動物病院HOME < 院長のコラム < 人畜共通感染症について
あっという間に過ぎていく1月ですね。
すでに2026年が一ヶ月消費されたと思うだけで、ちょっとめまいがしそうですが、人生のステージによる体感が異なる時間というものの摩訶不思議さを、しみじみ噛みしめています。
1月はそもそも不思議な一ヶ月ですね。新しい年を迎える寿ぎの空気感と、古い年が弔われる静謐さが、背中合わせで存在していて、めでたくも厳かな雰囲気をまとっています。
新年を迎える前はなぜかそわそわと落ち着かず、今年という1年が素晴らしいものになるように願をかけ、迎えてしまえばこれがまた驚くべき速さで日常に戻っていこうとする。
けれど二月三日の節分までは基本的にはまだ旧年の流れにあり、ようは新しい年までの引き継ぎの時間なのだと思います。 2025年に諸々あった場合でも、ここで新たによい方向に変わることでしょう。
よい年であった方はよりよい年に、今年こそよい年にするぞ!の方はきっと思ったよりももっと素敵な年に。
心と体、両方の健康を大切にしつつ、実りの多い年となりますように。

さて、少し気になるニュースが入ってきましたね。
インドで発生したニパウイルス、オオコウモリと豚から人への感染が起こる、人畜共通感染症、いわゆるズノーシスです。
コロナウィルスでかなりの知名度を誇った人畜共通感染症ですが、他にも有名どころでは狂犬病ウィルス、エボラ出血熱ウィルス、マールブルグウィルス、鳥インフルエンザウィルスなども動物と人との間に感染を成立させる感染症です。
厚生労働省からの情報では
パラミクソウイルス科ヘニパウイルス属の1本鎖RNAウイルス
ニパウイルス
自然宿主はオオコウモリ
ブタには呼吸器症状を起こします
オオコウモリ→ブタヒトの感染がメインではないか、といわれていますが、オオコウモリ→ヒトの感染経路も疑われています
他にもイヌ、ネコ、ウマ、ヤギ、トリ、げっ歯類での感染が確認されています
感染動物(オオコウモリやブタなど)との接触
感染動物の唾液や尿などの体液で汚染された食物の摂取である
発熱、頭痛、嘔吐、筋肉痛などで始まり、その後意識障害などの神経症状が現れ、重症化すると急性脳炎に至ることがある
とされています。
レポートをみると、発熱と神経症状を主に入院してから数日以内に亡くなっているケースも多く、致死率の高さを感じます。
海外では、1998年から1999年にマレーシアで初めて発生が確認2001年以降はバングラデシュやインドでほぼ毎年患者が報告されている
現在のところ、日本国内では患者の報告はなし
詳しい感染経路としては、
感染動物(オオコウモリやブタなど)との接触や、
感染動物の唾液や尿などの体液で汚染された食物(ナツメヤシ等の樹液や果物)の摂取
また、患者の血液や体液との接触によるヒト-ヒト感染も報告されている。
ただしこれはかなり稀らしく、長期間、接触があった場合とされています。
潜伏期間は通常4から14日程度。発熱、頭痛、嘔吐、筋肉痛などで始まり、その後意識障害などの神経症状が現れ、重症化すると急性脳炎に至ることがある。
診断としては、髄液、尿、気道分泌液などからのウイルスの分離・同定、抗原の検出、ウイルス遺伝子の検出、または血清からの抗体の検出。
となっていますが、ほとんど検査は外注検査となるはずです。
PCRやELISA法による検査も、おそらく現時点では理論上可能でも実施成績がない検査センターが多いと思われます。

またおそらく皆さんが一番気になる、治療法ですが、特異的なものはなく、特効薬もありません。
残念ながら現時点では、対症療法が中心です。
狂犬病やコロナウィルス感染症と異なり、 国内で承認されたワクチンもないため予防する方法が、
流行地において、オオコウモリやブタとの直接の接触を避ける。
また、生のナツメヤシの樹液や、洗っていない果物の喫食は避ける。
患者に接触する際は個人防護具の使用などの接触感染対策が必要とされています。
感染症法における4類感染症に定められています。
4類とは動物と関わる感染症、動物間だけでなく、食べ物や体液などを介して人にも感染し、法的に動物への処置、例えば移動規制や殺処分などを行う必要がある感染症のカテゴリーです。
4類法定伝染病のなかには狂犬病や黄熱が含まれます。
ニパウイルスはこのコラムでも取り上げているマダニを媒介する感染症のSFTSウィルスや、日本脳炎ウィルスとおなじく4類政令指定伝染病です。
致死率が40-75%と、エボラ出血熱と同じくらいに高いことが注目されている理由でもあるでしょう。
実際のところ、ヒト-ヒト感染はかなり少ないらしいのですが、動物(おもに豚)-ヒトが見られるので、注視されています。
疫学的な分析では、オオコウモリの住む熱帯雨林などの環境が開発のために切開かれ、そこに作られた農場などで飼育されたブタとの接触が増えたことで、ブタがウィルスの増幅動物となり、ヒトやほかの動物たちに感染性をもつウィルスへと変異していったのではないかとされています。
新興感染症に多いこの野生動物と飼育動物、ヒトが開発により接触を増やし生活環境が近づくことで新たな病を起こす、というのは近年ますます増加傾向にあると思われます。
エボラ出血熱をはじめとして、昔から指摘されてきたことですが、数十年たってよりその傾向が強くなったと言えるでしょう。
また今後、増えることはあっても減ることはないと考えられます。
野生動物の中にいる未知のウィルス、もしくはその動物固有だったものが、家畜やヒトと関わって種を超えた感染性を獲得する。
互いの世界を侵食しなければこのは病はなかったと考えると、人の生活圏拡大と開発が引き起こしたなんとも皮肉な結果です。
けれど生まれたものは絶滅するまでは存在し続けるので、それに対しての防御をしていくしかありません。
今のところはニパウイルスはワクチンでの対応ができないので、マスク、手洗いうがい、目をこすらない、鼻をいじらない、汚染された食べ物や飲み物を取らない、野生動物たちに迂闊に近寄らない、という自らにできる対策を取りましょう。

おそろしいことをいいますが、致死率が高い感染症は隔絶された一定の地域での発生が激しく起きますが、ほかの地域に飛び火することは割と少ないのです。
そう、ウィルスを伝播させる前に宿主がなくなるからです。
これはエボラ出血熱やマールブルグ感染症でも同じ事がいえます。
ですので、今のところはそこまで恐れるものではありませんが、これだけ世界中でヒトや物資、動物の移動が盛んになっているので、決して日本は安全だよね、ということではありません。
感染症は目に見えません。
知らずに感染し、知らずに拡大させているかもしれない。
インフルエンザも再び流行していますし、感染対策は十分に行いましょう。
感染してから後悔しても、本当に遅いですし、感染症というものは致死率が高い低いに関わらず絶対に助かる保証はありません。
感染症にかからないこと、広げないこと、これがなにより大切です。
正しい知識をもち、正しく病を恐れることが守備を固めてくれます。
みなさんの共通の衛生意識が、大きな流行を抑える最も効果的なワクチンです。
どうぞ流言飛語に惑わされることなく、健康管理に勤しみましょう。
2026-02-02
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