2016年度も今日で終わりですね。年が明けてからのこの三ヶ月は、本当におまけのようなもので、いつも気がつけば桜が咲き始めている気がします。
明日から新年度、新生活が始まる方も多いと思います。緊張と期待と不安と希望を体と心にいっぱい詰めて、きっとなかなか眠れないかもしれません。
実は、それ、みんな同じです。落ち着いて見える先輩も上司の方も、友人も同僚も、やはり緊張しているはずです。
新年度がはじまるということは、また新たな一年がはじまるということです。去年と全く同じ環境だとしても、今年は何があるか分かりません。誰でも春は期待と不安に彩られた季節なのです。
これはバイオリズム的にもそうで、木の芽時という今の時期は、浮ついた気持ちになりますし、落ち込みやすくもなり、疲れやすかったりだるかったり、精神的にも肉体的にもハードな時期で、そこへ来ての新年度ですから推して知るべしですね。
ですからなんだか、やる気が出ない、マイナス思考になってしまう、些細なことで心が尖る、などの症状は生き物として間違っていないのです。春だなあ、と思って下さい。そこで思い悩んだ分だけ、夏に向けてエネルギーをためることが出来はず、季節は知らずに流れるものです。
あまりに自分に厳しくしない方が、今の季節はいいと思います。毎日諦めずに積み重ねていれば、少しずつ自分が思った通りの自分になっていけるものです。
ひさしぶりに自分が新卒であった頃のことを思い出しましたが、何しろ十年以上前のことなので大分忘れはじめています。
初めて勤めた動物病院は、片道が二時間弱かかる所で、毎日長い時間電車に揺られながら通勤していました。一日二百件近くの診療件数がある大きな動物病院で、獣医師がその当時自分を含め八名、看護師さんが二十人近くいました。
朝八時半から夜七時まで、もちろんその時間通りに終わることはなく、診察が八時半近くまであるのは普通で、そこからカルテを書くことで一時間以上、気がつけば九時半を過ぎていることなどざらでした。 十時過ぎになるとまばらになる電車の乗り継ぎを調べて、少しでも早く変えることが出来るようにしましたっけ。乗りたかった電車に乗れず、ホームで泣いたこともありました。
休憩時間は一時間、ですが手術が入ればその時間がとれないこともままありました。
食べられなかったお弁当を夜のカルテを書く時に食べたりすることもありましたし、お腹がすきすぎて、たすけてア◯パンマン~状態になった所に、先輩の看護師さんがお菓子を持ってきてくれて診察の合間に貪る、といったこと もよくありました。
獣医大学を卒業したからといって、すぐに診察が出来るはずもなく、初めはまず先輩方の診察を聞きながら必死に問診の方法などを覚えます。保定の練習、爪切りや足裏バリカンの練習、耳そうじ、レントゲン撮影、採血と少しずつできることを増やしていくのです。
技術的なことはひたすら練習ですが、やはり一番大切なのは問診です。
今日は何の目的で、どうして来院されたのか、いつから具合が悪いのか、頻度は、どの程度ひどいのか、事細かに聞き取ります。飼い主さんが重要だと思っていなくても大切な情報もあるため、聞き漏らすことは出来ません。
新卒の女性の獣医師ということで、避けられることも多いと聞いていましたが、そんなこともなくその当時の飼い主さんたちにとても恵まれました。
病院は指名制だったのですが、一番最初の患者さんはハムスターでした。
確か四月終わりのことで、まだ診察デビューもしていなかった私を、飼い主さんがわざわざ指名して下さったのです。少し前にそのハムスターさんの診察に保定係としてはいった私を、覚えていて下さったのです。その日、いつもの主治医である副院長がお休みだったので、急遽代打としてでることになったのでした。
緊張で震え上がる私、どよめく周囲、通常ある程度問診やら診察やら処置やらが出来るようになってから、診察にでてもいいと許可されて診察デビューをするのに、まだそうなっていない状況。けれど指名されれば行かないわけにはいかず、先輩が一緒に診察に入ってくれました。
あくまでメインとしてお話しするのは私というていで、先輩が全てサポートして下さったのでなんとか問題なく終えることが出来ました。
長かったような一瞬だったような初めての診察が終わりました。体中の力が抜けるような心持ちでへたり込んでいると、看護師さんに、「やったじゃん、指名されたってこと、ちゃんと噛み締めてね」といわれました。
そうです、自分のことばかりで一杯いっぱいになっていましたが、指名してもらったのです。本当にありがたいことでした。
たとえ診察デビューできても、指名されなければ診察にでることはありません。一度指名されても次から違う先生だったり、自分を指名してくれる飼い主さんが増えていかなければ、周りからはそういった目で見られることになります。
そう考えるとわりとシビアな環境の病院だったのですが、多くの先生方がいらしたおかげで、さまざまな問診のしかたや診察の方法、技術などを学ぶことができました。
あの三年間がなければ、今の自分はいないでしょう。
とんでもなく苦しい三年間で、若かったからで来たんだなあと今でも思います。
でもそのおかげで、そこからさらにシビアな大学病院への研修へと進む決意が固まったのでした。
何も分からない時に、全ての基礎を教えて下さった先輩方には未だに絶対的な信頼と、尊敬と、感謝しかありません。
同じ病院で働くことはもう叶わないけれど、あの時に過ごした時間がどれだけ幸せなものだったのか、あれから十年以上たつけれどその気持ちだけは色あせないのでした。
2017-03-31
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