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新しい痒み止め薬
新しい痒み止め薬

ようやく暑さも和らぎ、夜の中に秋を感じるようになってきました。

でも日中はまだまだ暑くて、しかも雨が多いせいでむしむししていて、外耳炎の発症が止まりません。

六月の梅雨の時期からもうずっと、耳が痒かったりいたかったりする子ばかりで、猫も犬も関係なくひどい状態です。

一度しっかりなおっても、この気候ではまたあらたに発症することも多く、痒みの強さから耳を含め顔周辺をかきむしるせいで顔を傷つけたり、目を傷つけたりといった二次的な病気も続いています。

外耳炎になる要因はいくつかありますが、

  • 耳の中の毛が多い、もしくは伸びてしまっている
  • 垂れ耳である
  • アトピー体質がある
  • 耳ダニやマダニなどの寄生虫がいる

などにより、蒸れたり掻いたりして耳の中が腫れ上がったり傷ついたりして、耳の中の環境が急速に悪化します。狭くなった耳道は通気性が悪くなって耳垢が外に出しにくくなり、さらに蒸れて細菌やカビが繁殖し、余計に痒みをだす悪循環に陥ったりするので、一気に症状が酷くなるのも特徴です。

「昨日までは赤くなかったのに…」というお話もよく聞きますが、これは大袈裟でもなんでもなく、そのくらい短時間で悪化するのです。

ケースによっては以前にコラムで取り上げた耳血腫になったりもしますのでお気をつけください。

本当に早く涼しさが安定し、爽やかな秋になってほしいと切に願います。

副作用の起きにくい薬です
副作用の起きにくい薬です

さて、そんな痒みに朗報です!

先日、新しい薬のセミナーに参加してきました。

犬のアトピー性皮膚炎に対するモノクローナル抗体治療薬として発売される、全く新しい種類の痒み止めが発売されるのです。

なんとこれはいわゆるステロイドなどとは全く作用機序のことなる痒み止めであり、その性質から極めて安全で副作用がほぼなく、弱齢の犬にも使用でき、他の治療薬、たとえば心臓などのお薬を服用していても影響がないという良くできたお薬です。

名前はサイトポイント。ただし、飲み薬ではなく注射薬です。

このお薬は生物学的治療(免疫療法)に分類されるため、ステロイドや抗ヒスタミン薬と異なり、化学物質ではありません。

培養によって作られるタンパク質であり、薬剤のように肝臓や腎臓での代謝を受けません。効果を及ぼす範囲がかなり限定されていて、特異性が高く副作用が少ないのが、特徴です。幼いうちから使うことができるのもいいですね。

また、アレルギー性皮膚炎ではなくアトピー性皮膚炎に特化しており、そこが現在当院で主に使用している両方に効果を持つアポキル(オクラチニブ)とことなるポイントです。

また速効性を特徴とするアポキルにたいし、効果は早いだけでなく、長期作用が特徴です。1日から3日で発現し、4から6週間効果が続きます。

簡単に言うとアポキルが著効しなかったり、お薬が飲めない子達には救世主になるお薬かもしれません。

上手な使い方をすれば、投薬のストレスから解放されたり、今まで必要とされた薬の量を減らすことができるのです。

皮膚科医療の進歩
皮膚科医療の進歩

近年、皮膚科の分野では分子標的薬であるアポキルが発売されたことで、副作用が少なく、かつ効果的な治療ができるように劇的に変わりました。

以前のようなステロイド一辺倒の治療は激減し、どうせ治らないから…と諦めていた犬たちが、とても快適に暮らすことができるようになりました。

アトピー性皮膚炎もアレルギー性皮膚炎も体質なので、完璧に治すことはできませんが、上手くコントロールしてQOLを高めることはできます。

そしてさらに今回の新薬の登場で、ますます皮膚科の治療の形態は変わっていくことでしょう。

ありとあらゆる新薬には当然リスクがあります。現段階でわからない副作用がないとは言えません。けれど、AIを用いた昨今の製薬技術は目覚ましく、作用、副作用に関してもかなりの精度で予測することができます。

よってかつてのサリドマイドのような薬害は非常に起きにくくなっています。それを踏まえて適切な使い方をしていかなければなりません。

ちなみに今回のサイトポイントは化学物質ではなく、タンパク質なのでまず副作用は考えなくていいでしょうね。

正しい知識を更新し、還元していきたいと思っています。

私たちにとっても動物たちにとっても、新しい薬の開発は歓迎されるべきことで、本当にありがたいことです。

このお薬の発売はまだ未定ですが、そう遠からず国内で使用することができるでしょう。

多くの犬たちが少しでも楽になるといいな、と四時間ほどの講演中、にやにやしてしまいました。

2019-09-03

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