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短頭種のわんちゃん達
短頭種のわんちゃん達

湿度の高まりから不快指数はだだ上がり、急激に上がった気温により熱中症も増えています。

この一週間ほどは垂れ耳の犬達がこぞって外耳炎を悪化させ、若い動物達は嘔吐を訴え、ああ、季節が変わったなと実感する日々です。

季節の変わり目は体調を崩しやすくなりますので、ご家族のみなさんも含めてどうか体調に気を配って下さいね。

短頭種は呼吸能力が低い?!
短頭種は呼吸能力が低い?!

さて、今回お話しするのは短頭種のわんちゃん達のお話。

短頭種に分類されるのは、有名なブルドッグを始め、パグ、ボストンテリア、フレンチブルドック、シーズー、チワワなどが代表選手です。

マズルといわれるお鼻が長い通常犬種に対し、横から見た時に鼻の高さがほとんどないわんちゃん達が短頭種といわれる犬種になります。

コリーやシェルティーなどを考えて頂ければ分かるのですが、パグやフレンチブルドックは鼻が短いですよね。

これはそのまま換気能力、いわゆる呼吸能力が低いことを示しています。

マズル、いわゆる鼻、その内腔は繊毛を備えた上皮が内張りし、外界から呼吸で吸込まれた異物を排出すべく粘液も分泌しています。

いわば外界からの侵入者に対しての防波堤であり、これが長いほど異物排出能力は高いと言えます。

また長い鼻腔内で外気は温められ、適度な湿り気をおびて気管へと運ばれます。

こういった場所が短いだけで、短頭種は普通のわんちゃんより生体防御の点でも不利な構造になっています。

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また鼻を短くするために口の長さも大きさも短く狭くなっています。

喉頭鏡などで口腔内を覗くと分かるのですが、口腔内は奥行きが短く、その割に左右の頬の内側の肉が内部へせり出しています。

また舌が長く厚く、とくに舌の付け根が分厚いせいで喉の奥がいっそう狭くなっています。

喉頭といわれる所が、他犬種に比べて狭苦しい作りになり、呼吸する時には非常に効率の悪い形です。

加えて歯並びがあまり良くないことが多く、向きがバラバラだったりもします。このせいで歯があたっている歯肉に炎症が起きていることも多く、また歯石の沈着も多く見られます。歯石とは歯につく菌の塊ですが、これによって喉頭が常に菌に晒され喉頭炎が起きていることもよくあります。

ここが炎症していると、水を飲む時にむせたりする症状が見られ、誤嚥にも繋がります。

喉が狭いために、呼気からの蒸散によって行われる体温調節が上手くいかず、体温が上がりやすくなります。

夏は鼻が短い犬種の子たちにとって心配な季節なのです。

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例えばブルドックは生後三週間で、酸素飽和濃度が100%から低下していくというデータがあります。

酸素飽和濃度とは血液に酸素がどのくらい溶け込んでいるかのパーセンテージですが、最近ではコロナウイルス感染症によるモニター管理の中でよく名前が挙がりますね。

これが96%、95%と下がるということは、息が苦しくなっていくということです。

生まれて一ヶ月にもならないのに、息が苦しいのが当たり前の人生を歩むことになります。

いま我々がマスクをつけて生活していることでも息苦しく感じるのに、何もしないでただ天然の自分の気道だけで、息が苦しくなってしまうのです。

また短頭種の中でもパグやフレンチブル、ボストンテリア、ブルドックは鼻孔狭窄といって鼻の穴自体が小さい子達もいます。

加えて軟口蓋下垂といってのどちんこが垂れ下がり狭い喉をさらに狭くする症状がある子もいます。

上記の二つは手術によって改善することもありますが、加齢によって再び症状が出てしまうこともあり、悩ましい問題です。

それ以外にも椎体という背中の骨に奇形があることも多く、それが原因での神経症状などが見られることもあります。

夏はより一層の配慮を
夏はより一層の配慮を

短頭種は元は狩猟や闘犬のためにその形を作られた犬達です。

人間のために、進化とは別方向へ形を変えてきた生き物なのです。

日本という、湿度が高く四季がある国で一緒に暮らすためには、我々がそのサポートをきちんとしてあげなければ、熱中症などであっという間に亡くなってしまうことがあります。

縁あって家族として受け入れたのですから、長く一緒に元気に暮らすためには、今頃の季節から散歩の時間などに気をつけ、体重管理をきちんと行い、必要ならば鼻孔を広げる手術や軟口蓋切除を受けて呼吸を改善するなど、生涯にわたってケアを続けていく必要があります。

動物病院によっては、短頭種の麻酔管理を行わないケースもあると聞きます。

麻酔がハイリスクなため、そういった判断もやむ得ないのだろうと思います。

ただ少しずつそういった短頭種の悲哀ともいえる機能的な問題は、改善されようとされているのも事実です。

現状見ていると少し鼻が高いパグやフレンチブルドックが見られるようになってきています。彼らは呼吸音もせず、息苦しさも少ない生活ができているようです。

イギリスでは大分前からブルドックの形自体を変え、鼻の高い個体を増やそうという動きがあります。

人類の都合で、息苦しさをともなう体にしてしまったことの反省から、犬らしく生活のしやすい形へと変化させていく、これが続けばいずれ短頭種症候群といわれる一連の呼吸器障害は世の中からなくなっていくのかもしれませんね。

ですが、今のところやはり夏は厳しい季節、どうぞより一層の配慮をしてあげて下さい。

2021-06-15

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