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無理しない爪切りを
無理しない爪切りを

ようやく九月の風が秋を連れてやってきました。

朝晩にグッと下がる気温が、また一つ季節が動いたことを実感させてくれます。

今年の夏も暑かったですが、こうなってからは急に寒くなるのもここ数年の流れなので、夏の疲れを引きずった体が急速な変化に調子を崩さないように、無理をせずに過ごされてくださいね。

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さて今回は爪切りを頑張った猫ちゃんのお話。

ご自宅での爪切りは、できる子とできない子がいます。

これはワンちゃん猫ちゃんウサギさんにフェレットちゃん、ハムスターちゃん問わずです。

爪切りとひとえに言いますが、人の爪と形状が異なるので結構テクニカルであることと、そもそも爪先は急所であり持たれること自体も嫌がる子がほとんどだからです。

そもそも手先の爪を見せてもらうことすらできない動物たちも多い中で、特に猫ちゃんは爪を引っ込めているのがデフォルトなので、切ろうとするとまず足を捕まえ、指先を持ちグッと押し出して爪を露出しなければなりません。

そこから中にある神経と血管を避けて、急激に曲がっているところを目安にパチリと切ります。 ですがこれは猫ちゃんの生来備わった武器の一つ、それを奪おうとするわけですから、どうしたって抵抗やむなし。

大暴れする子も少なくなく、のびた爪を振り回されて飼い主さんが怪我をすることもしばしば。

暴れられると目算が狂い、深く切りすぎてしまって出血することもあります。

これが神経も同時に傷つけるのでとっても痛い、しかもなかなか血が止まらないので、飼い主さんも動物たちもショックを受けることが多くあるのです。そして次からは余計に嫌がるようになってしまう、なんて負のループも。

ですから、当院では爪切りは無理な場合は頑張りすぎないでくださいね、病院でやりますから、とお話ししています。

中には、「自分の飼い猫や飼い犬の爪も切れないなんて、飼い主失格だ」なんておっしゃる方もいらっしゃいますが、それはあまり気にされなくて良いと思います。

もちろんご自身で切れるに越したことはないですし、お家でできると色々な手間も省けますが、できないものはできないことも多々あります。

少しずつ慣らしていってそれでも難しい場合は、プロを頼りましょう。

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さて、そんな爪切りですが、この白猫のみーちゃんは10年かけて初めてお家で爪切りができるようになった、とっても頑張り屋の猫ちゃんです。

みーちゃんはとってもシャイで、病院に来ると興奮と緊張とでずっと鳴いてしまう女の子。

おうちでも気を許した方にはとてもなつくのですが、誰にでも、というわけではない、猫らしい猫ちゃんです。

もちろん爪切りは大の苦手だったそうで、ずっと病院できったりしていたのですが、飼い主さんの不断の努力が実って、とうとうお家での爪切りに成功したのです!すごい!!

報告を受けた時、あまりに嬉しくて私のほうが大興奮してしまいました。

こつこつと、一歩一歩、少しづつでも続けること、これはいうほど簡単ではないですよね。

10年という月日に飼い主さんの粘り強い努力と、みーちゃんへの愛が感じられて思わず目が潤んでしまいました。

今爪切りが全部の指でできなくても、ゆっくりでも少しずつ頑張ればいつの日か爪切りができるようになるかもしれません。

そんな希望がいだけたニュースでした。

東京都獣医師会からの注意喚起
東京都獣医師会からの注意喚起

お話は変わりますが、東京都獣医師会から注意喚起が回ってきました。

動物病院予約代行を謳うサイトが、多数の動物病院の情報を無許可でホームページから流用しているというのです。

確認してみましたが、確かに勝手に各動物病院のホームページをコピーして使用しており、写真やスタッフ紹介なども転載されていました。

また記載された情報に多くの誤りがあり、院長名が異なっていたり、使用できる決済方法が間違っていたり、駐車場の有無が異なっていたりとなかなかに問題のありそうな状況です。

混雑状況確認と予約代行などがうたわれているのですが、ジャンボどうぶつ病院としてはそもそも契約していないので、予約も混雑情報もどうやって反映されるのか不思議です。記載されている中には予約制ではない病院も多いのですが……。

