動物病院HOME < 院長のコラム < 定期健診の意識を持とう
若葉の緑も鮮やかに、ゴールデンウィークに突入しましたね。
今年は連休の並びが悪いそうで、なかなか長めの休みを取りづらいのだとか。
確かに学校に通われていらっしゃるお子様がいるお家は、飛び石のように学校があってなかなか歯がゆそうです。
おおよそ2年ぶりの自粛のない長期休みとあって、旅行の計画を立てられた方も多いのではないでしょうか?
今年はようやく実家に帰れますとご報告してくださる方もいらして、嬉しそうな表情にこちらもにっこりしました。
ただ、オミクロン株の流行は未だジリジリと減らずに継続していますので、旅先を含め対策はどうぞしっかりとされてくださいね。
三月から始まった春の健康診断キャンペーンですが、ありがたいことに多くの方に利用していただいております。
見つかりにくい病気の早期発見に結びついた事例が多くみられ、やはり健診は大切だなんと実感することしばしば。
と同時に、検査の限界も感じます。
今回の検診では血液検査に関しては外注しているので、検査結果はおよそ一週間後に出ることになります。
同日に腹部の超音波検査やレントゲンを行なっている場合、これらの画像診断の方が先に結果が出ることになるのですが…。
今回は超音波検査で見つかった異常が、血液検査に反映されていないことも多く目にしました。
例えば肝臓の間に挟まっている胆のうという臓器があります。
これは肝臓の細胞で作られた胆汁を集めてストックしておく倉庫です。
胆汁は必要に応じて腸管に分泌され使用されるのですが、この原料はコレステロールでできています。
よって食べ物などの関係や代謝関係、体質などで、高コレステロール血症になりやすい動物の場合、胆汁が多く作られ胆のうにたくさん貯められてしまうことがあります。貯められたなかなか使われないと、胆汁は粘性を増し、次第に泥状、最後には寒天のようなゼリー状になっていきます。
こうなると細い胆管からは外に出すことができず、胆のう粘液嚢腫と呼ばれる事態になります。
こうなっても、肝細胞は胆汁を作ることがやめられないので、無理やり胆のうに胆汁を送ろうと頑張り、ついには胆のう破裂という命に危険を伴う事態になってしまうのです。
これは超音波検査で非常によく分かる状態なので、多くの動物病院のホームページにも画像が上がっています。
簡単に確定診断ができる病気なので診断する側としてはありがたいのですが、胆のう粘液嚢腫の治療は基本的に手術になるので、そういう意味では厳しい病気です。
この診断の一助となるものに血液検査でのGGT、ALPの高値が挙げられます。スクリーニング検査として行なった血液検査でここが高いことを踏まえ、腹部の超音波検査を行なって確定診断に至る、というケースも多くあります。
同時にCRPなどが上昇していれば自体は緊急です。
両方の検査がとても大切なのですが、ではどちらが早く異常を検知することができるでしょうか?
実はこのケースの場合、画像のほうが早く見つけられるのです。
すでに胆泥がかなりたまり、胆嚢のなかが半分くらい埋まっている状態であっても、血液検査の項目が上がっていない状態がよく見受けられます。
簡単に言えば物理的に埋まり始めていても、化学的に数値が変化するにはもう少し時間がかかることが多いからです。
胆汁の排出がうまくいかず、つまり気味にならないと血液検査の数値は高くなってきません。
逆に画像で怪しいな?と思う時点では、早期発見できていることになり、対策を予防的にとることができます。
検査の種類によりわかることが異なるいい例なのですが、この他にもたとえば腎臓や肝臓、脾臓に腫瘍ができていても、血液検査の数値はまったく平常値だったりすることもあります。
逆に肉眼的に全く異常が見つからなくても、血液検査だからこそ見つけることができる異常もたくさんあります。糖尿病や甲状腺機能低下症などはいい例ですね。
大切なのは一つの検査だけではなく、いくつの検査を組み合わせて複合的にデータを集めることです。
人間ドックに行かれているかたは、どうしてこんなにたくさん検査するのか…と思うほど検査をしていると思うのでおわかりかと思います。
たとえば乳癌のチェックもエコーとマンモグラフィを重ねて行うことでより詳細なデータが得られるように、いろいろな方法で多角的なデータを集め分析することが、病気の早期発見につながるのです。
そして、とても大切なのは、自分から検査をしてみよう!と思うこと。
健診キャンペーンなどはとてもよい機会なので、毎年各病院は一生懸命に受けていただくことをおすすめしています。
ですが飼い主さんに強要することはありません。
そろそろシニアになるので受けてみては?とおすすめしたとしても、必ず受けてください!とまで強く言うことはしません。
もちろん義務ではないので、まだうちはいいかな?と受けない選択をしても良いのです。
お願いしたいのは、「先生から健診すすめられたけど、いつから定期的に検査をしようかな?」と考えていただくことです。
来年からは考えようかな?受けてみようかな?と定期健診を意識していただくことが何より大切です。
毎年なんとなく定期検診はいいかな?と思ってしておらず、いざ不調が出てから検査をしたら手遅れだった…ということはじつはよくあります。
勧められたのにやらなかったという罪悪感と、間に合わなかったという後悔で、飼い主さんはとても苦しみます。
検査をしてわかる異常への恐怖はもちろんありますが、気づけずにいた事のほうがとてもつらいです。
コストの面でもキャンペーンの時期のほうが間違いなく安く検査ができます。
どうぞ一年に一回は健診を意識してみてくださいね。
こちらの写真はロングコートチワワのラテちゃんです。病院大好きです。
2022-05-02
「うちの子の様子がおかしい?」「狂犬病の注射を受けさせたい」「避妊手術はいつすればいいの?」など、お気軽にご相談ください。
tel03-3809-1120
9:00~12:00 15:30~18:30
木曜・祝日休診
東京都荒川区町屋1-19-2
犬、猫、フェレットそのほかご家庭で飼育されている動物診療します