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セカンド・オピニオンの受診は後ろめたい?!
セカンド・オピニオンの受診は後ろめたい?!

まるでカレンダーをめくったと同時に秋の成分を多めにしておきました!と、誰かにいわれたのがごとく、十月に入って一気に気温が下がりましたね。

湿度はまだ保持されていますが、乾燥の気配もすぐそばに来ているように感じます。

昨年の今ごろは台風が首都圏を直撃し、荒川が氾濫する可能性があるとのことで、せっせと土嚢を積んで病院を防護していましたっけ。 あれはなかなかよい避難訓練になったなぁと、いまになっておもいます。

やはりシミュレーションをしておく、しておかない、では、いざことを前にしたときに心構えが違いますよね。

本当に半日がかりで、思ったより重労働だったので、やはりこれは早めに人員を確保し、準備に入るべきなんだなぁと再確認しました。

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さて、この一週間ほど、お腹の調子を崩す子がとてもふえています。最近の言い方をするなら爆速で増加しています。

1日の診察で何件検便検査をしたのかわからなくなるほどなので、かなりのものです。ぜひ、わんちゃんやねこちゃんたちが、二日以上の下痢や嘔吐症状が出る場合は、速やかに受診してくださいね。

こじらせてしまうとひどい場合入院しなければならないこともありますので、あれ?いつもならすぐよくなるのにな?と疑問を持った時点で来院してください。

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さて、このところ、ジャンボどうぶつ病院ではセカンド・オピニオンの依頼が増えており、いろいろな悩みを抱えた飼い主さんと動物たちが、多くいらっしゃいます。

お電話でセカンド・オピニオン希望なのですが、どうしたらよいですか、というお話をいただくこともあれば、実際にいらっしゃってから、実は…と言いづらそうにお話をしてくださる場合もあります。

よく悩まれているかたがいらっしゃいますので、明言しておきますが、基本的に昨今、どこの病院もセカンド・オピニオンはごく普通のことだと受け止めています。

たとえ掛かり付けの動物病院があっても、他の先生の意見を聞きたい、というのはおかしいことではありません。もし飼い主さんご自身の病院でも、他の意見も聞きたいとお願いした場合、他の病院にいくことを止められたりはしないと思います。

私たちの世代は、大学教育の段階でセカンド・オピニオンやインフォームドコンセントに関して、かなり入念な指導と教育を受けています。

複数の病院で意見を聞き、治療に対してポジティブな意識で望むことは、まったく問題ありません。

逆に、問題があるのは、はじめからセカンド・オピニオンを希望しているのにもかかわらず、それを担当する獣医師に伝えないことです。

なぜかとても後ろめたそうに、じつはセカンド・オピニオン希望なんです……、と打ち明けるようにお話しする飼い主さんがほとんどですが、そんな風に苦しい気持ちと罪悪感をもつ必要はありません。

これはうちの飼い主さんたちによくお話しするのですが、対獣医師であっても、基本的には人間同士のコミュニケーションになります。

それは医者でも歯医者でも皆同じですが、病という共通の敵と戦うときに、戦友として、相棒として、手を取り合って協力する相手は、あくまで人間なのです。

そして、人間である限り、相性というのはどうしてもあるものです。

たとえ卓越した知識を持ち、技術をもっていたとしても、話をするたびに違和感を持ち、疑問を持ち、信頼が揺らいでいってしまうような関係は、戦友とはいえません。

とくに口の聞けない動物たちが、その中心なのですから、代弁者として向き合うとき、コミュニケーション不全は、飼い主さんにとっても獣医師にとっても、そして動物自身にとってもよいことではありません。

病と向き合うという、とてつもなくストレスをうける状況で、心は乱れるものですし、どれだけ冷静を普段つねとしていらっしゃる方でも、心は傷つき悩むのが当たり前です。

パニックになり、原因が自分にあるのではないかと悩み、この悲しい不運の怒りの矛先をどこに向けたらいいのか、わからなくなることだってあります。

その気持ちを和らげ、前向きにし、ともに戦っていくのは獣医師です。

そう、戦うべきあいては病であり、決して獣医師や医師ではないのです。

お話をうかがっていると、治療方法に問題があることはほとんどありません。

ですが、方針に関してはずれてしまっていたり、主にコミュニケーション不足なんだろうな、と思うケースが多いのは事実です。

言葉がお互いに足りず、本当に話したいことからずれてしまって、悩んでいる。

おそらく、飼い主さんだけでなく担当している獣医師も悩んでいると思います。

腹を割って話す、というのは本当に難しいことです。

でも病という大きな敵と戦うためには、割りたくないものも割らなければなりません。

ご自身の気持ちに正直に、想いを伝えあわなければ、皺寄せは結局動物たちが負うことになります。

じつはここで、相性というのが大きく影響してくるのです。

話しやすさ、というのはひいては相性にかかわるものだからです。

たとえば、「先生がこわい、厳しいことをズバズバいわれて…もっとオブラートに包んでいってくれたらいいのに」という飼い主さんもいれば、「先生がはっきりいってくれない。いつも曖昧で、ズバッといってほしい」という飼い主さんもいます。

