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ナイトシフトする動物達
ナイトシフトする動物達

秋の日はつるべ落とし、そんな言葉がよぎる今日この頃。

日中は汗ばむ日もあるのがそれはそれで信じられないのですが、日が陰ったと思った次の瞬間にはストンと気温が下がり、一息に夜の帳が下されるのはもはや見事だなあと思うほど。昔の人たちも同じようにこんなふうに暮れる日に思いを馳せたのかな、と思うとなんだか感慨深いものがあります。

むしろ今のように明かりに事欠かない現代よりも、きっとずっと夜の闇は深く強く恐ろしいものだったでしょうから、秋の夕暮れは感慨深いどころか知らずに人の足は早るものだったかもしれません。

闇はそれだけで恐ろしいもの。

暗闇から何が飛び出してくるかわからず、足元はおぼつかず、先は見えず。具体的に言えば転倒のリスクは高いし、視覚に強く依存している人間にとっては、できないことの方が多い時間帯です。

逆に夜行性の獣は活動的になり、良からぬことを考える人たちの活動も活発。お天道様は見てござる、ではないですが、基本的に日が高く明るい中での犯罪は難しいもの、逆を返せば夜に潜むものにとっては夜こそ待ち望んだ時間。長い夏の日の時間が短くなっていくときこそ待ちに待った季節になったのかもしれません。

今は未明と言われる時間に外に出ていても、あちこちの看板は明るく、夜間工事のライトは煌々と輝き、24時間のコンビニは誘蛾灯のように人集めています。街灯の陰にうっすらと不気味な気配を感じることはあっても、手元にあるスマホの向こうには真昼のビーチや朝日に照らされた山々、明るい午後の日差しに浮かぶ賑やかな街並みが広がっていて、今ここが夜であることも一瞬忘れそうになるほど。

おかげで入院中の子達の夜の見回りに行くのがさほど怖くはなくありがたいことなのですが、逆に都心を離れ少し地方に行った時の圧倒的な夜の大きさに思わず息を飲むこともあります。

人の姿も人家の明かりもなく、黒く沈んだ闇がとっぷりと濃く、けれど密やかに何かの生きものの気配が濃密に漂う夜。

伸ばした自分の手の先も見えないような暗さを、思わず何度もすくい上げるように動かして、どうにか手の平に夜の感触を掴めないかと試してみたり。

そんな時はスマホの先の明るい世界は遠くなり、この身を包む夜の気配の方が一層濃くなるのです。まるで人工の小さな光を笑うように。

人は基本的に日の出ている間に活動する昼行性ですが、実はもともと哺乳類の祖先たちは、恐竜という驚異と共に生活してきたために基本的に夜行性だったそう。なるほど、なぜかやたらに夜の方が落ち着く気持ちになるの日があるのは、かつての名残でしょうか。

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現代でも夜行性の哺乳類は案外多いのですが、なんと今、そうではなかったはずの昼行性の野生動物たちが、活動時間を夜へと移行しているのだとか。しかもこれは人を避けるためだというのです。

世界中の63種類の大型哺乳類を調べた結果、夜間に活動する傾向が平均して1.36倍増えていたという研究結果があります。例えば昼と夜とで半分ずつに時間を分けて活動していた動物がいたとしたら夜間の活動を68%まで増やして、昼間の活動を32%に抑えるといった具合に。

調査対象の83%の野生動物に夜行性にシフトする傾向が見られ、この変化は種や、生息している大陸や、生息環境に関係なく見られるとのこと。

レポートにはマレーグマが例に挙げられていましたが、これの英名はサン・ベア(太陽のクマ)しかし、昼間と日光浴が好きだったこのクマは、今は活動の90パーセントを夜にシフトしているのだそうです。

確かにたいていの生き物にとって人は天敵であるので、それを避けるように変化していくのはおかしいことではないのかもしれません。

しかし昼行性の生き物がナイトシフトしていくことで、繁殖の機会を失ったり食物の調達率が落ちたりということは実際に起きているため、良い傾向とは言えないようです。

昼と夜の役割はそれぞれの生き物で異なりますが、各々適する形にゆっくりと時間をかけて進化してきた仕組みや体が、このように数十年単位で急速に変わっていくことは自然の持つ本来のスピードをはるかに超えたものでしょう。

それは今まであったように種の絶滅や気候変動などに結びついていくことかもしれません。

それも含めて大きな自然の流れなのかもしれないとは思いつつ、やはりどこかでもう少しゆっくりと時間を過ごすことを今一度考えた方がいいのではないかと思うのでした。

当院で防災のしおりを頒布中です
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さて、話は変わりますが、皆さんは防災のしおり、持っていますか?

現在、ジャンボどうぶつ病院では東京都福祉保健局発行の犬猫の防災のしおりを頒布しております。

災害時に向けた備えておくべき備品一覧や、ペットを守る緊急連絡カード、ワクチン接種履歴などに加え咬傷事故の時にはどうしたらいいのかなど、動物と暮らしていく上で必要な一般知識が書かれたいぬ・ねこ手帳などが入ったものになります。

いままでのコラムでもいざに備えてのお話を取り上げてきましたが、しおりの形で緊急備品の中に入れておければ、心強いですね。

だいたい知ってるから平気!という方も、今一度の復習にはとてもわかりやすい資料ですので、まだお手元にない場合は是非お声がけください。ただ数に限りがありますので、ご了承くださいませ。

2022-11-01

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