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「生き方」を問う1年
「生き方」を問う1年

今年も何がなんだかわからないうちに十二月が終わります。

気づけばなんと大晦日ですね。

hr

さて、今年ほど世界情勢がこれでもかと変化した一年はなかったのではないでしょうか?

大袈裟にいえば、生き方そのものを考えさせられた時間だったように思います。

働くとはなんなのか、また人との繋がりとはなんなのか、何を自分の人生でもっとも大切に考えるのか、などを問われたように感じるのです。

仕事のことで言えば、ほんの一年前まで人手不足でアルバイトやパートを含め賃金は高値ですすみ、売り手優位な市場が広がっていました。海外からの働き手を募り、それでも人が足りずに中小企業は困っていたほど。

ですが、いまはどうでしょうか?

従事する人が多く、人手不足が深刻だったはずの飲食関係や娯楽関係の仕事が壊滅的なダメージを受け、多くの会社や企業が苦しみ、雇用を続けることができずに失業や倒産も相次いでいます。

もう一年以上前に、なんの番組だったか、二十代後半の女性が「今はどこででも雇ってくれるから、仕事が自分に合わないならさっさと辞めればいいって思ってます」とテレビのレポーターに答えているのを見ました。

その子は収入はすべてアルバイトなどで得たもので、本人は正社員としての職を望んでいるものの、遅刻をしない、無断欠勤をしない、などの基本的なことができず、職場にいづらくなってはすぐにやめるということを繰り返していることを、あっけらかんと告げて全く悪びれていませんでした。

私はその番組を見たときにあまりにびっくりして、目が釘付けになりました。

こんな風に仕事を簡単に考えている人がいるのかということ、かなりずれていると思われる職業意識をその年になっても直せていないこと、それでも社会で生きていけていること、どれも自分の常識範疇外で、衝撃を受けたことを覚えています。

そして彼女の発言に賛同する声が多かったことも、驚きすぎて自分の感覚がおかしいのかと一瞬疑ってしまうほどに驚愕しました。

そのためにかなり印象にのこっているのですが、あの彼女はいまどうしているのかな?とふと考えます。

あの感覚で生きていた人たちは、賛同していた人たちは、いったい今どうしているでしょうか。

余計な御世話なお話ですが。

hr

仕事、ということで言えば、獣医師という仕事は多岐にわたり、臨床以外に公務員、研究職に一般企業などなど色々な分野で働くことができます。

どの仕事も、肩書きにでかでかと獣医師!と書いて乗り込んでいくわけで、そういう意味では国家資格は大きいなと感じます。

社会に出た時点で、なんのスキルもないまま『先生』といわれる立場で働き始める。それまでなにもできない学生が、いきなり先生になるのです。それはとても特殊なものだと言わざる得ません。

自分がなにもできない単なる社会人一年目のペーペーであることを常に意識しないと、とんでもない間違った振る舞いをすることになってしまう。現に間違ってしまった痛々しい失敗談などもたまに聞きます。

私がそう考えるのは、大学入学時に言われた学年副担任の准教授からの言葉が刷り込まれているからです。

「君たちは、なにもできない学生なのに、社会に出るときは『先生』と呼ばれてちやほやされてしまいます。だからこそ、ただの学生としていられるこの6年の間に、居酒屋やカラオケや宅配や、なんでもいいです、普通の仕事のアルバイトをしてください。そこでただの学生として、理不尽や無理解な事態に沢山あって、『先生』ではなく人間としての経験を積んでください」

概ね、このようなお話でした。

その直前のお話が学年担任の教授から、「君たちは一人の合格の後ろに三十人以上の不合格者がいる立場です。君たちがその夢を叶えるため、夢をたおられたものがそれだけいる。だからこそ、この6年はバイトやサークルなどにうつつをぬかすことなく、真剣に学業に打ち込んでください」だったので、余計に衝撃的でした。

そう思ったのはわたしだけではなく、やや会場がざわついたのを覚えています。

真逆なことをいっている…と最初はおもったのですが、よく聞けばどちらも正しいことをいっているのだとすぐ気づきました。

どちらの視点も我々に必要なものです。

学業に真剣に打ち込むこと、そして人間としての自分を磨くこと。

どちらもかけてはいけないことでした。

18歳のあのとき、そのどちらもを入学式で言ってくれた母校の姿勢は今考えてもなかなかに粋だったな、と思います。

そして、大学って面白いところだなぁとも。

小中高大と学校にかよって、ぶっちぎりに面白かったのは大学で、自分の学びたい分野を学びたいだけいっぱい学ぶことができる贅沢を噛み締めることができる六年間でした。

何を学びたいと思い、どんな仕事をしていきたいのか、それをはっきりさせるのに18歳は実は若すぎるようにも思うのですが、その目標を早く見つけられたことで、あれだけ楽しい大学時代を過ごすことができたというのは、本当に幸運だったと思います。また、働くということがいったいどんなものなのかの認識の芽吹きは、この六年間にあったともおもいます。

それをサポートしてくれた両親には感謝しかなく、親の立場になって感じるのは、果たしてあれと同じことを私ができるのか、という若干の不安です。

なんにせよ、仕事するというのはある意味生きることの側面だと思っているので、今後も働き方も含め自分の人生をどうしていきたいかを、大切に考えていきたいとおもいます。

hr

本年もジャンボどうぶつ病院と共に、健やかで元気で過ごしてくださってありがとうございます。

まだまだ先は見えず、不安もつきませんが、来年も毎日こつこつと、動物たちと飼い主様たちの幸せな生活のために、努力していきます。

皆様、よいお年をお迎えくださいね。

2020-12-31

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