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 獣医師の現実
獣医師の現実

新年度が始まって、あっという間に一ヶ月ですね。

昨年とは違って天候にも恵まれ、春らしさを堪能する事が出来るのは本当に嬉しい事です。

お花見などは残念ながら行けませんでしたが、仕事のあとの帰り道、満開に咲き誇る夜桜を見ながら、今年の春も天晴なものだなあと、季節が作り出す美しさに心洗われるようでした。

桜の花に想いを馳せていたのがつい先日の様なのに、気づけば葉桜に。新緑の美しさが網膜にゆっくりと染み渡るようです。

新社会人の皆さんは、仕事に慣れはじめた頃でしょうか?

目の回る様な一ヶ月に、慣れるどころではないかもしれません。

社会に出て働いて賃金を稼ぎ、責任を果たし社会貢献していかなければならない立場というのは学生時代とは全く世界が違って、何度も繰り返し悩んだり苦しんだりするのが、むしろ当たり前だと思います。

自分の出来る事の少なさに、指導してもらっても満足に答えられない歯痒さに、何度繰り返しても上手くいかない悔しさに、どれだけ涙を流した事か…。

自らの新卒の当時を振り返っても恥ずかしい思い出と失敗と、早く一人前になりたいと人生を早送りする方法がないものかと、半ば本気で考えていた事ばかりを思い出します。

hr

今悩まれている皆さん、皆同じです。

今、ベテランでばりばり仕事をこなしている先輩も、ばりっとしたスタイルで困難な仕事をさくさく片付けている上司の方も、皆最初は新卒で同じ様に悩み、苦しんでいたりしたのです。

ですからどうぞ心配なさらず。
ちゃんと努力していれば、いつの間にか出来るようになっているものです。

ブラック企業だとか色々ありますが、少なくとも自分自身がきちんとした就職活動をして、よく調べた上で就職した所ならば、努力をきちんと評価してくれる所のはずです。

hr

我々獣医師の就職先は?というと、いわゆる動物のお医者さんである、小動物臨床(この場合小動物とは犬や猫、うさぎやフェレット、エキゾチックアニマルなどが診療対象になります)牛や馬、豚などの大きな動物達が診療対象の大動物臨床以外に、農林水産省や、厚生労働省、または県庁や東京都などの公務員、一般企業の研究職、科学捜査研究所、公衆衛生関係、各種フードメーカーなど、実際は多岐にわたります。

入学する際には知りえなかった様々な職種が、高学年になる間に色々な所で提示されます。

それまで漠然と動物のお医者さんを志望していても、自らの興味が違う分野に向かう事もあります。

では、どのくらいの卒業生が一般臨床と言われる所謂動物のお医者さんになるかというと、六割くらいでしょうか?これは大学にもよるのですが、少なくとも私の大学は特に、臨床家を目指す学生が多かったように思います。

けれどこれは卒業時点のことで、あれから十年以上が経った今、臨床家として働いている数はずっと減ってさらにその半分程、女性獣医師に限って言えば、さらにその半分と言った所でしょうか。

臨床家の獣医師は、産休や育休が整備されているのはごく一部です。妊娠しながら働いている時に、妊娠は病気ではないと言われるのは、獣医師も例外ではありません。

結婚出産を機に、獣医師をやめるケースも後を絶ちません。素晴らしい女性獣医師の先輩方が、ライフステージの変化によりやむなく…といった例も見てきていますし、同期が公務員のように福利厚生の手厚い所へ転職、というのは珍しい事ではありません。

休みはない、手当もない、仕事は責任が重く、それに反して給料は安い、糞尿や吐物にまみれ、場合によっては噛み付かれたり引っ掻かれたり怪我はたえない…少し古い言い方では3Kと言っても差し支えないね、なんて働きはじめた当初は良く笑っていました。

こういった現状、特に女性には大変シビアです。ですから必然的に臨床家は男性が多くなります。

hr

それでも、やはり臨床家でいたい理由は、沢山あって一言では言い表せません。

どんな気持ちがあって仕事をしているのかは、それぞれの獣医師で違うのでしょうが、それでもその根本は皆、動物のために、飼い主様のために、少しでも良い生活を送って欲しいという気持ちだと思います。

なかなか語られる事のない獣医師の現状ですが、皆様がかかっていらっしゃる先生達は皆同じ気持ちを持っているのです。

もし、機会があれば是非、聞いてみて下さい。

「先生はどうして獣医師になったのですか?」

きっと、いつもの先生とは少し違った表情で、お話ししてくれるはずです。

2016-04-30

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