動物病院HOME < 院長のコラム < 発展は基礎から生まれる
少し遅くなりましたが、新年、明けましておめでとうございます。
ようやくカルテに記載する日付を、2025年と間違えて書かなくなってまいりました。
それまでは数字の5を無理やり6にグリグリと直して、なんとか誤魔化していました。
月も半分過ぎると慣れてくるんだなぁと毎年感じております。
まだ節分をこえていないので、時節としては旧年のままなわけですが、鏡開きも終わり、成人式も過ぎるとようやく正月リズムが元の日常に戻ってくるように思います。

今年は年明けから重症の症例が多く、なんとか弱った身体に折り合いをつけてうまく付き合ってきたシニアの動物たちが、急速に症状を進めて入院になってしまったり、新たな腫瘍が見つかったり、事故による骨折や折歯があったり、自傷があったりとなんともせわしないスタートとなりました。
日ごろから感じていることですが、長いお休みの前と後では確実にあとのほうが体調を崩す動物たちが多く、休み明けはなかなかの緊張感とともに始まることがしばしばあります。
おそらく普段とは異なるリズムで生活すること、特に年末年始のように1年に一度しかない帰省など家族構成が大きく変わる場合は、動物たちにとって割と脅威なのだと思います。
いつもはいない人がいたり、逆にいなかったり、朝起きる時間も眠る時間も変わったり、ご飯の時間やお散歩の時間などもかわりますよね。
来客中には寝床の位置が変わる動物たちもいるので、その場合も安心の場所がなくなってしまうというかなりのストレスがかかります。
その時は気を張っていて持ちこたえるのですが、元の生活に戻った途端気が緩んで一気に体調を崩してしまう、というのが多いようです。
またお互い慣れない関係の人や動物とかかわることで、人も動物も双方に気遣いをして疲れています。
休み疲れは人の世界ではなんだか責められるようにも思いますが、むしろお休み明けこそ、無理のないスケジュールを組み、少しの不調でも早めに対処していただきたいと思います。飼い主さんも動物たちもどちらもです。

さて、先日ニホンアマガエルの腸内細菌から抗腫瘍効果を得られたというレポートが発表され、世間をどよめかせました。
両生類・爬虫類の腸内細菌から画期的ながん治療細菌を発見! | JAIST 北陸先端科学技術大学院大学
概要を添付しますね。
北陸先端科学技術大学院大学 物質化学フロンティア研究領域の都 英次郎教授の研究チームは、ニホンアマガエル(Dryophytes japonicus)、アカハライモリ(Cynops pyrrhogaster)、カナヘビ(Takydromus tachydromoides)の腸内から計45株の細菌を単離しました。これらの細菌を系統的にスクリーニングした結果、9株が抗腫瘍効果を示し、中でもニホンアマガエルの腸内から単離した細菌Ewingella americanaが、マウスのがんモデルで一度限りの投与により腫瘍を完全に消失させる極めて強力な抗がん作用を持つことを発見しました。
近年、腸内細菌とがんの関係が注目されていますが、これまでは主に腸内細菌叢全体の調整や糞便移植などの間接的アプローチが中心でした。本研究では、これとは全く異なるアプローチとして、腸内細菌を単離・培養し、直接静脈投与することで、がんを直接攻撃する革新的な治療法を開発しました。
本研究成果は、国際学術誌Gut Microbesに掲載されました。
これは聞いた瞬間にすごい!と叫んでしまうようなリリースでした。
今回抗腫瘍効果を発揮したのはニホンアマガエルの腸内細菌だそうですが、他にもアカハライモリやカナヘビからも培養を行なっていることにも注目されます。
大腸がんへの効果を発揮したとありますが、日本人の大腸がん発生は
- 人口あたりの罹患率は123.2 例(男性141.4 例、女性105.9 例)(人口10万対)
- 人口あたりの死亡率は45.2 人(男性49.3 例、女性41.4 例)(人口10万対)
とあります。
大腸がんは本人に痛みなどの症状が出にくく、単なる下痢や便秘だと思っていたら、実はどうにもならないほど進行していた、という悲劇的な経過をたどることがあり、また若い人たちにも発症することがあり、進行も早いがんです。
検便の進化や内視鏡検査での早期発見ができるようになり、救命率は昔より上がっていますが、今尚恐ろしいがんです。
5年生存率が71.4 %(男性72.4 %、女性70.1 %)となっているので、特効薬が生まれればこれほど心強いものはありません。
これが日本土着の両生類であるニホンアマガエルのお腹のなかの菌から発見されるという、後世になれば小説や映画になりそうなお話ですね。
ペニシリンの発見しかり、イベルメクチンの発見しかり、この世界に多種多様に存在する細菌たちにのなかには、特定の病気に対する特効薬となる可能性を秘めているものが相当数あるのです。
それはマリアナ海溝の深海にしか住めない細菌かもしれないし、マチュピチュの山の土の中にしかいないかもしれない。アマゾンの泥のなかに住む爬虫類や両生類のお腹のなかにいるかも知れないし、アイスランドの空を舞う鳥たちの身体についているかも知れないのです。
目に見えない小さな世界には奇跡の可能性が溢れていて、じつはその横を每日通過していても気づくことができない。
これは普通に生活していてもよく感じます。
興味を持ってみると、それに類似するものを多く日常から発見できるけれども、関心のないときにはあることにすら気づかない、というような。
わりと物事は焦点を合わせて見つけ出す人がいて初めて、その輝きが表に出るのです。
科学の分野でいえば、研究者たちはその焦点を合わせるために、紛れもなく心血を注ぎながら途方もない努力を重ね、人一人の人生ではなし得ないことも、あとに続く人たちに道を切り開いていく、パワフルで情熱的な探究者であり探索者です。
ついつい臨床研究にばかり目が行きがちですが、基礎研究のさきにそれがあることを忘れてはいけないな、と思います。
毎年ノーベル賞の発表が行なわれるたびに、素晴らしい研究者の方々からのコメントでも同じことが取り上げられていますが、基礎の先に発展があるのは、我々が幼い頃から学んできた学問そのものだと思います。
どうかその精神が受け継がれ続けてほしいなと思います。
2026-01-16
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