動物病院HOME < 院長のコラム < レプトスピラとワクチン
師走に入り忙しさが加速していることだとは思いますが、皆さん体調を崩したりされていないでしょうか?
先月に引き続き、今年は暖冬だと実感する日々です。
いまだに外耳炎と皮膚炎の猛攻が治まりません。
例年でしたらそろそろお薬をお休みできそうな子達ができないこの状態に、非常に歯がゆい気持ちで一杯です。こればかりは気候を恨むしかないのですが……。
今年はとりわけノミや、マダニの感染やそれによる二次的な病気の罹患率が高い年でした。これもまた温暖化の影響なのかもしれません。
先月もちょっと怖いSFTSのお話を取り上げましたが、また今月も恐ろしいニュースがはいってきました。
東京都下の武蔵野市で、十月にミニチュア・ダックスフント(10歳)が、レプトスピラ症に感染し死亡したという報告がありました。
来院する二日前から体調を崩し、食欲と元気の低下、下痢、嘔吐、黄疸、腎不全を起こし、二日後に亡くなりました。
レプトスピラ症(leptospirosis)とは病原性をもつレプトスピラという細菌によって引き起こされる感染症です。
ワイル病、秋やみなどとも言われ、犬をはじめ、ほとんど全ての哺乳類に感染します。
狂犬病などと同じく人獣共通感染症(ズノーシス)、もしくは動物由来感染症に分類され、『届出伝染病』に分類されています。
これはレプトスピラ症の感染が人に確認された場合は、医師が保健所に届け出を、犬に感染が確認された場合は、獣医師が家畜保健衛生所に届け出る義務がある感染症だということです。
そのため、この症例がレプトスピラ症に感染しているという結果は速やかに家畜保健衛生所に届け出られ、各獣医師に情報の共有化が行われました。
病原性レプトスピラは保菌動物(ドブネズミなど)の腎臓に保菌され、尿中に排出されます。
ヒトや犬は保菌動物の尿で汚染された水や土壌 から経皮的あるいは経口的に感染します。
レプトスピラ(Leptospira)は、スピロヘータ目レプトスピラ科に属するグラム陰性細菌で、この科には他にレプトネマ(Leptonema )、ツルネリア(Truneria )が含まれます。
レプトスピラには病原性と非病原性の2 種類があり、顕微鏡下凝集試験(MAT)に基づいて現在250 以上の血清型に分類されています。このうち混合ワクチンに含まれている代表的な型は四つあります。
これは10種ワクチンの場合で、9種、8種になれば含まれる型が減ります。
ちなみにレプトスピラ症が含まれているワクチンは7種以上のものに限られます。6種以下には含まれていませんので、今一度、ワクチンの証明書を確認して下さい。
レプトスピラ症は現在でも散発的な発生は各地で認められており、特に沖縄県では散発、集発事例が多く報告されています。
1999年夏季には、八重山地域においてレプトスピラ症の集団発生が起こり、15例の確定診断がなされましたが、そのうちの半数近くの患者は、観光ガイドやカヤックインストラクターなど河川でのレジャー産業に従事する人たちでした。
近年では、このように水辺のレジャーを介した感染が増加しています。水場が危険、といわれるのはこういったことからです。
人での臨床症状は急性熱性疾患であり、感冒様症状のみで軽快する軽症型から、黄疸、出血、腎障害を伴う重症型(ワイル病)まで多彩な症状をしめします。
5~14日間の潜伏期を経て、発熱、悪寒、頭痛、筋痛、腹痛、結膜充血などが生じ、第4~6病日に黄疸が出現したり、出血傾向もが強まります。重症化すれば亡くなります。
動物達の症状もこれに似て、発熱、嘔吐、脱水、出血、黄疸などがみられます。今回のように重症化した場合は死亡します。
レプトスピラ症はワクチンで予防できる感染症です。
ウイルスではなく、細菌がターゲットであることが、狂犬病やパルボなどとは少し異なりますが、それでも十分致死的な感染症になる恐ろしい病気です。
1998年以降、犬のレプトスピラ症の届け出件数は増加しており、2002年には年間150頭をこえました。
これは「うちの子は大丈夫」という無根拠な自信からワクチンの接種を避けたりする人が増えているのに対し、ドッグランやドッグカフェ、犬とお泊まりできるキャンプやホテルなどが増え、人とともに多くの犬達が様々な地域に移動したり、川遊びなどを楽しむようになったことも一因でしょう。
多くの方はきちんとワクチンを打っていますが、打たない人が増えればその分暴露される可能性は高まります。
また6種以下のワクチンであれば予防効果はありません。
風疹ワクチンの成人接種が啓蒙されていますが、なぜワクチンが定期的に必要なのか、もう一度この件をきっかけに考えて頂きたいと思います。
さて今月のゲストは、トイプードルのベア君とシーズーのチョコ君。
二人は別々のおうちの子で、ホテルでお預かりですが、とても仲良し。
ジャンボどうぶつ病院名物院内自由行動時間では、お隣で仲よくお昼寝します。
診察中はちゃんとケージに戻ります。
スタッフミーティングでは、二匹とも中央に陣取り、会議に参加しているつもりのようです。
ホテルでお預かりした場合、このように外に出しても大丈夫な子達は院内を自由に遊ばせます。
ケージの方が落ち着く子もいますし、外の方がいい場合もあるので、そこは個性に合わせてですね。
ちなみにカラーをしているのは、二人とも皮膚病の治療中だからです。ホテル中ですが投薬や薬浴なども行います。
動物病院ならではのホテル生活を堪能する二匹でした。
2018-11-30
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