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獣医さんになるには
獣医さんになるには

大雨のなかでのお盆休みとなりましたが、皆様はいかがお過ごしでしょうか?

毎年台風の季節には風雨の災害を心配するコラムを書かざるを得ないのですが、今年は六月から気の休まることもなく、日本列島が大雨に見舞われているため、こちらも常に水害を懸念し続けています。

そういった注意喚起のお話ばかり書くのもいかがなものかと思いますので、全く別のお話を。

最近、「子供が獣医さんになりたいって言うのですが、やっぱり大変ですか?」というご質問をいただくので、簡単に、獣医さんてどうやってなるの?というお話をさせていただきますね。

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獣医師は国家資格になるため、獣医師国家試験を受けて合格しなければ資格を取得することができません。

この獣医師国家試験を受けるためには、国に認定された六年制の大学を卒業することが必須条件となります。

このあたりは、医師、薬剤師などと同じですね。

大きく異なるのは、獣医師の教育を行う大学がとても少ないこと。

国立大学は北海道大学獣医学部をはじめ、全国で十六校。

私学は何かと話題の加計学園が加わるまで、全国でたった五校しかありませんでした。

よって全部合わせても二十ちょっと、しかも国立大学は一学年の人数が少なく、私大でも一学年は百二十前後でしょうか?

一年に一度の獣医師国家試験に合格して獣医師として免許を取得するのはおよそ千人前後といわれていて、一年にわずかそれだけしかとられていない資格といえます。

医師国家試験の合格者が約九千人、薬剤師国家試験の合格者が約九千五百人、司法試験の合格者が年間約千五百人、と考えるとどれだけ少ないかお分かりになると思います。

そう、獣医さんはちょっとしたレアキャラなのです。

確かにこれは社会に出るからよく感じることで、友人やお知り合いにお医者さんがいるお話は聞くのですが、逆に獣医さんの知り合いというのはなかなか聞きません。私たち自身、自分の同級生や先輩後輩以外で、全く違うところから知り合いになった方の職業が同職種であったことは殆どないように思います。

さて、その少ない専門の大学に入るためには大学受験をする必要がありますが、この流れでうすうすお分かりのように、学校が少ないということは入学を希望する生徒が多ければそれだけ熾烈な受験になるということです。

私が入学するしばらく前に「動物のお医者さん」という漫画が一大ブームになりました。

モデルはいわずと知れた北海道大学獣医学部なのですが、各大学から色々なエピソードや要素が取り入れられて、大変面白い内容になっています。

主人公の飼うハスキー犬があまりにかわいくて、飼育の大流行になったきっかけでもあります。

入学したあとに読み返すと、実習やテストなどほぼ実録に近く「あ、これ漫画で読んだ!」と思うところがたくさんあり、思わずにやにやしてしまったものです。

この漫画がきっかけとなり、獣医学科学生の学生生活が非常にメジャーになったおかげで、獣医学科を希望する学生が非常に多くなりました。結果として獣医学科の偏差値がとても高くなりました。

現在でも偏差値は80から67以下になることはなく、医学部ともほぼ変わらない数値ですね。

結果として希望者は浪人生活を余儀なくされることも多く、入学者の割合は浪人生六割、現役生四割。

現役生には推薦が含まれますので、一般入試で現役合格するのは至難のわざといえます。

よく進学校の大学入学者一覧などが各学校のホームページなどに記載され、医学部が何名、歯学部が何名などがまるで戦績のように誇らしく表示されていて、この高校は医歯薬系学部に強い教育をしています!というアピールをしていますが、獣医学科の合格者は一人いるかいないかが多く、どこか特定の高校にいけば行きやすい!ということはありません。

実際に大学では一浪、二浪なら早いほうで、九年間浪人をしたけれど、合格できずに同じ大学の違う学科にいくことにした生徒や、浪人が許されなかったから自分で社会人になりお金を稼いでから改めて受験した生徒もいて、そういったことは珍しくありませんでした。

入学後の学生生活
入学後の学生生活

晴れて入学して、六年間の学生生活が始まります。

こちらも必修科目選択科目がみっしりとあります。小説や映画やドラマでみていたバイトと遊びを楽しむ大学生活とは一体どこに?と思うくらいのしっかりとしたカリキュラムです。

一年生二年生で一般教養の科目を取得し、学年が上がれば必修授業と実習とレポートの嵐。かなりタイトなスケジュールで組まれており、空き時間は図書館でレポートの資料を探しつつ、暇をみつけては書き続ける必要があります。実習の場合、深夜にまで及ぶものも少なくないので、実家の場所によっては独り暮らしを余儀なくされる場合も。

夏休みには牧場実習などもあり、二週間程度はそのために地方に行くこともあります。

六年生になると国家試験対策の授業が始まります。

年に数回の国家試験の模試ともいえる試験である程度の得点をとり単位をとらないと、国家試験自体を受けさせてもらえない大学もあります。正確にいうと卒業資格が得られないのです。

これは当たり前といえば当たり前で、国家試験の合格率は各大学共に公開しています。そしてこれが低いことは大学の評価につながると考えられています。

よってそもそも試験を受けても受かるレベルに達していない生徒は受ければ落ちて合格率を下げることになると判断され、実質的な足切りをされる場合もあるのです。

獣医師国家試験合格率は各大学多少の差はあれど、おおよそ100%から低くても80%後半です。もちろん落ちてしまうこともあり、そうなると国家試験浪人となります。

国家試験の浪人生の合格率は25%前後といわれており、なかには国家資格を得られないままになるケースもあります。

国家試験は数年単位で内容が大きく見直されることもあり、その年の傾向や分析などは各大学の教授や准教授たちや国家試験対策委員会がおこなったりと、指導は現役生中心に行われます。また1年という長丁場の国家試験の勉強は研究室単位で行ったり、仲の良い同級生同士で行う集団戦でもあります。

入学するための受験とは異なり、誰かを蹴落とすための勉強ではなく、みんなで合格するために一丸となって戦う時間です。落ち込んだり悩んだりするのを互いに励ましながら、試験当日まで一致団結して頑張るので、現役で受からないとなかなか厳しいものがあるのです。

そして国家試験を受け、合格すると獣医師免許を取得したことになります。晴れて獣医さんになったわけですね。

しかしここからが本番。

獣医師の進路はかなり多岐にわたります。

大学での研究や企業への就職、各種国家公務員や、大動物臨床、小動物臨床などなど、選ぶ道によってその先は全く種類の異なる努力と情熱が必要とされるのです。

それでもこれだけの時間をかけてようやく獣医さんになったので、一人前になるまではまだまだかかりますが、それぞれが研鑽を積んでいくことになるわけです。

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ざっとですが、獣医さんってどうやってなるの?の疑問にお答えしました。

ですがこれも私自身が学生であった十数年前のことですので、今では少し変わっているかもしれませんね。

より難しく、よりコストがかかるようになっているようですので、興味がある方はぜひ調べてみてください。

2021-08-17

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