動物病院HOME < 院長のコラム < 体重は健康のバロメーター
残暑が厳しいとはきいていましたが、これは果たして残暑と言えるのか…と思うほどの暑さに目がくらみます。
何やら予報では10月まで暑いのだとか…やはり残暑ではないのでは……?
いったい秋はどこに行ってしまったのでしょうか。
確か暦上は私も秋の終わりの生れのはずですが、この数年それを実感することがほとんどありません。
秋用の薄手のコートが活躍することは最近ほとんどなく、長袖Tシャツでぼんやり過ごしていたら、いきなり冬!来ました冬!!はい!おまちどうさま!!みたいな勢いの寒波に慌てて分厚いコートを出す、みたいな行動をしております。
服の衣替えなんてほとんど出来ていない気がします。ズボラなだけの可能性もあります。
確か温帯域の国だったはずなのに亜熱帯になってしまった?
学研こども資料には
「亜熱帯地域に見られる温暖な気候。ケッペン(ドイツの気象学者)によると、月平均気温が20℃以上の月が4ヶ月以上あるものとなっている。
熱帯とちがって低温な季節もある。
亜熱帯高気圧におおわれるので、雨が少なく草原や砂漠が多いが,大陸の東側がわ(東南アジアやフロリダ半島など)では季節風や熱帯低気圧の影響で、夏に雨が多い。」
とあります。
だいぶ当てはまってきている気がする?
たしか亜熱帯気候は沖縄だけだったはずなのですが、今年は沖縄よりも本州が暑いという恐ろしい逆転現象。北海道ではクーラーの取り付けを希望する人が増えた、なんていう今までにない暑さ。
我々日本人はもとは温帯気候に恵まれて、豊かな季節の恵みを受けてきた民族ですので、この未曾有の暑さに身体がついていかないのは仕方のないことなのかもしれませんね。
これだけ注意喚起がされているので、ほとんどの方がかなり対策をしていています。それでも熱中症を起こす人が後を絶たず、今年も緊急搬送が1週間で一万人を超えるなど恐ろしい記録更新が続いています。
また長引く暑さに疲れが見えてきているようで、このところ夏バテのような症状で来院される動物たちが増えてきました。
特に高齢の動物たちにはかなりこたえているようで、一日中空調の効いた部屋にいるのに、食欲が落ちたり元気がなくなったり、既往症が悪化しているケースが増えています。
昔なら2ヶ月ほど我慢すれば秋の風が感じられたのに、今年は6月末から今までノンストップの高気温。
すでに2ヶ月を優に超えてまだ先が見えません。
しんどくなるのも無理もないな、と思います。
できることは少ないのですが、なるべく早めに小さな異常を見つけて、早期の対応を素早く行うしかないと思います。
その小さな異常について、1つ。
小さいけれど、とても大切な変化の指標があります。
体重です。
毎日体重計に乗るのが日課になっている、という真面目な飼い主さんの場合はよくおわかりかもしれませんが、体重って本当に健康と密接に関係しているのですよね。
私のように計測値の増加に日々怯えているタイプはなかなか体重計に乗らないので感じにくいのですが、たとえば体脂肪や筋肉量、骨格筋量、水分量などの体組成を計測できるようなハイクラスの体重計で計測すると、その週に食べたもの、取った水分の量、運動の仕方などがかなりつぶさに数値に表れます。
たとえば大きなりんご飴をたべたら数日後、いっきに体脂肪が増えたり、そばやローストビーフなどを積極的にたべたあとや、意識して水分をじゅうぶんに取ったあとは筋肉量が増えたり。
1週間に1回の計測でもかなり変わるので、その週の自分の節制を試されることになります。
こつこつ育てた筋肉はしぼみやすく、脂肪はいつも増えることを虎視眈々と狙っていることを自覚させられます。
筋肉は裏切らないけれど、脂肪はいつも寄り添う……やめてほしい……。
さて動物たちの場合、ここまでの細かな計測は必要ないのですが、体重自体の増減はかなり健康に影響があります。
たとえば食欲が常にあるタイプの子たちは、基本的にきちんと継続してフードを与えていない限り、確実に増加します。
また食が細く、食べたり食べなかったりするこでも、基本的に1週間くらいのスパンで見るとだいたい同じ食事量を食べており、体重はあまり変わりません。
ですから、健康である場合、ダイエットをしない限りは体重というのは減らないのです。
そう、問題は理由もなく体重が減少している場合です。
そこにはなにか絶対に隠れているものがあるのです。
もうずいぶん前になりますが、体重が7キロほどある猫ちゃんがいました。
ワクチンと予防薬で年に数回来ていたのですが、数年間ずっと7キロを超えるくらいの体重でした。
ある年、体重を量るとなぜか5.8キロまで体重が減っていたのです。1キロ以上の減量はかなり積極的にダイエットをおこなっても1年以上から2年はかかります。
けれどこの子の体重が減少した期間は半年ほど。
そして飼い主さんはダイエットしたことはないといいます。
普通では絶対ありえないことです。
おかしいと思ってよく聞いてみると、このところ朝方吐くことがある、でも1週間に1回もないといいます。
臨床症状としては軽いものですが、この明らかな体重減少はおかしい。
すぐに精密検査を行うことにしました。
結果的にこの猫ちゃんは腸管型リンパ腫、それもかなり悪性度が高いものでした。
幸い猫ちゃん自身にまたあまり自覚症状がない時期に見つけられたので、手術後の経過もよく抗がん剤も上手く反応し、驚くほどよい経過を過ごすことができました。
このときに異常が見つかったのは超音波検査とCT検査だけで、血液やレントゲンは全く正常でした。
このように、体重の減少は恐ろしい病気のサインかもしれません。
この猫ちゃんのように、体重減少がワクチンなどの機会に運よく見つかることもあれば、はっきりとした臨床症状が出るまでわからないこともあります。
なるほど、爪切りやトリミング、肛門腺絞りや耳掃除などで、1ヶ月に一度、来院する機会がある動物たちは毎回体重測定を行うので、変化に気づきやすく、異常を見つけることができるチャンスが増えているのだな、と改めて感じました。
これは以前にお話した皮膚病の動物は長生きする、と同じ理由ですね。
たかが体重測定、されど体重測定。
小さな検査ですが、それはとても有効で本人にも負担がない素晴らしい検査なのです。
ぜひお家でも月に一度測ってみてください。
もし難しければ病院で記録していきましょう。そんなことで病院に行っていいの?と言われますが、とっても大切なことだというのは、コラムを読んでくださったらわかると思います。
遠慮なくいらしてくださいね。
2025-09-09
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