれば、大変な数の感染幼虫を外界に供給することになります。 自分の子を予防することは、ほかの動物たちの感染リスクを下げる事なのです。

また日本では犬が非常に有名な病気ですが、実際は哺乳類なら猫もフェレットも、まれに人にも感染する病気です。 うちは猫だし、フェレットだし室内だし、大丈夫ね、とういのは昔の話で、最近は突然死した猫の死因がフィラリア症だった、という報告があったり、フェレットの感染例も報告されています。 昔はそこまで調査がされていなかった、というだけで、現状がわかった今、フィラリアは予防すべき病気です。

なぜフィラリア症の予防が必要なの?
なぜフィラリア症の予防が必要なの?

先日、ある飼い主さんに、 「フィラリアって治療法があるから予防なんかしないで、かかってから、治療すればいいって聞いたのですが?」と言われびっくりしました。 フィラリア症は治療がありますが非常にハイリスクで、体にも負担になる治療法なので、 最も良いのはかからないことなのです。

実は、フィラリアに感染してもしばらくはなんの症状も現れません。 多くは数年が経過してから症状が現れます。 症状が出てきたときにはすでに重症という場合が残念ながら多いのです。

ハーハーと呼吸が荒い、運動もしていないのに、ゼーゼー言う、ときどき咳をするなどが初期の症状としてみられます。 徐々に元気がない、散歩を嫌がる、散歩の途中で座り込む、突然倒れるなども見られ、やがて、食欲不振、嘔吐、重度の貧血、寝てばかりいる、お腹に水がたまってはれてくる、血尿になる、というとても重い症状が出始めると末期に。 そして、多臓器不全に陥り、とても苦しんだ末に死亡します。

かかってからでは、遅いのです。

フィラリアの治療法
フィラリアの治療法

でも、かかってしまったら?
たまたまの薬の飲み忘れなどで、間が空いてしまったことによって万が一感染してしまった場合、 フィラリアの治療には大きく分けて4つの選択肢があります。

  • 1手術で成虫を取り出す方法。
  • 2薬で子虫と成虫を全滅させる方法。
  • 3薬で子虫だけを殺して成虫はそのままにする方法。
  • 4虫に対しては何もせず、 咳を抑えたり貧血を改善したりする対症療法。

どの方法を選ぶかは、かかっている現在の症状と、犬の年齢・体力などから判断します。

手術で成虫を取り出す場合は、犬に全身麻酔をかけての処置です。 全身麻酔に耐えられる体力がなければ、行うことはできません。

手術法は首のところを切開し、頸静脈内につり出し鈎を挿入します。 つり出し鈎のさきは物をつまめるようになっていて、 それを右心房の成虫のいるところまでゆっくり進めて成虫をつまみ出します。 その後通常のフィラリア予防薬によって子虫を駆虫します。

昔はフィラリアに感染している犬が多く、この手術が多用されていましたが、 現在では特に東京23区では、予防が進んでからは大分行われる件数が減っています。 血管からとはいえ、心臓内にアプローチするため、不整脈を誘発したり、フィラリアによって傷つけられもろくなっている血管が破損する危険があります。

薬によって子虫と成虫を全滅させる治療と、子虫だけ駆虫する治療は、薬剤による犬への負担と、駆虫によって死んだ虫が肺の血管などに詰まる恐れがあります。 肺に詰まった場合、これを肺塞栓といいます。 エコノミー症候群などと同じ症状をひきおこしますが、エコノミー症候群は血栓という血液の固まったものが詰まるのに対し、こちらは死んだ虫体です。 とくにイミトサイドという、ヒ素剤をつかった成虫、子虫を全滅させる場合は、一気に大量の虫が死ぬため、かなり体への負担が大きく、 リスクが高いため、慎重に投与を見極めなくてはなりません。 駆虫後は運動制限をかけ、安静にしこの肺塞栓などが起こらないようにします。 運動は犬の様子をよく見ながら少しずつ慎重に再開します。 体調回復後は通常のフィラリア予防薬を投与します。

犬の年齢や体力が手術や駆虫治療に耐えられないと判断された場合は、対症療法をすることになります。

手術や駆虫が成功しても一度傷ついた血管や、 心臓など影響を受けた臓器は、完全に元通りになることはありません。 治療後もダメージを抱えたまま生活していくことになります。

