動物病院HOME < 院長のコラム < 飼い主が覚える違和感
先日の急な気温の緩みに、体調を崩されている方も多いのではないでしょうか?
そもそも二月だというのに半袖短パンで外に出ても平気なくらい、春の陽気を感じ驚きました。
上野の大寒桜が季節を先取りしたように花芽を広げ、多くの人たちがスマホにその可憐な花を納めていました。
上野公園の正面にある枝垂れ桜はまだ蕾がそこまで膨らんでいませんでしたので、花開くのにはもう少しかかるでしょうが、今年もお花見シーズンは駆け足になりそうだなと思っています。
また今年も夜桜見物に車を出すことができたらいいな、と思いつつ気づくと散ってしまう儚い薄紅色の花はやっぱり愛おしいものです。この華やかさと散る時の潔さを、我々は愛さずにいられないのだなあと思います。花粉症はつらいですが、花の美しさは春はとびきりですね。マスク対策をしつつみなさんもぜひ春を探しに行ってください。

さて春といえば、毎年恒例の春の検診が3月から始まりました。
通常よりもかなりお得に各種検査を受けることができます。結果には一週間程度かかるのですが、すぐにその場で答えが出せる検査が多いので、ぜひご活用ください。
以前にも何度か書いていますが、健康診断はその動物のコンディションに合わせてオーダーメードするのが良いと思います。
そもそも検査の種類は多く、分かりづらいので各種大まかに年齢、種族で基本の検査項目を組んでいますが、
「最近水をよく飲むのが気になる」
「なんだか寝てばかりいるんですが、年でしょうか?」
「ジャンプするときにためらうようになってきたんですがどこか痛いんでしょうか?」
「食べてるのに体重が減ってしまうのはどうして?」
など、飼い主さんの中で不安がある場合、ぜひそれを教えてください。
なにを調べたらその疑問が解消されるのかを提案できると思います。
常々思っているのですが、飼い主さんたちは何よりも飼っている動物たちのことをよく見ています。
日常と少しでも異なることがあれば、それを『違和感として発見する能力』は、はっきり言って獣医師より上であることが多いです。
その違和感が病的であるのか、それともそうでないものかの判断こそ獣医師がすべきことで、『違和感を見つけること』においては飼い主さん以上の存在はありません。
よってそれがどんなに些細なことでも、教えていただけるととても大きな手がかりになります。

先日、猫ちゃんが来院されました。
飼い主さんはしきりに首を傾げながら「なんだかおかしいんです」と教えてくださいました。
食欲も元気もある、動きも悪くない。吐いたり下痢したりもしない。
でもいつもと違う声で鳴くのだと。
「元からよくおしゃべりする猫なんですが、どうも声色が違うんです」
だから何かおかしいのかと思って、とおっしゃっていました。
「でも、こんなことで来るなんて、ご迷惑じゃないかと思って」
と、とても恐縮されています。
色々と体を見てみると、なんとペニスが出しっぱなしになって腫れていました。
膀胱の中を見て見たら、ひどく腫れ中には細胞がたくさん舞っていました。
尿検査では尿石症が確定され、この猫ちゃんはおしっこする時の違和感や痛みを伝えてくれていたことがわかりました。
実は排泄時に疼痛があり鳴くことは猫ではある症状ですが、排泄のタイミングと全く関係なく、ただ辛いのだとちゃんと鳴いて知らせる猫ちゃんは今回初めて会いました。
「天才だ!!この子は天才ですよ!ちゃんと喋って教えてくれたんですよ!」
そこには「この人ならきっと伝わる」という強い信頼関係があったに違いありません。
動物たちからしたら、話しても人間に伝わらないことの方がきっと多いでしょう。
なんでこんなこともわからないんだ、的な目線でこちらを見ていることもよくあると思います。
でもそれでも、自分が辛い時に飼い主さんはわかってくれるはず、という揺るぎない自信があって、そしてそれをちゃんと飼い主さんも受け止めることができたからこそ、今回のように症状がひどくなる前に診断ができたのだと思います。
早期発見早期治療でしたので、すぐに猫ちゃんは元気になり、あの変な鳴き方もしなくなったとのことです。
我々が学術的に証明できた範囲は限られていますが、それ以上に動物たちとの間に密接なコミュニケーションが成り立っていると感じる飼い主さんたちは多いと思います。
私もそう思います。
我々人類が分かっていることはまだまだほんの少しで、でも体感で理解していることはきっと多くある。
動物たちとの絆はその最もたるものだと思います。
気持ちに寄り添い、野生から離れ、生活や習性までも変えて我々に寄り添ってくれる動物たち。そしてそれを受け止める飼い主さんたちには是非、一番最初のかかりつけ医さんとなって、どんな違和感でも伝えていただきたいと思います。
その違和感を可視化し、治療へとつなげていくのは検査です。
春の健康診断だけでは実は足りないのではないのか、と思う症例に行き当たり今年は新たな取り組みを行うことも検討していますが、それはさておき。
是非この機会を逃さず、検診を受けられてください。
何か見つかるのは怖いけれど、何も見つからない喜びはとても大きく、検診で見つけられた結果は良いものとなることが多いのです。
ほんの少しの勇気を持って、是非検診に臨まれてください。
どんな結果でも、一人で受け止める必要はありません。最初から最後まで我々ジャンボどうぶつ病院はスタッフみんなで飼い主さんとワンちゃん、猫ちゃんたちをサポートします。

そしてもう一つ。
慢性腎不全と戦う猫ちゃんの飼い主さんたちに朗報ですね。
前回のコラムでも取り上げましたが、猫の腎臓病に対するAIM治療の論文です。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1090023326000018
治療群の多くが腎臓治療食を食べている上での結果という前提ですが、腎臓病における新たな治療法への一歩であると考えています。
前例のない方向からの治療ですので、今後実装された場合、その後様々な側面があると考えられますが、それでも新たな手段が増えることは喜ばしいことです。
私は研究者ではなく一臨床医なので、「治療に使えるものはなんでも使え、副作用がないなら!」のスタンスでおります。
あとは単純に投与方法が2mg/headを静脈内投与、二週間おきに一回を12回なので、現実的な投与回数でよかったな、と思いました。
これがマンチカンに1週間に2回なんてことだったら白眼になっていたかもしれません。
残すはコストがどのくらいのものなのか、ですがこちらにはまだ情報が来ておりません。
メーカーさんたちから連絡が入り次第、またご連絡いたしますね。
高齢の猫ちゃんたちはしっかり食べて、血管を健康に保っていただいて、いざの治療に臨む体を作られてくださいね。

さてさて
かつて治らなかった病を、新しい治療法を研究することで人類は克服して来ました。
ワクチンや薬、分子標的薬、抗体医薬、皆多くの犠牲の上に成り立ったつ素晴らしい治療法たちです。
今後も新しい治療法は数多く生まれてくれることでしょう。注意深く見守っていきたいと思います。
2026-03-04
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