院長のコラム

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動物たちも長生きになっています
動物たちも長生きになっています

2016年も気がつけば後2ヶ月ですね。

感覚的につい2ヶ月くらい前に、年が明けたような気がしていたのですが、いつの間にタイムスリップしたのでしょうか…。

ハロウィンでの仮装やお菓子などが大分馴染んできた日本ですが、もともとお祭り好きな国民性を反映しているなあと思います。

賛否両論ありますが、商魂たくましい日本企業を見ていると、これはこれで経済活性化に寄与している気もするので良いのかもしれません。限度とモラルが必要ですが。

ただ、現在はネットを含め情報拡散が高速で広範囲です。悪意のある切り取り方をした情報で、いかにもな印象操作を行うようなことも多いので、そのあたりは正しい情報を確かめるという習慣も必要かなと思います。

動物たちも長生きになっています
動物たちも長生きになっています

今回は年を重ねた動物達とどうお付き合いして行くか、ということです。

動物達が生きている時間は、私たちとは違います。現在、フードの良化やワクチン接種の徹底、獣医医療技術の進歩などにより、昔に競べ動物達の寿命は飛躍的に伸びました。

統計を見るまでもなく、十年前には犬では12歳前後、猫では14歳前後でなくなる子が多かったのに対し、現在では犬でも15歳前後、猫では20歳前後の子達が珍しくなくなりました。

中には20歳を超えた犬や24、25歳の猫も来院されます。 見た目も若々しく、アクティブで、痴呆もなく、元気な子が増えたなあ、と強く感じます。

これはひとえに動物を飼う方法が周知され、間違った飼育法を払拭することが出来るようになったから、というのが大きいのだと思います。

例えば、犬は昔、外で飼われ人間の残飯を食べている子が沢山いました。

お味噌汁とご飯、おかずには食べ残した炒め物や揚げ物などが入っていたでしょう。それがごく普通のことで、おかしいとも思われていなかったはずです。

けれどこういった食事の塩分量は総じて高く、必要な栄養素が全くたりません。味が濃いので喜んで食べますが、長く食べ続ければ腎臓などが駄目になるケースも多かったのです。

それでも長生きで病気一つしなかったぞ!というお話も聞きますが、おそらく病気をしても気がつかなかったんだろうな、という場合もありますし、そういった子は和犬や和犬の雑種が多く、元々長生きの要素を持った子が多いのです。

病気になる前にできること
病気になる前にできること

かかりやすい病気を知っておく

現在飼育されている動物達は、ミックスも含め純血種が主流です。

犬種特異性、猫種特異性のある病気も多く、飼い主さんのなかではそういった情報がやり取りされていることでしょう。

起こりやすい病気を知ることで、対策をすることが出来ます。

例えば緑内障の好発犬種は、日本国内では柴犬、シーズー、アメリカンコッカースパニエルですし、ウェルシュコーギー、ジャーマンシェパードに好発する変性性脊髄症、ボーダーコリーの神経背ロイドリポフスチン症、シェットランドシープドッグやミニチュアシュナウザーの脂質代謝異常などです。

またウエストハイランドテリア犬などにおこるホワイトドッグ・シェイカー・シンドロームなどの、白色毛をもつ犬の発生する神経疾患もあり、犬種だけではなく身体的特徴により起こりやすい病気もありますので、あらかじめ知っておくとよいと思います。

動物保険の検討

さて、話がそれましたが、高齢になって様々な病気が発症する前に、出来れば動物保険に加入した方が望ましいと思います。

動物に保険が出来たのはイギリスで1947年のことだそうです。 日本では1980年台から無認可ですがその機構が始まりました。

現在では様々な会社による動物保険が導入されており、比較検討した上でおうちの子にあう保険を選んで頂きたいと思います。

当院ではアニコムとアイペットの二つの保険に対応しています。よってこのどちらかに加入されている場合は保険証の提示と認証が出来れば、人間の保険と同じように窓口精算が可能です。

その他の保険に関しては飼い主さんからの請求が必要になります。

動物医療は人間医療の縮図です。使用する薬や資材など、ほぼ人間と同じ物を使用します。日本では人間の場合、保険加入が一般的なので、医療費負担は通常三割程度です。

これを全額負担で計算をすると、医療費というのがどれほどかかるものかよく分かると思います。国家財政でよく医療費の経済圧迫などが問題になりますが、医療費自体が非常に高額ですので当然だろうなあと思います。

動物医療費がとくに高いと感じるのは保険が充実している日本ならではですね。海外では医療費が高いのは人間も動物も同じです。

実際いざ治療、となった時に保険に入っていると本当に心強く、前向きな治療が検討できます。年齢制限が設けられている保険が多いので、あまり高齢になる前に一度加入を考えてみて頂きたいです。

