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気になる鳥インフルエンザ
気になる鳥インフルエンザ

1月の半ばを過ぎ、ますます時の流れが早いなぁと震えております。

この分では気づけばまた年の瀬のご挨拶をしているのでは?

毎回嵐のように過ぎ去る時間こそが、実はあとから考えれば輝かしく愛おしい日々であるように、目一杯いそがしいことは幸せなのかもしれません。でも今年こそもう少し季節の楽しみに意識を配りながら、日々の時の流れを大切にしたいものです。

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さて連日千葉県で発生した高病原性鳥インフルエンザの報道がされています。

白ずくめの防護衣に身を包んだおそらく保健所の職員たちが、物々しく鶏舎の前で作業する様子が報道媒体で流れていますので、何やら恐ろしい病であることは伝わっていると思います。

高病原性鳥インフルエンザとはどんな病気なのでしょうか?

鳥にしか影響がないようですが、実は違います。

鳥類に対して感染性を示すA型インフルエンザウイルスによる感染症を鳥インフルエンザといいます。

この原因であるA型インフルエンザウイルスの自然宿主は野生の水きん(カモ)類です。

このウィルスが飼育されている家きん(鶏など)に感染し、その中で感染を繰り返すうちに、鶏に対して高い病原性を示すウイルスに変異した場合に高病原性鳥インフルエンザという表現をします。

これはインフルエンザウィルスが他の感染症のウィルスよりも特別変異しやすい性質を持っているからです。

人間のインフルエンザウィルスも、十年ごとくらいに新しく強毒な型が生まれるのはこのためです。

鳥インフルエンザウイルスは、通常は人間に感染しませんが、感染したトリに触れるなどの濃厚接触をした場合に、きわめて稀に感染します。

鳥インフルエンザウイルスが、トリ以外に、人間やその他の動物に感染した場合も鳥インフルエンザという病名を使用します。

鳥インフルエンザは鳥だけではないというのはこういう理由からです。

ヒトの鳥インフルエンザのうち、A(H5N1)及びA(H7N9)の鳥インフルエンザは、感染症法上は二類感染症に、それ以外の亜型の鳥インフルエンザは 四類感染症に位置づけられています。

このように人間に感染する事があるため、国内で発生した場合は感染症法に基づき、発生農場内のすべての家きんは速やかに殺処分され、死体は埋却または焼却されます。

じつはこの高病原性鳥インフルエンザに感染した鶏肉などが加工され人が食べた場合にも感染が成立することがあるため、罹患した恐れのある鶏はすべて処分する必要があるのです。

発生農場内の物品も焼却、埋却、または消毒されます。鶏舎も徹底的に消毒されます。

原則として、発生農場を中心とした半径3キロメートル以内の区域について、家きん等の移動が禁止されます(移動制限区域)。

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また、半径10キロメートル以内の区域については、生きた家きんの区域内での移動及び区域外から区域内への移動は可能ですが、家きん等の区域外への搬出が禁止されます(搬出制限区域)。

要するに発生前にストックしてあった鶏肉や鶏卵も出荷することもできません。

これほどまでに厳しい対策をしなければ感染力が高い高病原性鳥インフルエンザはさらに多くの鶏に感染し、結果多くの農家さんは莫大な被害を被り、廃業など致命的なダメージを受ける可能性があります。

そして最終的には卵や鶏肉など私たちが必要とする食料の供給が脅かされることになるのです。

これらの移動・搬出制限区域は、防疫措置が完了してから実施する清浄化確認検査により陰性が確認されたのちに、解除されますが、今回の千葉のように鶏舎同士が近い場所で発生すると、制限区域にかかわるためその地域全体の鶏舎農家さん達の仕事ができなくなります。

当然、農家さん達の負担は重く、処置に関わる人員も多くなり、発生地域全体が非常事態になるのです。

以前、高病原性鳥インフルエンザが大流行した時には、悲しく恐ろしいことに農家さんが廃棄される鶏たちに心を痛め、損害の大きさによる負担の大きさも相まって自ら命をたつことがありました。感染症の発生はそれだけ大きな負担になるのです。

