動物病院HOME < 院長のコラム < 情報の洪水と付き合う
夏ですね。 恐ろしいほどの暑さを、毎日病院のガラス窓越しに眺めては、ふるえています。
ジャンボどうぶつ病院は、外に面したところだけでなく、待ち合い室と診察室の間もガラスドアになっているので、外の様子が本当によく見えるのですが、先日あまりの暑さの中、いつもは人の途切れることのない目の前の通りから人がいなくなったのが、一番衝撃でした。
みなさんお盆休みの真っ只中だと思います。帰省や旅行で、都内は人が少なくなりますね。
病院ではホテルでお預かりしている子達が増え、診察のない時間は病院内をお散歩しています。
時々、外からその様子を見た方が、興味深そうに院内を覗いていかれたりもします。
猫ちゃんでも散歩ができるケースもまれにあり、その場合はより目を引くようです。
動物病院を作るときに、すべて外から見えるようにガラス張りにしてほしい、と設計士さんに言ったところ、最初はまるで幽霊でも見てしまったかのような顔をされました。
実際に、それはないでしょう?と言われましたし、不可能ですよ、とも言われました。 けれどそれを曲げようと思いませんでした。
私が今まで勤めた病院はやはり一つずつ個室になっていて、中の様子や診察の様子は外から見えないような作りのところが大半でした。
たとえば猫などではケージから出した瞬間、飛び出して逃げてしまうことがありますし、そうなると捕まえるのが困難だったりするから、というのもあるでしょう。
ですが、案外、オープンスペースに出された場合、猫は逃げるどころか固まることが多く、そういった心配はあまりないのは、実際にオープンの病院に勤めるまで、私も知りませんでした。
実際診察している様子も処置の様子も、全く隠すようなこともなく、誰に見ていただいても構わないことばかりです。
確かに飼い主さんがいるほうが暴れてしまう場合もあるので、そういった時は、奥の個室で爪切りなどをさせて頂くこともあります。
けれど、大多数の子達は飼い主さんがそばで声をかけたり、撫でてあげている方が、大人しく、落ち着いて処置ができることが多いです。
実際採血も採尿も点滴の管を入れるのも、飼い主さんに声をかけていただくと、とてもスムーズです。
また、実際見えないと、なにをやっているんだろう?と不安になる、という声も何度も聞きました。それもあってガラス張りにこだわった、と言うのが大きいです。
見ていただいて困るようなことはないから、ガラスでお願いしますとキッパリ言った時の、設計士さんの顔はなんとも言えない表情でした。
「周りからの視線が気になりませんか?」
「見られたくない処置もあるでしょう?」
「病院内が丸見えですから、プライバシーがありませんよ?」
「こういう形にしたことはありませんよ」
「あまり適した形ではないと思います」
他にも諸々、意見をいただきましたが、実際この形にして、本当によかったなあと思うことが多く、心から、あの時希望を通してよかったと感じています。
実際にやってみて、この目でみて確かめる、と言うことはとても大切です。
今の世の中は、、インターネットの普及により、地球の反対側で出された論文をその日のうちに読むことができる、非常に早い情報のやり取りが、当たり前のように行われる世界になりました。
けれどその反面、吟味され、監修された、誤りのない情報のだけではなく、そこに悪意や嘘、誤解や曲解が含まれたものまで、まるでそれが本当のような顔をして、並んでいる世界にもなったのです。
なにを信じ、なにを正しいとするかは、その人本人が、どれだけ経験を積み、正しい情報を手に入れる術を、判断する価値観をきちんと持っているか、と言うことに、ゆだねられてしまいました。
これは実際情報を得る側の負担が増えた、と言うことなのですが、それを理解している人がどれだけいるでしょうか?
なにを信じ、判断しても、それが間違った知識に基づいてした判断だったとしても、責任はすべて自分で取らなければなりません。
あの人が言ったから、あそこに書いてあったから、SNSで流れてきたから。
その根拠がどこにあっても、その根拠が間違っていても、責めることはできません。
たとえば、きちんと監修された教科書のような本が、誤っていた場合、当然その責任は出版社がとります。
けれど、見も知らない相手、信用がおけるかどうか、性別も年齢もわからない相手が、誰の監修も受けずインターネットに流した情報に、責任を追及できるでしょうか?
実際に見てたしかめる、噂や曖昧な言葉に惑わされない、得た情報が本当かどうかをきちんと確かめる方法を持つ、実はこれは大学の研修医時代にある先生から教えられたことです。
大学は、正確な情報をどのように手に入れるかを学ぶところだ、そうおっしゃていました。 本当にそうだと思います。
薬や医学の知識には、噂や、曖昧な「○○かもしれない」というものは使うことができません。
根拠と証拠があり、データが開示され、万人が見てこれはそれが正しい、と判断できるものだけが必要なのです。
それを得るための方法を学ぶ、と言うのは確かに大学ならではの教育だな、と思いました。
そのことを教えてくださった当時の先生に本当に感謝しています。これは獣医としてだけでなく、一生ものの言葉になったからです。
たくさんの情報が、毎日毎分毎秒、この世の中に溢れていますが、それはすべて玉石混淆、何を信じるのかは全て自分自身次第、そう言い聞かせながら、とりあえず美味しいかき氷が食べたいなと、お店をネットで検索する日々です。
2016-08-15
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