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見えない腫瘍は要注意
見えない腫瘍は要注意

3月も半ば過ぎて大分陽気は温かくなりました。

辛夷の花もこの数日で満開になり、次は桜だなあとあの可憐な花びらがまたこの空を彩るのを心待ちにしています。

さて、3月から春の健康診断キャンペーンが始まりましたが、いくつか注意するべきポイントがあったので、コラムで取り上げたいと思います。

おしりのできもの
おしりのできもの

この写真をご覧下さい。

これはちょうどわんちゃんの真後ろから撮影したものですが、ぷっくりと丸いできものが確認できます。

場所が問題で、陰部にできているのです。

ここは少し奥まっていて、なかなか普段みることができる場所ではありません。指で少し皮膚を上に引っ張り上げるようにしてようやく見えてきます。

よって飼い主さんが気がつきにくいところなのです。

実はお尻のあなは真後ろからみると見えるのですが、陰部は陥没型の犬達も少なくなく、見えづらい箇所です。

柴犬のような巻き尾や、コーギーのようにみじかい犬種はべつですが、尻尾が垂れ下がっていると肛門も見えづらいですよね。

それにここは当然急所なので、見ようとすると尻尾を下げて隠してしまうことも。

そして普段飼い主さんはお尻より顔をみるので、お尻周辺は盲点になることが多いのです。

このケースもたまたま散歩中に後ろからお尻を見て気がついたケースでした。

検査をすると、悪性腫瘍ということがわかり、すぐに切除手術になりました。

幸い取りきれたのですが、あともう少しでも大きくなっていれば取りきることは難しかったと思います。

口の中のできもの
口の中のできもの

また確認しづらい場所として口の中があります。

これもお尻と同じく急所ですので、歯磨きを日常的にしていないと発見自体が遅れてしまいます。

特に見つけにくいのは、舌の下です。

上顎、下顎の表面的な場所は口を大きく開ければ見つかりますが、舌下や喉の奥、扁桃部などは見ることができません。

また症状は口内炎のような炎症から始まり、見つけた時は大分大きいことがほとんどです。

口腔内の癌は、扁平上皮癌、悪性黒色腫、腺維肉腫が三大好発腫瘍で、全て悪性です。基本的になるべく小さなうちに見つけ、切除を行わなければなりません。

必要であれば、顎の骨ごと切り落とすことになります。

また切除ができない場合は、放射線療法が適用されます。抗がん剤はそれらの治療のあとの選択になることが多いでしょう。

唾液が多くなったり、やたら舌先を動かし口内を気にしていたり、口臭がきつくなった場合は要注意です。

体の中のできもの
体の中のできもの

もう一つ、見つけにくいのは腹部、胸部の中ですね。

胸の中はレントゲン検査、お腹の中は超音波検査で、見つかることが多いです。

この超音波写真は、脾臓の腫瘍です。

全く自覚症状はなく、ただの健康診断で見つかりました。健康診断をしなければ破裂するまで症状は出なかったでしょう。

事前検査にいくつかの血液検査をしましたが問題なかったので、手術になりました。

こちらはレントゲン検査で見つかった肺の腫瘍。

この子は猫ですが、たまに咳が出るくらいの自覚症状のみでした。

念には念を、撮影したレントゲン検査でこれだけ大きな腫瘍が見つかりました。

血液検査には全く問題なしでした。

どちらも飼い主さんが自覚する症状とはかけ離れた大きさの腫瘍ができているケースですが、検査をしなければ決して見つからなかったものです。

健康診断を勧めるのは、こういったケースが後を絶たないからです。また各獣医師の先生が検査をお勧めするのもこういう事情です。

言葉が使える人間ですら人間ドックに行かなければ分からないことが多いのに、口がきけない動物達はなおさらだと思います。

体の中のできもの
体の中のできもの

また上記二つですが、血液検査には反映されない結果です。

そう、健康診断で血液検査だけをしていても、見つからなかったケースなのです。

こういったケースが本当に毎年後を絶たず、間に合えば無事手術を乗り越えることができ、実際食欲不振などの症状が出たり、貧血が見つかってからだと手遅れになる場合も多いです。

開業したての頃、食欲もなくお腹が見るからに腫れ、荒い息をしてぐったりと横たわっている、口の中の粘膜が真っ白な犬を連れてきた飼い主さんがいました。

お腹にしこりがあるのを疑い超音波検査、貧血を疑い血液、胸の中異常を確認するためにレントゲン検査を提案したとき、「こんな検査ばっかり、もうけるためでしょう!」 とかなり手厳しい意見を頂いたことがあります。

残念な話ですが、現場で働いていると、検査というのは一括りのもので、目的別に行うのである、ということを理解してもらえないこともあるのです。

必要な検査以外をする必要は全くありません。その検査もするためにはテクニックがいりますし、解析にも時間がかかります。必要ない所までしていたらとても診察が回りません。

しかし、それでも必要と判断すればしなければならない検査なのです。

検査には費用がかかりますが、全て特殊検査であり、試薬や設備等のお金がかかりますので、いうほど儲けにはなりません。

ちなみに全て異常があった上での検査提案ですので、保険適用です。

当然、飼い主さんの予算がある話なので、事前にそれに合わせ泣く泣く検査項目を削ることもあります。

しかし、生死がかかっている緊急の状態で、どうしても外せないものもあります。

その時はまだ開業したてで慣れておらず、しばらく胸の中でしこりのようにその言葉が残りましたが、現在はそれも致し方ないなあ、と思っています。

経済的なことは、重くのしかかる問題です。

その時になって初めて気がつくのではなく、元気でいる時に備えて考えておくべきであると、それこそ啓蒙していかなくてはと思っています。

春の健康診断は、一年に一度、安価な値段で検査ができる機会です。どうか上手く利用して下さいね。

2019-03-19

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