院長のコラム

動物病院HOME < 院長のコラム < 我が家のニホンヤモリ

我が家のニホンヤモリ
我が家のニホンヤモリ

ようやく熱中症地獄が終わり、少し落ち着きが見えてきました。

これから夏本番に向かってさらに暑さが加速すると考えるだけでかなりの精神的ダメージなのですが、それは置いておいて。

hr

我が家には現在、ニホンヤモリが三匹飼育されています。

学名 GEKKO JAPONICUS

爬虫類鋼有鱗目ヤモリ科ヤモリ属

ゲッコーって何だかかっこいいですよね。何度聞いても月光仮面を想像してしまう、そもそも月光仮面がいまいちわかっていないのですが。

平安時代に日本にやってきた外来種で、かの有名なシーボルトにより日本のトカゲの名前をつけられました。広げた指にある趾下薄板がとにかくチャーミングな爬虫類、イモリと混同されがちですが、あちらは両生類なので水場が必須です。

ヤモリは人家の内外害虫を主食にするため、昔から家守という字を当てられ親しまれてきました。親しまれるだけあって、割と家のそばで出会うことが多い爬虫類です。

出かけた先の公園で巡りあい、速やかな捕獲劇ののち、我が家の一員となりました。

hr

彼らは生き餌しか食べないため、実は飼育が難しいのだとか。

飼い主様は息子なので、基本こちらからは手出しをしないように見守ります。

連れてきた個体はとても小さいものでしたので、ダンゴムシとか羽虫とか色々な昆虫を与えてみたのですが、全く食べず。ピンセットでつまんで鼻先に当てては、食べてくれーと唸っているのを横目に見ながら、夜中に「家守 エサ 食べない」でこっそり検索をかける日々。

ホームセンターに行ってSSサイズのコオロギを購入するも興味なし。

チューブ状の練りエサを口元に近づけたり、ミルワームを与えてみたりと様々な努力の結果、ようやく今ではカルシウムパウダーをまぶした極小コオロギを積極的に食べてくれるようになりました。今では仕事の帰りに生きたコオロギを数十匹買うのが最近の習慣となっています。

ちなみにミルワームは見向きもされず、ひたすらに床を這い回った挙句、見事に蛹になり、独特のビクビクした動きを披露しながら、しっかりと成虫になりました。

そうか、君はそういう姿だったのね……。保護したスズメの餌やらなんやらで見たことはあったけれど、成長した姿は初めてみました。

見事に黒光りする甲虫です。君、わりとGに似てるな……うん、前の姿の方が私は好きだよ。

足が多い生き物も、足がない生き物も割と平気ですが、Gもどきは苦手です。

うちで大量に繁殖しているオオクワガタたちもひっくり返したら割と似ているけど、やはりあのツノが全ての欠点を補っているんだな、と実感。かっこよさは全てに通ず。

ちなみにもし欲しい方がいれば差し上げると飼い主である夫が言っていますので、お気軽にお声がけください。

なんでも想像以上に幼虫が孵化したのだとか。そういえば大量の菌糸ボトルと菌糸が先日家に届いていました。あの量を使う……?詳しくみていないのでアレですが、はっきりさせないことが私の精神の平和を保つことでしょう。

そしてヤモリは全く興味なし。ミルワームの存在意義は私に成虫になった姿を見せつけたことだけでした。

ちなみにコオロギにカルシウム粉をまぶす、というのもなかなか難しかったのですが、小さなビニール袋にカルシウムパウダーを入れてコオロギを入れてふる、という私考案の唐揚げ粉方式で全身を白く染め上げたコオロギを作ることに成功。天ぷらになる前の具材のような姿にはなんとも言えない雰囲気があります。

hr

二ヶ月ほどたって、だいぶ家の環境に慣れてきたヤモリたち。

餌の時間になると急に活発に動き始めます。ソワソワ感がこちらに伝わる、可愛さが溢れる瞬間です。

いざカルシウムパウダーまみれコオロギ投入。

ヤモリたちは大きな目を爛々と輝かせてコオロギに飛びかかり、目にも止まらぬ勢いで捕獲。

コオロギが白くなったことで捕食している様が鮮やかに見えるようになり大興奮の私。深夜に床に這いつくばって、瞬きもせずにヤモリのお食事タイムを鑑賞。息を止めて見守ってしまうスリリングな一幕です。

コオロギには大変申し訳ないのですが、この世は食って食われての過酷な地獄。君の命のおかげで、ヤモリたちはすくすくと育ってくれています、感謝。

hr

生き物を狩ることは、生命をいただくことの直結すべきであるなというのが、うっすらと私の中にある倫理観なのですが、たとえば魚を取ったら食べて血肉とすべきだし、猪を取ったら肉も毛皮も骨もしっかりと使って糧とすべきだし、外来種を処分しなければならないなら、基本食べることに直結させるべきだと思います。

楽しみのために殺す命なんて、基本あってはならないのですから。

シャチのようにサメを楽しみでハントする場合もあるので絶対ではないのですが、生きるために食べる、というのが基本であり真理であると思いたいです。

我々は獣医師教育過程でどうしても実験犬や鶏、ネズミ、ブタにヤギに牛に馬といった命に支えられた教育を受けます。あの時に自分たちの教育のため命を奪われた生き物たちに恥じない生き様でいることが、獣医師として最低限の生き方なのだと思っています。

当然後悔は当たり前のように付き纏い、ずっとどんな大義名分でもその罪を軽くすることはできない。

あの時奪った命と同じだけの命を救うには何年かかるだろうかと、思った気持ちを劣化させず、常に戒めと思い生きていくことが、当たり前だと思って仕事をしています。

hr

という、ちょっと暗めのお話はおいておいて。

そんな我が家のイモリに変化が!

なんと!卵が!産んであったんです!

いつ産んだのか全くわからなかったポンコツ飼い主なのですが、見つけた時は思わず叫んでしまいました。

ただヤモリは無精卵でも卵を産むらしく、三匹のヤモリたちが雌雄あるかどうかも定かではないのですが、息子はピンクだから有精卵だ!と鼻息荒く別の容器にそっと卵を移動させていました。

新しい命、生まれるでしょうか。

死と隣り合わせの仕事なので、こういった命が強く健気に凛々しく輝いているのが眩しくてなりません。

できたらちいさな赤ちゃんヤモリに会いたいものです。

2024-07-01

院長のコラム トップ

「うちの子の様子がおかしい?」「狂犬病の注射を受けさせたい」「避妊手術はいつすればいいの?」など、お気軽にご相談ください。

「うちの子の様子がおかしい?」「狂犬病の注射を受けさせたい」「避妊手術はいつすればいいの?」など、お気軽にご相談ください。

tel03-3809-1120

9:00~12:00 15:30~18:30
木曜・祝日休診

東京都荒川区町屋1-19-2
犬、猫、フェレットそのほかご家庭で飼育されている動物診療します