動物病院HOME < 院長のコラム < 長くなる虫たちの活動時期
12月は3回の更新となります。なんて贅沢!
締め切りも3回です!なんて過酷!
このコラムも10年目を過ぎ、だんだんテーマを探すのがなかなかに大変です。
日常で起こるびっくり事件には事欠かないのですが、全てをコラムに取り上げることもできず、フェイクを混ぜても書けないことも……。なるべく楽しい話題を選びたいものですが、病院の性質上なかなか難しいものです。でも頑張ります。
今年はコラムの更新がまちまちになったりして、ご心配をおかけして申し訳ありません。
今後はなるべくコンスタントに更新していきたいという切なる願いを込めて、来年の自分に期待したいです。
びっくりした事件といえば、先日こんなことがありました。
11月を半ばも過ぎて、お電話が。
「猫の背中にいっぱいに黒い粉がついている。よく見ると、動いているような気がする」
これは、アレでは!夏に多いけれど、実は通年を通してそこらじゅうにいるアレでは!!
スタッフ全員に緊張が走ります。
病院内の床に消毒薬をまき、診察台の準備も整えます。
奴らは目に見える成虫だけではなく、見えないほどの卵と幼虫も引き連れているのです。
一匹の成虫がいればに九十九匹の幼虫と卵もいる!これが研究データです。
そう、Gと同じ。
一匹たりとも院内で生かすわけには行きません、また生かして帰すわけにはいきません。全虫殺滅あるのみ。
全員が戦闘体制に入ります。結構な緊張感です。
万が一、院内感染なんてことになったら、考えただけでも恐ろしいので仕方ありません。
その時点で待合で待っていらっしゃる飼い主さんたちには速やかに診察を終え外に出ていただきます。
事情が事情なので、恐れ慄きながら退避される飼い主さんと動物たち。
予防薬が万全とはいえ、やはり心理的抵抗は大きいですよね。
準備万端でお迎えした猫ちゃんは、やっぱりというべきか全身の皮膚が真っ黒。
色がついているのではなく、小さな砂粒のような黒いもので覆われています。
そう、全てノミのフンで埋め尽くされていました!
毛を掻き分けてよく見れば、何匹ものノミの成虫がひらひらと走って逃げていくのがわかります!
動いて見えたのはこれだ!
すかさず捕まえ、セロハンテープで圧平固定!この時決して爪などでは潰してはなりません、ノミの体内にいる条虫がこぼれ出て今度はこれに感染してしまうのです。条虫は消化管内に規制する虫で、人にもかかります。いわゆるサナダ虫です。
感染するといろいろな被害を出しますが、何よりメンタルがやられます。
人に感染するとトイレで肛門から出てきた虫と対面することもあります。ショックはいかほどか。
なるべく触れないでほしい虫ナンバーワンです。
ノミを見せて説明していると、ふと見た飼い主さんの腕に何箇所もバンドエイドが!
「もしかして、刺されていませんか?」
飼い主さんはびっくり、私たちはがっかり、そう、猫だけでなくすでに人にもノミの毒牙が!
ノミは繁殖してその数を増やすと、犬や猫だけではなく人間の血も吸うようになります。
時に室内繁殖をするとその数はねずみ算式に増えるため、どこかで必ず飼育されている動物だけでは足りなくなるのです。
また外に出ていくこともないので、室内の限られた場所で高濃度の感染が成立してしまうのです。
今回のように。
すぐに猫ちゃんには駆除薬を使い、念のためお腹の中の虫も落とす薬を用いました。
また猫ちゃんが使っている寝床や使用しているタオル類などの処分と、徹底した掃除機による掃除を指示しました。
しかもこれはできたら紙のパックタイプのもの、サイクロン式の掃除機では卵を残してしまう可能性があるのです。
震える飼い主さんに皮膚科に行ったらノミのことを伝えてくださいと言いつつ、予防がいかに大切か、駆除がいかに難しいかをついたえ、ご帰宅されたと同時に院内清掃を行い、任務を無事完了しました。
恐ろしいのは、先にも述べたように、これが11月半ば過ぎてからのお話だということです!!
温暖化の影響により、ノミを代表とした虫たちの活動時期が大変長くなっています。
春夏だけで予防を終えるのではなく、秋、冬も通した通年予防をお勧めします。
うちはついたことがないから、と自信に満ちた顔で仰る飼い主さんもいらっしゃるのですが、これは周りの方がしっかり予防しているから守られているだけで、このように一度家の中に入り込まれると地獄の様な虫被害が待っています。
正直、かなり綺麗に家を清掃しても、どこからか湧き出でてくて、少なくとも3ヶ月は絶対いなくなりません。
下手すると半年くらいノミに悩まされます。
ちなみに犬や猫は予防薬がありますが、人にはないと思うので、被害に遭うのは人ばかりです。
見たことがないから、外に行かないから、で予防しないのではなく、万が一のためにの意識を持っていただきたいと思います。
この猫ちゃんは、18歳でしたが、完全室内飼いで外には出ていませんでした。
それでも感染する時はするものです。
こういった事例に会うたびに、虫たちがどれだけ真剣に、そして命懸けで感染を成立させようとしているかを改めて感じます。
命をかけて向かってくる敵に無防備でいるのはあまりにも恐ろしい。
どうか予防という名の盾を持って、動物たちだけでなくご家族とご自身を守られてください。
2024-12-20
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