八月らしからぬ、どんよりとした天気が続いています。
水不足が心配されたのをよそに、気温も上がらずひんやりとしてけれど蒸し蒸し。あれ?これは梅雨なのかしら?と思いたくなるような毎日です。
こうなると多発するのはホットスポットと言われる、蒸れによって起こる皮膚炎です。
雨の中の散歩の後、またはシャンプーの後など、被毛が濡れた時に乾かし方が足りないと、一昼夜にして悪化します。強いかゆみが出るためあっという間に舐めこわしてしまうのです。
舐めれば舐めるほど、滲出液がにじみ、臭いが強くなりかゆみも強くなります。鼻をつくような独特の生臭さが、ツンと香り、べったりと化膿し始めた皮膚に被毛がくっついてしまいます。
ますますムレを引き起こしてしまうので、舐める範囲が広くなり、夜には小さな湿疹だったものが、翌朝には手のひらくらいになっていることも。
これには毛刈りと洗浄が必須ですので、見つけた場合はなるべく早く、来院されてください。
くわえて外耳炎もシーズンですね。垂れ耳のワンちゃんだけでなく、立ち耳の子達にも発生していますので、赤くなったり臭いが強くなったり、触られると痛がったり、首を傾けたままにしたりした場合は、チェックに来てくださいね。
さて、今年ジャンボどうぶつ病院を開院して以来初めて、お盆休みをいただきました。
とはいっても、獣医師になってからお盆とは縁がなく、八月のお休みはずいぶん久しぶりになりました。
都内にこんなに人が少なくなるのかと、驚きました。いつも通っている道に人影がなく、車も少ない車道。まるで町自体もお休みに入っているかのようでした。流れる時間も、少しだけゆっくりに感じました。
忙しい毎日の中では、日常に紛れ自分がどうやって時間を過ごしているかなんていうことまで頭が回りません。
客観的に自分を見ることも、物事一つづつを深く考えることも、時間と余裕がないとなかなかできないことだと痛感します。
インターネットの普及で世界中の情報が手に入るようになりました。旅行に行かなくても、まるでその場にいるかのように色々なものを体験できるVR(バーチャルリアリティ)も目覚ましい進化を遂げています。
PCのかわりに持ち歩きできるスマートフォンやタブレットにより、また町中に張り巡らされているwifi環境により、いつでもどこでも検索するだけで様々な情報が手軽に手に入ります。
本当に便利で、豊かな世界になったものだと思います。
けれど、手軽に手に入った情報が表面的なものかもしれないことを、人は忘れてしまいがちです。
それが本当に起きていることなのか、起きている事象の裏には何があるのか、どうしてそれが起こったのか…。
それを知るためには、出典が明らかなもの、デマではないものを選択し、一つではなくいくつもの情報を複合し、自らの知識と知性によって判断しなければなりません。
とても難しいことですよね。
あるとき、尿石症の猫が来院しました。その子の親猫も尿石症になったので、飼い主さんは気をつけて飼われていたそうです。
とても意識の高い飼い主さんでしたが、その対策をお聞きすると、首をかしげることばかり。
お水のお皿の数も少なく、食事をあげる時間も決めていない。尿石症を心配するなら何より先に行うはずの食事管理をしていない。
症状が出る前に病気を見つけるための定期的な尿検査もしていない、一人で留守番している間のストレスを軽減するサプリや芳香剤なども使っておらず、市販のおやつも食べているとのこと。
また万が一、なってしまった時に困らないため、あらかじめ保険に加入されている方も最近では珍しくないのですが、この方は入っていらっしゃいませんでした。
あれれ?どうやって対策を調べましたか?と聞くと、ネットで、とおっしゃいます。
かかりつけの動物病院はあったはずなのに、そこでは聞いていないとのこと。
ご本人はちゃんと調べて対策しているつもりだったようですが、正しい情報を得られなかったために残念ながら尿石症になってしまっていました。
きちんと自分で調べているから大丈夫!という高い意識が、あだになってしまった切ないケースですね。
オスの猫の尿石症は、命の危険があります。結晶だけでなく、砂粒状の結石にまでなっていては、いつ細く狭い尿道に詰まって無尿状態になり、腎不全が起きるかわかりません。
早急で重点的な治療が必要となりました。
もちろん予防よりも治療の方がお金がかかります。一度診断が出てしまったので、今から保険に入っても尿石症は保険対象からは外れてしまいます。
でもなによりこれからもその体質と一生付き合い、いざという時は緊急病院にも通うことができるように、あらゆる対策をしていくことが必要になります。
今までとは心構えを新たにしていただくことが、治療の最初の一歩となった症例でした。
調べることはとても良いこと、推奨されるべきことです。
けれど、まちがったやりかたで情報を得れば、それは正しい判断に結びつかず結局後悔する結果となってしまいます。
いつも自分に言い聞かせているのですが、年を重ねればよりその傾向が高まります。
子供の時のようにだれかが自分の間違いを正してくれる事はありません。もしおかしなことを言ったとしても、よほど関係の深い友人や家族以外は、普通まわりの人間は指摘しません。
間違っていても、それに自らだけが気がつけない、というのは本当に恐ろしいです。
私の尊敬する獣医師の先輩に、どんな相手にも敬意を払い、まるでいつでも新卒の獣医師のように教えを乞う先生がいらっしゃいます。
その先輩はとてつもなく手術の腕が良く、器用で、勉強熱心です。これだけできる方なのに、それを誇示するような気配が全くありません。
ご自分より経験が浅い先生にもいつでも、「これはどう使うの?」「どうやってやるの?」ととても丁寧に聞き、意見やアドバイスを素直に受け入れます。
ある程度の年になると、意固地になり、他者の意見は耳に届きづらくなりますが、そう言ったことが全くない姿勢にいつも感動します。
その姿を見て自分もこうありたいと思うのですが、なかなか難しいものです。
それでもそのために努力をしていかなければ、いい治療はできない、そう思いながら改めて自分を戒める、お盆休みなのでした。
2017-08-15
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