この当時農水省に勤める後輩の獣医師は高病原性鳥インフルエンザ対応に追われ、庁内で寝袋で床に転がりしばらく寝泊まりしていました。

また発生していない他の県に務める公務員獣医師たちが何人も、発生地域に応援に行きました。

動物の廃棄、いわゆる殺処分は基本獣医師か行う必要があるからです。これは本当に心を病むような過酷な仕事ですが、それも職務として全うする同輩たちには本当に頭が下がります。

感染症は時を選ばないため、感染が疑われた時点で堪能の部署の獣医師たちは待機となり、それが土日祝日であっても、検査に赴き対応しなければなりません。

いつでもスマホを持ち、緊急に対応する用意をしながら仕事をする、それが公務員獣医師です。

公的防疫体制は公務員獣医師によって守られているのです。

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さて、この大流行中の高病原性鳥インフルエンザですが、関連する気になるニュースが入ってきました。

アメリカのロサンゼルス郡公衆衛生局は、令和6年12月20日付けプレスリリースにおいて、高病 原性鳥インフルエンザに汚染された Raw Farm, LLC 社製の生乳製品を摂取した猫が高病原 性鳥インフルエンザに感染し、死亡した旨を公表していました。

また12月24日、オレゴン州農務省等が高病原性鳥インフルエンザに汚染された Northwest Naturals 社製の七面鳥を用いた生ペットフードを摂取した猫が高病原性鳥インフルエンザに感染し、死亡した旨を発表しました。

加えて、州政府及び連邦政府は高病原性鳥イン フルエンザに限らず疾病のまん延を防ぐために、人及びペットが生又は調理されていない 肉製品、生乳製品の摂取を避けること等を強く推奨しています。

今回問題となった Northwest Naturals社のペットフードは米国内で 自主回収されており、 日本国内の流通・販売は現時点で確認されていな いとのことですが、自己輸入などがネット上で盛んであることは確かなので、留意していただきたいと思います。

またこの報告よりもまえに、2024年7月に米国疾病管理予防センター(CDC)が発表した、米国の家畜乳牛およびネコ科動物におけるHPAI A(H5N1)感染に関する研究では、感染牛の生初乳および乳を与えられた飼い猫が致命的な全身性インフルエンザ感染症を発症したことが報告されています。

これらの猫は死亡前に神経学的兆候も示していたとされます。

また韓国のソウルでは、2023年7月から2つの猫の保護施設で、国内産のアヒル肉から作られた「不適切に殺菌された」生の餌が猫に与えられ、猫の死後検査で高病原性鳥インフルエンザによる「全身の病理学的病変」が認められました。さらに、ウイルスはさまざまな組織でも発見されました。

おそらくこの原料となったアヒルが高病原性鳥インフルエンザに感染していたものと考えられます。

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以上のことから生肉食や未殺菌の生乳を勧められない理由としても高病原性鳥インフルエンザが大きく関与することになったと考えています。

現在、国内ではこのような不適切な処理を受けた肉や鶏卵、生乳などは流通しません。

ですが先にお話したように個人輸入などにより海外から汚染されたフードが持ち込まれる可能性があります。

また生肉食などは国内でも一定数の需要があり、店頭販売されている人が食べるものを使う場合以外に、通販などで動物用に購入したりすることができます。

韓国の施設のように販路が広がったことでチェックが甘くなる可能性がないわけではありません。

食事として選択するのであれば、そのリスクも考えて判断していただきたいと思います。

また高病原性鳥インフルエンザはネコ科のほうがイヌたちよりも重症化しやすいとされています。

症状としては

  • 無気力
  • 食欲不振
  • 目が赤くなったり炎症を起こしたりしている
  • 目や鼻からの分泌物
  • 呼吸困難
  • 震え、発作、協調運動障害、失明などの神経学的兆候

などがあります。

対策として、

  • 猫を屋内で飼育すること
  • 屋外に出るペットを野鳥、家禽、牛、およびこれらの動物の生息環境から遠ざけること
  • ペットが死んだ鳥や他の動物を食べないようにすること
  • ペットに生肉や家禽、未殺菌牛乳を与えないこと

が推奨されています。

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以上、少し堅苦しいお話になりましたが、鳥インフルエンザだから自分や犬猫は関係ないな、ではなくて、実は身近にかかわる感染症なんだな、ということが少しでも伝わったら嬉しいです。

またそれを防ぐために、動物病院で診療にあたる臨床獣医師とは別に、多くの公務員獣医師たちが活躍していることを知っていただけたらいいな、と思います。

2025-01-25

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