また「都内だったらしなくても感染しないよっていわれました」とも言われたことがあります。

フィラリアの予防をせず蚊のいるシーズンを3回越した犬は、100パーセント近くがフィラリアに感染しているという統計があります。 蚊は吸血対象の呼気を500メートル先から感知して飛んでくるといわれています。 ほんの少しの水たまりなどで産卵するため、冬でも集合住宅の温かいボイラー室などで繁殖し、排水溝などを通って高層階のマンションで見つかったという報告もあります。 室内犬だから、蚊取り線香を置いているから、虫よけスプレーしているから、100パーセント蚊に刺されない、と言えないのです。

きちんと予防薬を
きちんと予防薬を

フィラリアはきちんと予防薬を投与すれば100パーセン発症を防ぐことが出来る病気です。 フィラリア予防薬の投与には3つの方式があります。

(1)錠剤・散剤(粉)・チュアブル等のなど毎月1回飲むタイプ

特徴長く使用され安全性が高い。
飲みやすいチュアブルタイプもあり、投薬が簡単。
錠剤タイプは安価。また種類により、消化管内寄生虫も駆除できます。

(2)注射タイプ(犬のみ)。

これは最近1年に一回で済むものが販売されました。
ただし、これから体重がどんどん増えるする子犬には使うことはできません。

特徴 飲ませ忘れや、つけ忘れがない。
通年予防ができる。
急激な体重変化には向かない。
注射のためやや値段が高い。

(3)毎月1回液剤を皮膚に直接滴下するスポットタイプ

特徴薬を飲むのが苦手な場合や吐き出してしまう心配がない。
猫はこのタイプがおすすめです。
種類により、ノミの予防もかねてできます。

フィラリアの予防薬は要指示薬です。基本的には人から譲られたものを使ったりしてはいけません。 なぜなら、気づかないうちにフィラリアに感染している犬に予防薬を投与すると、薬の作用で死んだ虫が犬の血管に詰まり、犬が突然死することもあるからです。

毎年きちんと予防していたとしても、次のシーズンには必ず血液検査を受けるようにしましょう。
また体重に合わせて処方されるものなので、急速に増えたり減ったりしていると、効果をきちんと得ることが出来ません。
必ず、体重を測定しましょう。

予防シーズンはいつからいつまで?
予防シーズンはいつからいつまで?

予防シーズン フィラリア予防期間は蚊が活動するシーズンと大きな関係があります。 蚊の活動期間内だけ薬を投与すればいいのではなく、蚊の活動開始1ヵ月後から蚊の活動終了1ヵ月後までが投薬期間です。

予防と言ってきましたが、フィラリアの予防は、実際は駆虫なのです。
蚊に刺されて感染幼虫が犬の体内に入ってから、その1ヵ月後に薬を与えてまとめて感染幼虫を殺すのが目的です。 蚊がいなくなったと思われる日の1ヵ月後に確実に最終の駆虫をし、そのシーズンの投薬は終わりということになります。

蚊がいつから刺すかいつまで刺すかは各年の気温によって違ってきます。 気温室温が約14度以上になると吸血活動を開始し、14度以下では刺すことなく活動停止、または死にます。

理屈から言えば、秋から冬にかけては予防時期じゃないのでは?ということなのですが、日本は温暖化が進み14度以上の日数が増えています。 また暖房などの普及もあって室内は常春状態で、もう蚊はいないと思っても、家具の裏や、ボイラー室などで生き延びている蚊がいます。
冬だから蚊はいない・刺さないとはいいきれなくなってきました。個人的には、理想は通年予防なのだと思います。

長々と書いてきましたが、最後に。
ワクチンにも言えることですが、予防薬が販売されている、というのは何とかしてその病気を予防して死んでしまうことや不快な思いをすることを避けたい、という強い意志から生まれているのです。 そう考えざる得ないほどの犠牲があって、何とかしなければいけないという気持ちと長い開発時間があって、いまの予防薬が世に出ています。 今は月一回という投与回数ですが、昔はシーズン中毎日投薬しなければならなかったこともあるのです。 より、安全に、簡便に、予防ができるよう、今でもフィラリア症の予防は進められています。

がんのように予防のできない病気もありますが、 せめて予防のできるものは、予防していきたいと、切に願います。

「うちの子の様子がおかしい?」「狂犬病の注射を受けさせたい」「避妊手術はいつすればいいの?」など、お気軽にご相談ください。

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