動物病院HOME < 院長のコラム < 動物たちへの投薬方法
今年の夏は波乱の夏としか言いようがない始まりでした。
暑さが極まるにつれ、脱水から体調を崩す子も増え、恐れていた熱中症の症例もやってきました。
数年ぶりにひどく暑さに痛めつけられる夏だと感じています。
7月頭に比べて暑さに体が慣れてきたとはいえ、40度近くまで上がる気温は容赦なく体力を奪うものです。
これは動物たちだけでなく、人間も同じこと。
日々続く灼熱は想像以上に体に負担になっているでしょう。
飼い主さんたちの健康維持は動物たちに直結するものです。
どうか皆様ご自愛くださいね。
先月のコラムで書かせていただいたアリエルですが、現在は階段の昇り降りもできるようになり、だいぶスムーズに動くことができるようになりました。
院内でもまだ少し手足が滑る様子がありますが、以前と変わらず軽快なステップで歩き回っています。
お声がけくださった皆様、本当にありがとうございました。
本来であれば獣医師として飼い主様たちに心遣いをいただく立場であってはならないのですが、一飼い主としての立場として、かけていただいた言葉の一つ一つがとても嬉しく、勇気づけられました。
繰り返しになりますが、ありがとうございました。
さて今回は投薬の話を少し。
治療にはお薬の投与が不可欠ですが、投与経路、要するにどうやって体に摂取させるかはいくつかの方法があります。
病院ならではの方法はインジェクション、つまり注射ですね。
注射筒に薬剤を入れ、針で体内に入れます。これも針を指す位置で静脈、筋肉、皮下、硬膜外などいくつかの種類があります。
おうちでの投与は、経口、口から飲む方法です。
これも錠剤、粉、液体、おやつのようなチュアブル、ゼリー状など形に種類があります。
これが投薬大黒柱二つですが、これ以外に直腸粘膜から吸収させる座薬、皮膚から吸収させるスポット剤、霧状にして吸い込む吸入薬などがあります。
薬の形状は薬剤の特性によって決まったり、その薬が吸収される部位が異なっていることが前提で決まっていたりします。
例えばニトロのように舌の裏で吸収させる錠剤もあれば、胃を通過し腸で吸収させる薬もあります。
案外知られていないのですが、同じ薬でも注射薬しかないもの、飲み薬しかないものもあります。
例えば利尿薬であるフロセミドは注射薬も飲み薬もありますが、ブクラデシンナトリウムのように注射薬はあっても飲み薬はなく、別の用途ですが塗り薬ならある、というものもあります。
病院で入院すれば使えるけれど、家に戻ると使えない薬などはこういうものが多いですね。 また強心剤であるピモベンダンのように元は飲み薬しかなかったものが、注射薬も後から開発されるなんていうこともよくあります。
大切なのはどんな薬も体に取り入れられなければ効果を発揮しない、ということです。
ですから昨今動物たちのために開発されているチュアブルなどは、味や匂いがついていて食べやすく飲ませやすい形状にしてあります。
それでも、我々よりよほど感覚器が鋭敏な動物たちは、美味しい形や色、匂いをしていても飲んでくれないこともあります。
ご飯に混ぜれば食事自体をしなくなったり、無理に口に入れても飲み込まなかったり、涎で押し流したり、唇の裏に隠して気づかれないように吐き出したりすることもあります。
猫ちゃんなどはカニの如く泡を吹いたりするので、これはもう本当に大変です。
まれにそのまま差し出したら食べてくれるという珍しい子もいますが、半分以上の子たちは自ら飲むことはまずありません。
投薬は動物の治療においてまず誰もがぶつかる壁なのです。
「うまく飲ませられません!」
「吐き出してしまいます」
「ご飯に混ぜたらまったく食べなくなりました!」
という悲鳴をどれほど聞いたことでしょう。
ですが、残念なことに薬を飲ませることができなければ、次の手段はほぼほぼ注射に通ってもらうしかなく、もしくは入院するしかないのです。
よってどうしても、飼い主さんたちの投薬技術のレベルアップが必要になるのです。
「飲ませられるかなあ?」
という疑問はもっともで、実際皆むずかしく思っているからこそ、投薬用アイテムがたくさん作られています。こまっている場合は、「飲ませられない!」と悲観せず、まずは是非ご相談ください。
包んだり混ぜたり溶かしたり、そう言ったことに特化したおやつがたくさんあります。
ご自身で工夫し、液剤をドライフードに染み込ませて、再び乾かして与える、などの手間暇をかけることで食べてくれる形状にして投薬されている飼い主さんもいらっしゃいます。
色々試してからやはりうちの子は家での投薬ができないので、注射に通います、となるのは仕方ないのですが、最初から諦めないでいろいろな方法を試してみましょう。 飲ませるのは正直なところテクニックです。
そして練習あるのみ。
どんな獣医さんも看護師さんも、はじめは飲ませることに四苦八苦しています。
でも投薬しなければこの子の命はない、といった切羽詰まった状況を繰り返し経験することで、投薬テクニックが磨かれてきただけです。
技術である以上、練習すれば少しずつできるようになることが多いです。
動物も飼い主さんも投薬に慣れ、お互いに協力しながら薬を飲めるようになるといいですね。
2022-08-04
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