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動物と災害対策
動物と災害対策

秋が深まり急激に寒くなる日が増えました。かと思えば妙に暑い日もあって、上着の種類に悩む今日この頃です。

今月は台風が東京を直撃し、23区にも大雨洪水警報が出るだけでなく、多くの電車や道路が規制され、臨時運休や商店の臨時休業も多く見受けられました。

安全を確保するために数日前から多くの注意喚起がおこなわれ、事前に安全な場所への避難や対策が実行されたため、被害は少なくて済んだのだと思います。

かくいう当院も、開業以来初めて台風による臨時休診とさせていただきました。

多くの飼い主様にご協力いただいてありがとうございました。お陰さまで無事に何の被害もなく過ごすことができました。

水害に備えて
水害に備えて

では実際にどんな対策をしたのかというと。 今回は荒川の氾濫も懸念されたため、院内の機器を移せるものは移し、お預かりしていた動物たちを三階に避難させ、カルテやお薬なども高い棚にしまうなどしました。

下水があふれないようにトイレやシンクの排水口にも土嚢をつみ、ドアの隙間にタオルなどを詰め、シャッターの前に土嚢を積み終わった時は汗だくでへとへとに疲れていました。想像よりも結構な時間が準備に必要でした。

正直なところ、ここまでの用意をしたことはなく、事前に楽観視していた自分の想像以上に大変だったというのが実感です。

また台風が通り過ぎた後も、院内を元の姿に戻すのにかなりの時間が必要でした。連休があったおかげでなんとか通常の診察日には間に合いましたが、それでも家族に協力してもらっても半日はかかりました。

ホテルの動物たちに関しても、連絡が取れる限り飼い主様に連絡をとり、早めのお迎えをお願いしたりしましたが、それでも海外などにいかれていて、どうすることも出来ない子たちの管理を今後どのように説明し行うのかは、検討課題になりました。

災害の影響
災害の影響

過ぎ去った後の影響としては、運送関係がストップしたのでご注文いただいていた薬や食事などは、予定日には届かなかったことぐらいでしたが、これが本当に浸水被害などがあった場合、どのくらいで診察を再開できるのであろうかと不安になりました。

被災した場合、電気系統などが止まれば超音波検査も血液検査も、機械を使った検査はできません。電気もないため充電できている分が終われば点滴なども出来ません。

五感を使う診察以外はかなり診察内容が制限されることでしょう。

事実、東日本大震災の時、私は大学病院に勤めていたのですが、あれだけ大きな病院であっても緊急用発電機がどこにあり誰が管理しているのかわからなかったりして現場は混乱しました。震災当日は帰宅困難者も多く出ましたし、その翌日も近隣に住んでいる職員以外はそもそも勤務にこられない状況になりました。

電力不足による輪番停電になった場合に備えて、予定していた手術を延期したりするのは週明けに緊急で決定し、電車の本数が少ないことを受けて遠方の職員を午前で返すなどの判断は、マニュアルもなくその場その場で決まっていきました。

実際、多くの動物病院でも災害対策についてはまちまちであり、今後考えていくべき課題だと思います。

地震や水害などによる被害を受ければ、二週間はまともに動く事は出来ず、相当な時間が復旧に掛るという想定で、あらかじめ病院をどうしていくのかについて考えるのがその第一歩なのだな、と土嚢をかたづけながら思いました。

動物たちのための備え
動物たちのための備え

また、飼い主さまたちに災害対策をお聞きすると、皆さん様々に工夫を凝らされていました。ここに例をあげておきますので参考にされてください。

  • フードやお薬の注文を早めにし、少し多めに手元においておく。
  • ペットと共に避難できる場所を、あらかじめに保健所などに確認しておく。
  • キャリーケースの準備をし、いざという時にはすぐに避難できるように手持ちの鞄一つに、フードやお薬、水、ペットシーツ、ウェットティッシュなどを三日分程詰めておく。その際は各種ワクチンの証明書なども入れておく。
  • 車での移動も想定し、酔い止めを用意する。

くわえて、あらかじめ病院に臨時休診の有無の確認を電話などでして頂くケースも多く、お知らせとしてシャッターに臨時休診のお知らせを貼り出しましたが、今後はホームページなどにも事前に告知できるようにしたいと思っています。

もしもの時のために
もしもの時のために

備えあれば憂いなし、とはいったもので、今回の台風は今一度災害対策に関して考える良い機会となりました。

動物たちは飼い主さんたちご家族が無事でいる前提でなければ避難も出来ません。

人間の子供のように一人では何もできないですし、人間とは異なり、どうしても非常時には切り捨てられやすい側面があります。

ケージに入れることが出来ないと、避難も出来ず、また避難をしても鳴き声やにおいなどで周りに気を使わなければなりません。

よく、「うちの子はケージに入って生活してないから入れると鳴くんです」というお話を聞きますが、それではいざという時に通りません。

鳴き声は慣れない方や動物を飼われていない方にとっては、苦痛になります。残念ながら「同じ命なのに文句をいうほうがおかしい」という主張は受け入れられません。

なぜなら鳴かないようにあらかじめしつけることができ、訓練も可能だからです。

ケージやクレートを普段から上手く使い、安心できる場所と認識させてしまえば、驚くほど健やかに過ごすことができます。ケージ内で鳴くのは本能ではありません。

また留守中に頑丈なクレートなどで過ごす動物の場合、飼い主さんがいない間に被災して、棚や家具の下敷きになっても破損せずに助かる場合もあります。

割れた窓から逃亡するなどの事故も防止できます。

3.11では留守中に部屋から猫が脱走してしまったり、部屋の中でパニックを起こして全部の爪を折ってしまうなどの事故がありました。

ぜひ一度考えていただきたいと思います。

今回は幸運なことにジャンボどうぶつ病院では停電などもなく、河川の氾濫での床上浸水もありませんでしたが、実際に被災された皆様がどれほど大変な思いをされているかをニュースで見る度、胸が痛みます。

被災地の一早い復旧、また災害で受けた体の傷とともに心の傷が癒えるよう、心からお祈りしております。

2019-10-31

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