動物病院HOME < 院長のコラム < 外耳炎が多発しています
少し涼しく……と思いたいのですが、日中の陽射しは相変わらず強く、紫外線をジリジリ感じてしまいますね。
先日少し街に出た所、ソフトクリーム屋さんに大行列ができていました。まだまだアイス屋さんも盛況のようです。
季節を感じるものに、自動販売機の「冷たい」と「あたたかい」がありますが、そういえばまだホットの飲み物は少ないですね。
コンビニなどでは一年中温かいお茶も取り扱っていますが、まだ自動販売機は冷たい方がありがたいかなあと思います。
今年は陽射しに加え、湿度が体力を奪います。外出先の鏡でじわあっと滲む汗が顔に滴って、滅多にしない化粧が流れてゾンビのような顔になっているのをみてしまい、しばらくトラウマになりそうです。
動物達の間ではこのところの蒸し蒸しとした大気のせいで、見事にマラセチア性外耳炎が多発しています。
垂れ耳の子達は言うに及ばず、立ち耳の子ですらマラセチア性の耳垢で耳が真っ黒になっているのですから、気候を恨む気持ちがとまりません。
マラセチアは酵母様真菌というカビの仲間で、菌とは少し違います。黒褐色のべったりとした耳あかと、独特の発酵臭のような臭いが特徴です。
お家で普通の洗浄液をつかって毎日耳を洗浄しても、相手はカビなので繁殖力が高く、あっという間に元通りになってしまいます。
よく「どこで感染したんですか?」と聞かれるのですが、皮膚の上に常在していますのでどこか汚い所に行ったから感染した訳ではないのです。
皮膚には水分と油分のバランスを保ち、バリアーとして体内を守る機能があります。しかしこのバランスが何かでくずれ、コンディションが悪くなると、カビや菌が増殖し症状を引き起こすのです。
これはアレルギーが下敷きの細菌性膿皮症でも同じで、感染した菌が特殊な訳ではなく、感染してしまう状況に皮膚が陥っていることが問題なのです。
大学病院にいる頃、ホルモンの病気を下敷きに細菌性膿皮症になってしまったシーズーの飼い主さんが、細菌が原因で……と担当獣医が説明した所、非常に憤慨なさって「うちはこの子が座っている座布団もタオルケットもお洋服も全て毎日洗濯して、綺麗にしています。 空気清浄機だって除菌スプレーだって使ってます!菌がいるわけがありません!うちが汚いとでも言うんですか!」とおっしゃったことがありました。
その時「おかあさん、菌は私たちの皮膚の上にも数えきれないほど存在しています。無菌室でない限り、菌は常に共存しているものでお母さんのその手にも髪にもごく普通に存在していて、それがふつうなんです。
存在するだけではなく、感染してしまうのはバリアー機能 が弱っているからです。そこが一番大問題なんです」という説明をして納得して頂きましたが、カビや菌と聞くとえ?綺麗にしてるのに!と思われるかもしれないですが、そういう訳ではないことをご理解頂きたいなあと思います。
「もやしもん」という農大を舞台にした菌が肉眼で見える主人公の漫画がありましたが、これは一読すると世界の見え方が変わるかもしれません。特に除菌スプレーや空気清浄機などが好きな方にはおすすめです。
また多頭飼育されている方は、外耳炎になったわんちゃんの耳を、もう一頭が舐めてしまう、というのもよく聞きます。これは特にマラセチアの発酵臭につられて舐めている場合が多いです。
舐められている方も、かゆくて自分では届かない所を舐めてくれるので、嫌がらずになめせているのですが、こういう場合、耳介周辺には耳垢が残らず一見綺麗にみえるのですが、実は耳道の奥に耳垢が押し固められてよりひどくなったりします。
また唾液が耳のなかに流れますので、それだけで耳道内の皮膚が痛み、よりコンディションが悪化することに……。
よりそって舐めあう二匹の様子はとても仲睦まじく可愛らしく見えますが、それでは治りませんので、なるべく早く治療して頂ければと思います。
幸い、マラセチアに関しては正しい洗浄と、正しい薬が非常に効果的です。
この正しい洗浄というのがなかなか難しいのと、使う洗浄液もそれ用のものが必要になりますので、お家で頑張るより動物病院で診てもらった方がいいと思います。
真面目でまめな飼い主さんが「毎日しっかり洗ってるのに全然汚れが減らなくて」と悲痛な声を上げているのを良く聞くのですが、そこまで頑張りすぎなくても大丈夫。
外耳炎は昔からマメな飼い主さんの方が悪化させやすい、というのですが洗い方によって逆に耳の中を傷つけ、ひどくさせてしまうケースが多いのです。ちょっとズボラなくらいで、おかしいなと思ったら病院で治療の方が効果的だと思います。
そもそも耳は急所ですので、耳掃除を嫌がる子も多いですし、特に外耳炎になって痛みがあるととても嫌がったり、噛んだりすることもあります。その場合、先に内服の治療をしてから洗浄を行うこともあります。
よくある外耳炎ですが、以前コラムで書いたようにひどくすれば耳血腫のように手術が必要になることもあります。
初期に見つけ、適切な治療をしていきましょう。
2017-09-15
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