動物病院HOME < 院長のコラム < 歴史も寿命も異なる家族
新年、明けましておめでとうございます。
この挨拶をすることに少し抵抗があるほど、年の始まりからたくさんのことが起こりました。こんな年はもうきっと2度とないことでしょう。そう願いたいと切に祈ります。
多くの人たちの現状を考えると大変胸が痛みます。できることは限られていますが、日常生活をきちんと送ることが、いま我々ができるすべてだと思います。
大きな事故や怪我をせず医療に負担をかけず、平常の生活を行い、経済的な応援でもって現地を支援してい来ましょう。石川県や富山県、新潟県は多くの海産物、農産物、工芸品やお酒などの特産物があります。直接的な募金の他にもそういった商品を継続的に購入することで、応援することができるでしょう。現地にマンパワーを届けられない分、こちらでできることをしていきたいと思います。
また、はからずしも飛行機への動物たちの同乗についての議論も沸き起こりました。
現在、多くの日本の航空会社の規定では、動物たちは貨物室で過ごすことになります。
貨物室の環境は機内と同じ温度湿度になるように空調管理を行なっているそうですが、気温や反射熱の影響も受けて高温になることもあり、また動物たちの飛行機への移動には屋外も含まれるため、環境変化が大きくなることも説明されています。
ですから獣医師としては、チワワ、パグ、フレンチブルドッグ、ボストンテリアなどの短頭犬種、エキゾチックやヒマラヤンなどの短頭猫種には飛行機での移動はお勧めできません。呼吸器が普通よりも弱く、気温変化により熱中症になる可能性が高いからです。
また機内に持ち込むことができるクレートはサイズ制限があり、大きめの体格の子たちにはタイトな作りです。物が落ちても壊れないように頑丈であるが故に、中の温度が上がりやすいことも考えられます。
逆に寒い季節であれば、気温低下により体が小さい動物たちや被毛の薄い子達への負荷は大きくなるでしょう。また湿度は限りなく低いため、喘息などの症状を悪化させる可能性もあります。発作、心臓性疾患、呼吸器疾患などの持病がある動物たちが、飛行機で移動する負担は大きいといわざる得ません。
各航空会社はあらかじめそういったリスクを提示していますが、実際にそういった事故が起こった時には人は納得できないものですし、突然、愛する動物を失った悲しみはむしろ強い自責となって長い間、飼い主さんたちを苦しめることになる場合もあります。
一部の航空会社では今年から機内同伴が始まっていますが、実際の緊急時、脱出シューターは動物たちを抱えて安全に滑り降りする設計にはなっていません。
もし同じ機内で過ごせていても、緊急脱出の際はその子を置いて、自分だけが脱出しなければならないのです。 盲導犬の同伴は認められていますが、これは彼らの職業的な立場とハイレベルな訓練の賜物の上に成り立つもので、彼らであっても負担がないわけでは決してないのです。
人より優れた聴覚は飛行機のエンジン音を常に知覚するでしょうし、優秀な触覚は振動をずっと感じ続けるでしょう。見知らぬ人や動物たちの臭いに晒され、なぜここにいるのか、なぜ飼い主さんたちと離れていなければならないのかわからない中で不安を抱え、じっとうずくまって警戒し続けることでしょう。
通常の愛玩犬たちには飛行機での旅はストレスにならないわけがない、というのが個人的な見解です。海外などに移住する際など止むを得ない事情の時でも、こういったリスクを理解した上で、危険を覚悟で旅立たねばならないのです。
愛玩動物たちは長い時間を人間と過ごすことによって、本能的には耐え難い状況でも人の生活に寄り添い、我々のそばで過ごしてくれています。
けれど科学の発展により人が手にしてきた技術は、人以外の生き物には受け入れ難いものも多くあるのです。
動物たちは家族です。
けれど生き物としての成り立ちも、歴史も寿命も、全く異なる家族なのです。
全てを人間の都合に合わせて過ごさせるというのは、ある意味でエゴに近いと思います。
時には彼らに我々の方が寄り添う必要があります。
動物たちの暮らしで得るものは言葉にできないほど素晴らしく幸せなものですが、それにより我々の生活に制約がかかるのも、動物がいないときとは180度生活の姿勢が変わることもごく当たり前のことです。
何もかもが人中心の視点で進んでいくのではなく、動物の視点でそれが本当に安全で安心でより優れている選択なのか、今一度考えて見るタイミングなのだと思います。
平安とは程遠い年明けでしたが、命とは何なのかということを改めて考えるべき警鐘であるのかもしれないと捉えて、今年一年を大切に過ごしていきたいと思います。
日常を送ることができる幸せに感謝しつつ、自らができることに全力を注いでいきたいと思います。
本年もジャンボどうぶつ病院をどうぞよろしくお願いします。
2024-01-15
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