痴呆への備え

和犬を中心に12歳前後から痴呆の症状がでてくることがあります。

昼夜逆転、無駄吠え、寝たきり、旋回など、神経症状と絡んで、飼い主さんとの生活が苦しくなることも多く見受けられます。

元来和犬は魚食を多く取って進化してきた経緯があるので、DHAやEPAなどの青魚に含まれる不飽和脂肪酸の必要要求量が高いのです。

しかし年を重ねるごとにこういった栄養素不足に陥りやすくなり、痴呆症状が加速することがあるそうです。

予防的にそれらがもとから含まれた食事やサプリメントをとることで、症状の改善や発症を遅らせることが出来ることが知られています。

加齢とともに起こるかもしれないこと
加齢とともに起こるかもしれないこと

寝たきりになったときは

また、手足が弱ること、神経的な問題、病気による体力低下などにより寝たきりになることもあります。 体の大きい子程、床ずれなどの問題が起きやすくなりますので、低反発マットやクッションなどを利用しましょう。

足が重なる所に小さめのクッションを挟むと、床ずれしにくくなります。 人用の低反発マットのには安価な物も多くありますので、そういった物をその子にあった大きさにカットし利用すると便利です。大きいので交換用の予備も出来ます。

排泄をそのままの姿勢で行うことも多いので、マットに大きめのゴミ袋をかぶせ、尿などがしみ込まないようにしたうえで、シーツやバスタオルなど洗うことが出来る物をしきます。その上にペットシーツを敷くと良いでしょう。

二、三時間ごとの体位変換も効果的です。このときは、変換する飼い主さん自身が腰を痛めることがありますので、気をつけて下さい。

ペットシーツは大きい物と小さい物があると便利です。食事を与えるときなどには小さい物を使います。

お尻が便などで汚れてもお風呂で洗うことが出来ない場合、大きいサイズのペットシーツを何枚も敷き詰め、水差しの様なものにお湯を入れて少しずつ濡らしながら洗ってあげると匂いもとれすっきりします。

尿などがついて匂いがしてしまうときは、洗わなくとも犬用の化粧水で湿らせ拭き取るといいでしょう。保湿と洗浄、消臭効果のある専用のものが病院に用意してあります。

食事の与え方

自分から食事がとれるのであれば良いのですが、手で上げたり場合によっては流動食などを給仕してあげなければならないこともあります。

いままで専用のドライフードなどを使っていた場合、そのウェットフードに切り替えたり、少量でも高カロリーの専用食を使うことが出来ます。

全く食べなくなってしまったら、人の食べ物でもそれを好んで食べるのであれば、こういった状況の場合与えてもらっていいと思います。

手作りのご飯なら食べる、おいしいお刺身なら食べる、牛肉なら食べる、何でも構いません。食べることが生きることです。自分の口から食べない場合、動物は一気に衰弱して行きます。

ですから何がなくとも、こういった状況になった場合は食べさせることが大切なのです。

それ以外にも高栄養のパウダーやハイカロリー液体食もあります。何でも使ってみて下さい。

酸素室の用意

様々な理由で呼吸が苦しくなる場合もあります。この場合レンタルで酸素ケージを用意することが出来ます。

これは医療機器になりますので、病院へお問い合わせ下さい。酸素発生器、酸素ボンベ両方の取り扱いがあります。また設置などは速やかに業者の方がして下さるので、非常に簡便です。

急変に備える

高齢になり寝たきりになったり、病気と闘っている場合、いつ急変し容態が変わるか全く分かりません。分かるのはそういった事態が予測される、ということです。

それが夜間や休日である場合もあります。そういった専門動物病院が都内にはいくつかありますので、その場所をきちんと把握しておく必要があります。

こういった特殊な病院はカード払いや保険などの取り扱いがない場合もありますので、その辺りもチェックする必要があります。

またどこまで、何をするのか、といったことを考えておく必要があります。これは人間と同じです。

たとえば救命処置を望まない、人工呼吸器には繋がないで欲しい、いざという時は家で見てあげたいなど、その飼い主さんが望むことは、一つ一つの家族でみな異なります。

海外のように長患いをするくらいなら元気なうちに安楽死を、と考える場合もあります。ただ同じ家族の中であっても、最期への考え方は異なり、選択を行う場合に家族内で問題になることもしばしばあります。

最期まできちんと飼い主としてその動物達に向き合うために、しっかりと話し合い、考えを伝えあって欲しいと思います。

こういったことは急に起こるものです。いざという時に、十分な話し合いができないことも多いのです。

なるべく後悔しないために
なるべく後悔しないために

また残念ですが、人間と異なり動物は自らの意思を言葉で伝えることは出来ません。 そういった状態になった時に、その子の気持ちをくみ上げ判断するのは、獣医師でもお散歩仲間やお友達やインターネットのブログではなく、飼い主さんです。

いざその場に直面すれば、大抵パニックに陥り、冷静に判断が出来ないのが普通です。残酷なようでもそういったことがあるかもしれない、ということから目を背けずにいて欲しいと思います。

なるべく後悔が無いようにする、というのはそれまでの間に準備や覚悟をきちんとしていなければ出来ないことなのです。

今まで飼い主の立場で自分の犬を六頭、看取ってきました。寝たきりになり長く患う子もいれば、あっという間にいってしまった子もいました。

どの子にも後悔があります。 もっとできたのではないか?もっとこうした方が良かったのではないか?あの時こう出来ていたら。 後悔が無い最期はありません。

もっと一緒にいたかった、という気持ちと、これまでありがとう、という気持ちだけが残ります。

でもその後悔を少しでも減らす努力を、やはりした方がいいと切に思っています。

2016-10-31

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