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お盆に思うこと
お盆に思うこと

皆さんはお盆休みの最中でしょうか。

この猛暑ですからせめてお休みはゆっくり取って頂きたいと思うのですが、来院される飼い主さん達にお聞きすると「いやあ、うちはあんまりお盆とか関係ないんですよ?」とおっしゃるので、この国のお休み概念をどうにかして頂きたいものだと思います。

もういっそ夏のバカンスを皆で一斉にとる、というようにした方がいいのでは……。と窓ガラス越しに半ば発光して見えるほど白く強い太陽光を反射する道路を見ながら、思わず考えてしまいます。

昨今ニュースで取り上げられるのは、やれ人材不足だ、児童虐待だ、男女差別だと未来が不安になるものばかりなのですが、よく考えるとこういった問題は昔からあったものを社会が底まで余裕がなくて向き合ってこなかったからスポットが当たっていなかっただけで、決してなかった問題ではないのだな、と思います。

どれも簡単に答えが出ないものだからこそ、多くの意見が集まり活発な議論が行われるのでしょう。

話題になることが解決に向けての一歩なのだな、と感じています。

hr

ヒトの性別と染色体 働く染色体XXとしていわせて頂ければ、おそらくXYの方々と同等かそれ以上に働いたとしても、家に帰ってから家事諸々が待っていて、子供の宿題や明日の持ち物の用意をチェックし、翌朝の朝ご飯やお弁当の準備をして、お風呂に入るのもしんどいと思いながら、無理矢理汗臭い体を湯船に沈め泥のように眠る、ということが日常なのです。

よく思うのですが、同じ職業で性別が違う場合、家に帰ってからする内容はかなり違うのではないでしょうか?

明日来院予定の動物のカルテをみたり、今日診察した気になる症状を文献でチェックしたり、自らの知見を高めるために医療雑誌を呼んだり、セミナーの資料を見返したり、病院の経営状態やコストダウンに取り組んだりしているのでは…?なんてことをたまに考えます。

実際には奥様に協力して家事をこなされる男性獣医師が多いのですが、自分が想像するXY生活というのが若干歪んでいるのかもしれません。男性であるだけで少しうらやましいと思ってしまいます。

hr

先日、医学部の裏口入学から女性の点数操作による男女比の調整が取り上げられていましたが、これは昔から本当によくいわれていたことです。

ちなみに獣医学部も例外にあたらず、裏口入学の噂も当然のようにありましたし、入試の点数だけで合格者を決めれば、女子ばっかりになってしまうからちょうど半分ずつになるように人数を調整しているなんて話は、当たり前のようにいわれていました。

理由はいわれていることと同じで、女性は結婚して子供を産むとリアタイアしてしまうから、獣医が足りなくなる、というものでした。政府諸機関が欲している公務員獣医師の場合はこれには当たらないように思いますが、臨床獣医師は非常に過酷で古くは3Kといわれる仕事ですから、無理はないと思います。

また開業獣医の子供の場合、跡継ぎができないとその病院自体がなくなってしまうので、後継者入試枠という制度だって立派にあります 。

でもこういう制度や慣習ができたのは、結局社会に出て働くことが、女性にとって容易くないからですね。

育休産休が完備されだれでも保育園に預けることができ、小学校に上がってもアフタースクールや学童がすぐに入れて、男性と変わらない昇給が約束され有休をとることに抵抗がなく、子供を生んでも産まなくても、世間様から文句をいわれることなく、働くことができたら。

長く築き上げられた慣習や思い込みを排除するのは、制度を整備するよりも前に行われるべきことですが、こういった理屈ではない心を動かすことの方が案外難しいのかもしれません。

hr

でも、ああ、変わってきたんだな、と思うのは保育園の送り迎えにお父さん達の姿が珍しくなくなり、ベビーカーを押す男性を当たり前に見るようになり、抱っこ紐をつけて赤ちゃんを抱き休日父子でお出かけしている姿をよく見るようになったことでしょうか。

いまの男性はそう過ごすことに抵抗などなく、当たり前になっているのです。

逆にこれに違和感を覚えている少し世代が上の方達から「どう思いますか?」と聞かれることがよくあるのですが、「素晴らしいことですね、皆さんが息子さんをそう教育して下さったおかげで、料理も家事も育児も抵抗なくできるようになったんですね」とお答えしています。

少子化と長く続く不況のために、男女ともに結婚後も仕事をするのが当たり前になってきました。

どのくらいかかるのか分かりませんが、両性ともにこうやって働くことができてよかった!と思えるような社会に変わってくことができたらいいと思います。

hr

今年は少し早くお休みを頂き、原爆投下の日を前に長崎の原爆資料館を尋ねてきました。

学生の修学旅行以来でしたが、この歳になって改めて深く考えさせられました。

投下の時刻でとまった時計、熱線で茶碗や竹、壁に焼き付いた人の影、炭化した遺体の写真、放射線ケロイドに苦しむ方の写真……。

きっと飼われていた動物も、皆命を落としたことでしょう。

言葉を持たない彼らが戦中の厳しい状況の中でどんな扱いを受けたのか考えただけでも胸が痛くなります。

むごいという言葉しかでてこず、子供に展示品の謂れをひとつひとつ読んでいたのですが、体験の手記だけは、あまりの生々しさに涙が溢れ、読み聞かせることができませんでした。

ですが言葉もなく泣いている母親をみて、子供なりに感じるところがあったのか、「なぜ大人は悪いとわかっていることをやるの?子供は分からないからやっちゃうけど、大人になったらやっていいことといけないことが分かるのに」と言いました。

戦争は勝者にも敗者にも傷を残し、得られることは負の遺産だけです。決して正当化されることではありません。

一部の利権を持つものだけが、戦場に立つことなく利益を得る構図が、太古の昔から繰り返されてきたのに、人はその愚かしさからいまだ脱却できません。

すくなくとも、戦争はどんな大義名分があっても悲劇以外の何ものでもないのだ、決して二度と繰り返してはいけないと一人一人が強く思いながら、今の平和な生活を甘受する私たちが生きなければ、失った命に何の申し開きができるでしょうか。

二度の原爆を国土に受けた私たちだからこそ、決してこの国を同じ過ちに導かないように、日々精一杯生きていかねばならないと思った夏でした。

2018-08-15

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