また、「難しい話ばっかりされて、理解できない。もっと簡単に端的に指示してほしい」というかたもいれば、「説明が足りない。もっと詳しい話がききたいのに、ちっとも説明してくれない」というかたもいます。

「検査ばかりしてお金がかかりすぎる」というかたもいれば、「なんの検査もしてくれない、してほしいのに」というかたもいる。何らおかしいことではありません。

求めている診察は、個人個人で全く異なるのがあたりまえです。

お友だちがいいといった洋服屋さんに行ったけど、自分には合っていなかった、というのと同じです。

かけられる予算も、かけられる時間も、かけられる人の数も、同じ人はいません。

たとえ同じ病気に罹患しても、治療が異なっていくのは、当たり前です。

問題は、その考え方にお互いがマッチしているか、ということです。これが先程のべた相性というやつですね。

死生観や金銭感覚などは、なかなか家族以外と共有する機会がないものです。自分達が当たり前だと思っていることは、他人にとっては当たり前ではないのです。

ですから、はっきりと、こうしていきたい、という意思を示さなければ、相手に伝わらないこともあります。

とくに、診察においてははっきりいうべきだと思います。

死に向かう考え方や、経済的なことはとても言いづらいものですが、そこをはっきりとさせておかないと、たとえ全国の動物病院をまわっても、理想の病院はみつかりません。

お金はこの程度の範囲で頑張りたいです、といわれれは、どの獣医師もたとえそうした治療が、できうる治療の半分程度であっても、今許される治療範囲で全力を尽くそうとします。

それに対して、お金を惜しんでいると思われたくない、カッコ悪い、そんなに不自由していると思われたくない、などの悲しい見栄の意識できちんと予算を伝えなかった結果、できうる治療100%をしてもらって、それに対してコストがかかりすぎている!と言うのは、ナンセンスです。

また、本当はもう治療をしたいとは思っていないのに、しないといったら冷たいと思われるのでは、ひどい飼い主だと思われるのでは、というのもよく聞きます。

そんなことはないと、今ここでお伝えしておきます。

どんな獣医師も、そこにある命を全力で助けようとします。ありとあらゆる手段と方法で、助けたいと頑張るのです。

そのために許されるなら、さまざまな検査を駆使し、いろいろな薬からその子にあったものをえらび、治療法を一生懸命検討します。

ですが、すべてをすれば莫大な時間とコスト、マンパワーが必要になります。

それらに糸目をつけず治療ができるのは、大学病院など限られた施設で、通常はそれをいかに絞って、最善を尽くせるかを考えて診察を行います。

すごく必死です。それ以外のことを考えると余地がないほど悩むのです。

ですから、先程述べたような悲しい見栄は不要です。

だれも飼い主さんをケチだとか、冷たいとか、お金がないとか、そんな風に考えません。予算と、方針が決まってよかったな、としか思いません。はっきりしていて、素晴らしい飼い主さんだな、決断力があるな、と私は思います。

ですから、ごく普通に、正直に、心にある気持ちをきちんと伝えて、戦友として戦っていってほしい。

セカンド・オピニオンの依頼をうけるたびに、いつもそう思います。

悩んでしまうことは悪いことでもなんでもありません。セカンド・オピニオンで想いを話し、すっきりしてまた治療に臨まれる方も多いです。

ですから、むしろ今、悩んでいるのであれば、担当の先生と腹を割って話してみることをおすすめします。

もし、その前に気持ちを整理したいときは、ぜひセカンド・オピニオンを試してみましょう。

時系列に一つずつ話すことで、本当は自分が何に悩んでいたのかがはっきり見えることがあります。

言葉に出して話す、というのは脳内の整理ができてこそなので、話しているうちに気持ちが落ち着くことも多いです。

病という強大な敵と戦うに際し、どうか万全の心持ちでいてほしい、切に願います。

2020-10-16

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