院長のコラム

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言葉の世界
言葉の世界

2016年最後のコラムとなりました。

このコラムは開院当初より、月二回、15日と30日に更新しているものです。見直してみると丸三年以上の間にあったいろいろなことが思い出されます。

最近、読んでますよ~といって頂けることが増えて、嬉しいやら恥ずかしいやら緊張するやら、諸々で赤くなったり青くなったりしどろもどろです。

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文章を書く、という行為は、誰かに自分の考えや気持ちを伝えるための一つの手段です。

直接お話をするのとは異なり、文字という二次元の媒体を通じて自らを表現する方法は、古くから用いられてきました。

それは歴史を財産として残すためであったり、その時の文化を継承するためであったり、日常の自分の気持ちを伝える随筆のようなものであったり。 目的と意図は様々ですが、自らの中にあるものを何らかの形で表現する術です。

映像や絵画や音楽、写真などよりも、よりストイックな方法だと私は思います。

色彩や味や匂いや音などを削ぎ落とされた、言葉というものだけを使って行われるものだからです。

ですから、短文であっても長文であっても、自分の人となりを無意識に暴露しているようなものです。

選択する言葉、持っている語彙、物事への考え方、表現力や思考力、そういったものはどんなに取り繕っても、書いてある文章を読めばわかってしまうものです。

考えや気持ちという形に表すことが難しいものを、適切な表現でふさわしい言葉を選び、しかもそれを全く面識がない相手に理解してもらう、なおかつ誤解が極力無いように、というのはそれを生業にしている方にとっても、難しいことだと思います。

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話がずれますが、法律や憲法などの公的な文章が、あれほど日常使う表現方法と異なり特殊な形態を取っているのは、それを突き詰めた形なんだとか。

Aという解釈も出来る、でもBとも解釈できる、というのは物語などでは魅力的な書き方ですが、憲法のように読む人間によって解釈が異なっては困るものは、ああいう表現をせざるを得ないのだそうです。

それでも解釈を巡って有識者会議が開かれたりする訳ですから、表現というのは本当に難しいものですね。

逆に本であれば読んだ人全てが、それぞれ自己の解釈を自由に楽しむことが出来ます。

特に文字だけの小説はその文字が表す色彩や音を自分の頭で構築することができる、無限の楽しみがあります。

子供の時に読んだものが、今は違った観点で読むことができ、新しい発見がある、というのは本ならではの素晴らしさだと思います。

また、それを楽しむには知識が必要な場合もあります。

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大学のとき、アメリカに研修にいった際、余暇を使ってフィラデルフィア美術館を見学することが出来ました。

英語はとんと苦手なので解説を読んでも細かい所はわかりません。

ですが、そこに飾られている彫刻達が、例えば月の女神アルテミスの狩りのシーンだったり、サロメの首を捧げ持つ姿だったり、イカロスの慟哭であったり、ヘラクレスの戦いの姿であったり、アキレウスのサソリに絶命させられた瞬間だったりということは、昔読んだギリシャ神話や宗教逸話などに照らし合わせて理解することができました。それほど素晴らしい作品達だったのです。

子供の時に読んで以来滅多に読まなくなった神話が、息づいた姿に興奮してしまい、友人達にむやみやたらに話したのですが、一緒に興奮してくれる同期の一方で、きょとんとしている友人もいて、ああ、神話を知らない人にとっては、これは美しい彫刻であって、切り取られた首を持って踊っているのがなぜかということは分からないんだ、この喜びを共有することはできないんだ、とはっとさせられました。

子供の時に与えられる知識に、これが将来何の役にたつの?!と思ったことは皆さんおありだと思いますが、知っていて損はない、むしろ新たな楽しさに変わる瞬間がけっこうあるなあというのが私の実感です。

純粋に、どんなことでも知らないより知っていた方が新たな楽しさを味わえるという意味で、知識は生活を豊かにしてくれると思います。

一見無駄に見える何かと思いもかけず繋がる瞬間こそ、人としてこの世界で生きていく楽しさなのではないでしょうか。

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話は元に戻りますが、コラムを読んで頂いている、というのは自分をさらけ出しているのと何ら変わりません。

ですから、とにかく恥ずかしい。私こういうものです!!というのを名刺を渡すよりも大々的に行っている訳ですから。結果、嬉しいけれど挙動不審になるということになります。

でも毎月本当に色々考えながら書いてるので、やはり嬉しさの方が勝る現金な性格です。願わくば私の書くコラムで動物と飼い主さんの生活がすこしでも楽しくなったり、へえ~とトリビア的に利用してもらうことが出来たら、本望です。

2016年も大変お世話になりました。沢山の出会いがあり、別れもあった年でした。

毎年この時期になると、この一年が無事に過ぎたことに心から感謝し、そしてつぎの年もまた初心を忘れず、動物のため、飼い主様のために努力をしていくことができるように、と自らに言い聞かせています。

来年もジャンボどうぶつ病院をどうぞよろしくお願いいたします。

新年が、皆様に取ってより良いものになりますように、心からお祈り申し上げます。

2016-12-29

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