一体どういうことなのか首をかしげてしまいますね。

東京都獣医師会からは正式に抗議文を送付したそうですが、サイトの運営会社の対応は、各病院が削除依頼をすれば掲載を取り下げる、とのことでした。

なんだか不思議なお話ですが、ジャンボどうぶつ病院はこちらのサイトとは契約しておらず、ホームページからの流用も許可しておりません。

こちらのサイトから予約して頂いても、当院での予約になりませんのでご注意ください。

最近聞いたお話しでは、人のマッチングサイトの仕組みを流用した、これに類するマッチングサービスが飽和状態だそうです。

確かにどの動物病院が自分と自分の大切な動物に合っているのか、行く前から分かったらとても便利だな、と思います。

実際に具合が悪くなって駆けこんだら、全く自分と合っていない病院だった、というのは飼い主さんにとっても、病院にとってもストレスですよね。

ですが、動物病院は一人の人間ではありません。

事務方、院長、勤務医、動物看護師、そのほかのスタッフ全てが組み合わさったいわば複合体なのです。

正確にいえば院長以外のスタッフは年ごとに変わる、早ければ一年のなかで複数変わる場合もある、非常に流動的な有機体のようなものです。

スタッフの人数や顔ぶれだけで、大分病院の雰囲気は変わります。

たった一人の獣医師が、看護師が、事務方が加わったことで医療的なレベルやモラルが急激に上昇することも、逆になることもあるのです。

おいしいレストランのコックさんが一人変わっただけで味が全く変わってしまうことがあるように。

また院長は同じでも、本人の年齢や置かれた状況で、考え方や医療の方法はどんどん変わります。学会や大学に勉強に行く先生方は常に最新の治療や知識を求めますし、それをどん欲に吸収するからです。

代わりに頑張りすぎて心身に不調をきたしてしまい、やむなく休診となってしまうケースだってあります。

個人のマッチングで簡単に相性が選べるほど簡単ではないよなあ、と思ってしまいます。

じゃあどうしたらいいのでしょうか?

これはすごく簡単で、一度行ってみるのが一番いいのです。動物たちを連れていくのは大変ですが、実際に行く道筋をたどり、動物たちが病院でどんなふうにふるまうのかを確認してくることはプラスにしかなりません。

前述した爪切りでも、肛門腺絞りでもいいですし、予防薬を買うだとか、単なる健診で行ってみてもいいです。

料金が心配かもしれませんが爪切り程度でしたら、どんなにがんばっても初診料と診察料で五千円は行きません。

待合室で待ってみて、スタッフや獣医師や通われているほかの飼い主さんの雰囲気を感じ、実際に会話をしてみれば、まず自分にあっているかどうかは分かる筈です。ご自身の観察力と勘を信じて下さい。

こうした観察は自分の動物が健康でいて、初めてできる余裕のある行動であり具合の悪い状況ではなかなか判断できないものです。

ぜひ元気な時にあえて行ってみてくださいね。

hr

また、口コミや誰かのアドバイスは有用に見えますが、その人にとってのベストがあなたにとってのベストかどうかは誰も分かりません。

友人が好む服は、あなたの好きな服でしょうか?

親戚や知人が好きな本は、あなたが好きな作家でしょうか?

悪意やお金を背景に、根拠のない噂がばらまかれたりネットに書き込きこまれたりすることもあるので、やはり現実に自分で確認するのが最も良い選択だと思います。

「ウイルス検査を勝手にされてお金をたくさんとられた!」と周りに吹聴していた人が、実は何の検査も受けておらずご自身が希望した外耳炎の治療が思ったよりも高かっただけとか、「病理検査をかってにされた!」と書き込んだ人が、普通に手術前の麻酔をかけられるかどうかの検査を受けただけだったとか……。

ご自身では気づいてらっしゃらないのですが、実は各病院の先生方はどういった方がそういう話を吹聴しているか把握しています。

またそういう行動をとる方は、どの病院でも同じようにふるまうことが多く、それも色々なところで共有されていたりします。

まあ、そういう口コミなどに踊らされてしまうのはある程度は仕方のないものだ、とどの病院の先生もため息をついていますが……。

現在、法的な整備が整いつつある情報開示などの手続きが簡便化されれば、極端なものは削除されていくのではないかな?と思います。

hr

話は元に戻って、今後こうしたサイトが活躍できたらいいのですが、今回のように誤った情報を勝手に乗せてしまったり、実際にはできないことをうたって混乱を招くのは非常に困ったことです。

今回の件は東京都獣医師会からの注意喚起がなければ、全く把握できないことでした。

会員の先生でこういったサイトに素早く気づかれた方々の尽力あってこそだと思います。

近い将来、ネットに関した仕事が全ての仕事のなかで七割を超えるのだそうです。

私達のような実際に触って、見て判断する、手を動かす仕事は圧倒的少数派になるのだろうな、と思います。

かつて限られた一部の人だけが持っていた技術は一般化し、小学生でも簡単にプログラミングを操ってサイトやアプリを開発することができる世の中です。

一見綺麗でしっかりしたサイトに見えても、その実個人情報を抜くためだけに作られていた、なんていうこともざらなのだそう。

すごい世界だなあ、なんて遠くからぼやっとしてしまいますが、そういった背景を踏まえつつ、本当に自分が必要としているものをきちんと自分で選ぶ目を養いたいなと思いました。

2022-09-20

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