院長のコラム

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中毒にご注意を
中毒にご注意を

今年という年もはや、半分が終わりました。
そう書いてショックを受けているのは、私も同じです。

時間の流れは本当に早いものですね…。掬い上げる指先からこぼれ落ちて行ってしまうようです。

来月からは夏本番、暑い暑い季節の到来です。
夏場はやはりトップクラスなのが熱中症ですが、猫の膀胱炎もかなり頻発します。

  • いつもとおしっこの色が違う
  • トイレに行く回数が多い
  • トイレにいる時間が長い
  • トイレで辛そうな鳴き声をだす
  • 血尿
  • ご飯を食べない
  • 吐いてしまう
  • トイレで何回もきばっている

などの症状が見られたときは、どうぞ早めにご来院下さいね。

猫の膀胱炎は原因が特発生のものが実は多く、その大きな比率を占めるのがストレスです。
このストレスに注目してミルクプロテインやトリプトファンなどのストレス緩和を助ける成分があらかじめ配合されたご飯もつくられています。

夏場は飲水量が多くなるはずですが、あいにく空調が完備されているお家が多いため、寧ろ脱水を起こすケースが多いのです。
尿は必然的に濃くなり、膀胱炎になりやすくなります。

又夏休み等でお留守番が増える事も、猫のストレスの一因なっていたりするかもしれません。
ゴールデンウイークもそうですが、長期のお休みの後は体調を崩す子が多いのです。

血液検査の異常値から、薬剤の中毒の疑い
血液検査の異常値から、薬剤の中毒の疑い

さて、今回は中毒について。

先日、あるわんちゃんが元気がない、食事も食べない、ぐったりしている、と言って来院されました。

その子はまだ若いわんちゃんで、予防もきちんとされていて、病気になるリスクはとても少ない子です。
念のため行った血液検査で驚きの結果が。

なんと肝臓に関する数値が、測定規定値以上になって、計測できずにオーバーに!とんでもない高い値に、飼い主さんも私も絶句。

一体何があったのでしょうか?

これはあくまで推測に過ぎませんが、若い個体である事、肝臓のある項目以外は全く問題がなかった事、事故や怪我など外傷もなく、症状が出る前後に変わった様子はなかったこと。そして驚く程の高い値、通常の肝臓疾患ではあり得ない程の。

これらを考慮すると何らかの薬剤による中毒の症状という疑いが出てきました。

とはいえ、現状出来る事は肝臓を保護し、この数値を少しでも下げて本人を回復させる事です。
いくつかの追加の検査をし、この子はそのまま入院して、点滴治療を行う事になりました。

強肝剤の入った点滴を流しながら、ぐったりとしているわんちゃんを見ながら、ひたすら祈るしか有りませんでした。

薬剤の中毒ならば、拮抗薬があるものは非常に少なく、身体に吸収された薬剤を点滴で身体の外へと押し流す事ぐらいしか出来ないのです。

人間と違ってこの子が何を口にしたかも分かりませんし、そもそもそれを体内に入れたのは、いつかも正確な事が分かりません。

口にしてすぐならば、胃の洗浄なども考えますが、先ず意味がないでしょう。

ひたすらこの子の回復力に掛けるしかないと、思っていました。

点滴をして二日目くらいになると、本人の活動性もあがり、ご飯もよく食べる事が出来るようになりました。

尻尾を振りながらこちらを見るくるくるとした黒い瞳にようやく安堵のため息をついたのは、入院して五日目のことでした。

なんとか正常の数値の倍程度まで肝臓のパネルは下げる事が出き、後は通院で治療を行う事になりました。

除草剤など、皮膚を通して吸収される薬物もあります
除草剤など、皮膚を通して吸収される薬物もあります

この間飼い主さんと一体何が原因なのかを、考えていたのですが、疑わしい薬剤の情報が有りました。

実は近くで除草剤の散布があったそうなのです。

除草剤は農薬の一種で、フェニール系、尿素系、トリアジン系などがあります。

それがなんんだったかは分からないけれど、撒かれた所の草が茶色く変色していた事が分かりました。

除草剤は概して皮膚を通してよく吸収されます。
そう、口にしなくても鼻孔から吸込んでも中毒を起こす事が有るのです。

また、犬などでは足の裏についた農薬を嘗めることによって、中毒を起こすこともあるようです。 当然撒かれた薬は目に見えませんから、知らず知らずにつけてきてしまう事も有るのです。

典型的な症状としては重度では運動失調、ケイレン発作などの神経失調、腎不全が起こり、3日以上経過すると呼吸器系が障害を受けて呼吸困難となり、肺水腫という肺に水が溜まった状態や、全身の出血傾向が起こります。

今回のケースでは幸いこういった酷い症状までは出ていないので、何とも言えないのですが、そこまでの中毒症状がおこらならなくても肝障害が見られる事は有るようです。

除草剤中毒という断定は出来ませんし、確認が出来ない事ですが、わんちゃんを取り巻く環境にこういった恐ろしい薬剤が潜んでいる事は改めて、私の危機意識を高めてくれました。

人間のお薬の誤飲にもご注意を
人間のお薬の誤飲にもご注意を

動物の中毒に関して、昨今は非常に知識が高まっており、タマネギ中毒、チョコレート中毒、キシリトール中毒、ブドウ中毒など、食べ物のに関する注意がきちんとされている飼い主さんが多くなりました。とても嬉しい事です。

もう一つ付け加えて頂きたいのは、そう言った食べ物よりも即効性があって怖いのは、人間が飲んでいるお薬である、という事です。

ご家族にお薬を常用されている方がいらっしゃったり、OTC薬剤の鎮痛剤や、頭痛薬などの常備薬などは、日常生活にとけ込んでいる薬剤です。

実はこういった薬を誤って飲んでしまった方が、激烈な中毒症を生む事も多いのです。

どうか、お家にあるお薬の管理場所と、取り扱いには十分意中をしてくださいね。

わんちゃんもねこちゃんも、自分の好きな食べ物がしまってある棚などは良く見ています。

そう言ったおやつがしまわれている所の傍に、お薬のケースなどはないでしょうか?

案外近くにあってひやりとする場合も有りますので、是非確認してみてください。

2015-07-15

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