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都内でのSFTS感染
都内でのSFTS感染

涼やかで過ごしやすい気候になりましたね。

時折強く吹く風に、舞い散る木の葉を見ては、本当にようやく秋を感じています。

相変わらず服装は迷子ですが、それでも暑いよりずっといいですね。

半袖で外に出てはちょっと寒く、厚手のTシャツを着てはちょっと暑い。

正解がわからぬまま、今日も1日が過ぎていきます。

hr

さて、ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、とうとう東京都でSFTSが発生してしまいました。

SFTSとは…ノミ・マダニの危険性

今回のケースをまとめてみます。


◯症例

15歳

オス

屋内飼育

都外滞在歴あり(8月下旬)

9月2日

  • 嘔吐・下痢の症状があり、動物病院を受診
  • 以降、治療継続

9月18日

  • 飼い主がマダニの付着を発見
  • 容体が悪くなったため動物病院を再受診
  • SFTSを疑った獣医師が検査機関に検査を依頼

9月24日

  • 遺伝子検査陽性

9月26日

  • 抗体検査陽性

備考

  • 現時点で、飼い主及び動物病院関係者に症状ははなし
  • 9月27日 当該犬は死亡
  • SFTSとの因果関係は不明

今回の症例で注目すべきは、屋内飼育だった、ということです。

外飼いの犬であれば、マダニの感染は珍しくないようなイメージがありますが、この犬は屋内。

であれば、お外に散歩に行った際に感染した可能性が多いということです。

ノミ、マダニ予防歴については記載がないためわかりません。

しかし、東京都で暮らしている屋内飼育の、ごく普通に外に出ている時間の少ない犬にマダニがつき、残念なことにSFTSに感染してしまったことは確かです。

今年になり、このSFTSに関して繰り返し注意喚起としてコラムに取り上げてきましたが、ここで今一度、この感染症がすでに身近になっていて、いつかかってもおかしくないものになっている、ということを改めてお伝えさせていただきます。

SFTSは特別な治療法があるわけではなく、あくまで対症療法のみになります。感染した場合、犬の致死率は約40%、猫の致死率は60%、これはかなり高い数値です。

有名な狂犬病ウィルスは致死率99.9%ですが、ワクチンがあります。

ですがSFTSはワクチンがないのです。

事前に予防することはできず、間接的にマダニに噛まれないようにするしかありません。

また、人の致死率は10〜30%

これはコロナウィルス感染症よりも高い致死率です。

今年の夏、感染した猫を助けるため治療した獣医師が、猫から感染し亡くなったことをお伝えしていますが、これは不思議ではないということです。

感染した動物と同居されているご家族であれば、同じように感染する可能性があります。

マダニの予防に関して、現在、もし予防を行っていない場合は早急にかかりつけ医を受診し、すぐに予防薬を処方してもらってください。

また現在、予防をきちんとされている方は寒くなったからといって油断せず、通年予防をするのをお勧めします。

通年予防とは1年間通して予防し続けること、予防しない月を作らないことです。

また以下に一般的な対策を記載しておきますので、参考にされてください。

ペットの対策

  • ペットは屋内で飼う。
  • 散歩後にペットの体表をチェックし、マダニが皮膚に食い込んでいる場合は、無理に取らず、動物病院で取り除く。
  • ペットへのマダニの駆除・予防薬の投与について動物病院に相談する。
  • ペットが体調不良の際は、直ちに動物病院を受診する。

飼い主の対策

  • マダニに刺されないように、草むらやヤブなど、マダニが生息する場所に行く際は肌の露出を少なくする。
  • マダニに効果があると記載されている虫よけ剤(有効成分:ディート、イカリジン)を使用する。
  • マダニに刺された場合は、自分で取り除こうとせず、医療機関で処置してもらう。また、マダニに刺された後、数週間程度は体調の変化に注意し、発熱等の症状が現れた場合は速やかに医療機関を受診する。
  • 動物由来感染症を予防するために、
    - 1  口移しで食べ物を与えるなど、過度の接触をしない。
    - 2 ふん、尿は早めに処理をする(直接触らないように注意)。
    - 3 ペットの体や生活環境を清潔にする。世話をした後はよく手を洗う。

寄生虫関係、感染症関係に関してはかならず予防を完璧にしておくのが、これからの日本では前提条件になると思います。

むしろ予防をしていない場合、具合が悪くなったときに、SFTSやレプトスピラ症といった特異な感染症を除外しなくてはならず、予防さえしていればしなくても済む余計な検査を行う必要が生じます。

その分、余分なコストや時間がかかり、飼い主さん、動物たちへの負担が大きくなってしまいます。

動物たちの治療に関してコストの問題は大切です。時間的、費用的、人的なコストはどうしたってついて回ること。

それを下げるためには、何より予防なのです。

なんの病気もそうですが、予防できるほうが実際にかかるよりずっとローコスト、ローリスクなのです。

いまかかっていないのだから、予防する意味がない、と思っている方が万が一にもいたら、そういう方ほどかかった時にひどい状況になり、命を脅かされる可能性があることをご理解いただきたいと思います。

またご自身だけではなく、周りのご家族やご友人、地域の方々全てを危険にさらすことになるのが、感染症の恐ろしいところです。

hr

公衆衛生の意識というのはどうしても普段の生活に根付きづらいのですが、それでも日本は清潔を尊び、汚れを忌む性質があります。

そのおかげで様々な感染症をコントロールしてきました。

今回のケースを踏まえ、どうか他人事とは思わずに、是非予防を強化してください。

我々動物病院としても、全力でバックアップしてまいります。

2025-10-23

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