動物病院HOME < 院長のコラム < SFTSについての新情報
秋も深まり、大分涼しくなってきました。秋の日はつるべ落としといいますが、暮れるのが急に早くなりましたね。
今年の夏から秋にかけての寒くなり方は一気呵成過ぎて、体調を崩しやすかったように思います。
ただ急速な冷え方は木々の色づきにはよいそうで、いっそう色鮮やかなのだとか。紅葉を楽しむ余裕が毎年ないのですが、街路樹の色づきにその気配を感じることができます。
足元にまう赤く色づいた葉に、ふと香る金木犀の香りに、鼻先を冷やすつむじ風に、どこからやってきたのか駐車場に転がるドングリに、昔の歌のような小さな秋を感じます。
さてあまり嬉しくないニュースが入ってきたので、ご連絡を。
少し前に話題になりました、マダニから感染する重症熱性血小板減少症候群(SFTS)について新たな情報が入ってきました。
前回コラムに取り上げさせて頂きましたが、今年7月、マダニに噛まれて感染しSFTSを発症した地域猫が人間を咬み、その方が感染して亡くなるという衝撃的な内容だったため、マスコミなどにも取り上げられ注目されました。
SFTS自体は数年前から西日本を中心にマダニからヒトへの感染が報告され、発症した場合の致死率の高さから警鐘が鳴らされてきました。
この時大変問題になったのは、節足動物であるマダニが直接人間を噛んでうつったのではなく、猫という哺乳類から人へと感染したことを確認した例が、世界で初めてだったことでした。
また猫に噛まれて亡くなったというショッキングさから、報道機関こぞって取り上げたので、記憶に新しい方もいらっしゃるかもしれません。
SFTSの初期症状はだるさや発熱などで、5日~6日後ごろから意識障害や出血が起きることもあります。重症化しやすく、致死率は約20%とされており、特効薬はありません。
これまで西日本を中心に303人の患者が報告され、死亡例は全て50代以上となっています。
そのためこの数年は犬や猫といった伴侶動物(ペット)への積極的なマダニの予防薬の使用が薦められています。
実際、ジャンボどうぶつ病院に来て頂いている動物達の飼い主さん達も、今までやっていなかったけど、やっぱりやり始めます!といって定期的な予防を開始されたり、今まではその季節だけだったけれど、通年予防(一年を通しての予防)に切り替えられたという方もいます。
ですが人間、誰しも喉元過ぎれば熱さ忘れる、でちょうど秋から冬の予防オフシーズンに入った最近は、通年予防の方以外は予防をお休みしている方も多く見受けられます。
そんな時にタイムリーですが、今回はSFTSを発症した飼い犬から飼い主さんへの感染が報告されました。
飼育していた犬がSFTSにより体調を崩し、その看護をしていた飼い主さんが、咬傷ではなく唾液などから感染したことが様々な検査の結果分かったのです。
犬も飼い主さんも回復され、命に別状がなかったのは本当に幸いなことだったと思います。
ここでのポイントは、
ということだと思います。
前回の地域猫の報告では、周囲からは「やっぱり野良猫は触っちゃいけないんだよ」や「噛まれないようにしないとねえ」と言った意見が聞かれましたが、今回の報告ではそういったことでは予防できないことがよく分かります。
SFTSウイルスは体液(唾液、血液など)、排泄物に含まれ、感染の機会をうかがっています。今回のケースも看護を通して密な接触があったために、飼い主さんへ感染したものと考えられます。
動物達と触れ合った後は、手洗い、うがいを心がけ、口移しで餌やおやつを与えるなどの過剰な接触は避けた方がいいでしょう。
この症例は西日本ですが、東日本でも野生動物達からSFTSに感染がみられ、今後いつ感染してもおかしくない状況です。
以上の点をふまえ、今一度マダニの予防についてもう一度、ご家族全体で考えて頂きたいと思います。
ちなみにノミ、マダニ予防に関しては以前のコラムなどでもで対策を取り上げていますので、参考になさって下さい。
もし、犬、猫にかかわらず「あれ?うちの子、まさかSFTS?」
と疑うことがあれば、何よりも早く病院へいらして下さい。症状、検査をふまえ診断を速やかに行う必要があります。
また猫は重症化しやすく、犬は軽症ですんでいるケースが多いようです。どちらにせよ早期発見早期治療が大切なことに変わりありません。
個人的に十月だというのに、妙に暑い日があったと思ったら、突然もの凄く寒くなったり、だらだらと長雨が続いたり。例年とは異なる気候にヒトも動物達も振り回されていると強く感じます。
これだけ日本全体の季節が変わってきている昨今、今までこれで大丈夫だったから…に安心せず、通年予防が一番だなと思う秋の日なのでした。
2017-10-31
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