動物病院HOME < 院長のコラム < 病院嫌いな子へのヒント
朝方には少し涼風を感じられるようになり、秋の足音が近付いているのかなあと期待していますが、昼近くになると一気に高温になり、いやまだ夏だ……とぐったりするのを繰り返しています。
それでも日毎に涼しくなるのを感じるので、次のコラムの時には秋になったと喜べているでしょうか。
今日は病院へ来るときのちょっとしたテクニックについて、お伝えします。よく、「うちの子は病院が苦手で、来るのをすごく嫌がってしまいます」とお聞きします。
猫ちゃんだと「かくれてしまってでてきません」や「大暴れしてケージに入れません」、わんちゃんだと「そこの角を曲がると、自分で歩けなくなります」「震えてしまってリードを引っ張らないときてくれません」
など、具体的に想像すると本当に大変だろうなあという、来院あるあるがありますが、実はこれに対して「うちの子は散歩の時に必ずここに寄らないと、帰らないんです」「休診日もシャッターが開くのを待ってるんです」というお話や、「ホテルに預けたら、お迎えにきたのに自分でケージに戻ってしまいました!」「来ると嬉しすぎて嬉ションしてしまいます」というわんちゃん、猫ちゃんもいらっしゃいます。
もちろん、これはその子達の性格による部分が大きいのですが、なかに病院にくると吠えたり噛んだりしていつも口輪が必須だったのに、ここの病院は大丈夫、というケースもあります。
具合の悪い時に、連れて行くのを躊躇うほど切ないこともありません。
ではどうしたらいいのでしょうか?
いくつか飼い主さん達から伺ったり、こちらからお伝えしているテクニックを書いてみますね。
これは非常に効果的で、毎日とまではいかないまでも病院への道筋を何度もたどっていると、慣れてきます。
ついでに何もしなくても病院のなかを一周して帰ってもいいですね。
何かイヤなこと、例えばワクチンなどをされるためにいくところではなく、散歩の通りすがりにいく所というカテゴリーにしてしまう方法です。
トリミングのように定期的に来る機会があると、ここは治療をする所、という認識よりも体を洗ってもらう所、というイメージになり診察台での体重測定もスムーズになる場合が多いです。
またホテルなどで預かることが多い子ほど、病院を嫌がりません。半日や一日、短い時間でもただ病院にいる、という機会があると何もされないけど、ここに来て過ごす、という認識を持ってくれるようです。
初め慣れずに排尿や排便がなかなかできなかったり、ご飯を食べない子もいますが、ご自宅で使用している食器やバスタオル、おもちゃなどを一緒に持ってきて頂き、ケージに入れておくと安心して寛げるようになる場合もあります。
当院の場合、昼休みや診療後に院内を好きに散歩してもらうことが多いので、何度か来ている子は自分が気に入った部屋に訳知り顔ではいっていくことが多いです。人気はなぜかオペ室です。サンプルがたくさんある部屋がお気に入りの子もいます。
頑張って診察を受けた後、ご褒美にちょっと特別なおやつを上げたりするのもいいですね。ワクチンなどの後にたくさん褒めながらおやつを上げると、あまりイヤなイメージで診察が終わらず、次のときもおやつくれるのかな?とちゃんとおぼえていてくれたりします。
わんちゃん達は私たちが思うよりも状況がよく分かっていますので、成功報酬的な認識も持たせることができます。
これは言葉や態度でなのですが、頑張ったことを大げさに思うほどたくさん褒めてあげて下さい。
「いいこだったね、よく頑張ったね!」などのプラスの言葉がいいですね。逆に、痛かったね、かわいそうに、などの言葉は逆効果。自分は痛くて辛い思いをしたんだ!と思わせないようにするのがこつです。
ここに入ると病院につれていかれる!ということはすぐにばれてしまいます。
なので逃げ回ったり捕まえるのに一苦労という話もよく聞きます。特別なときだけだすのではなく、むしろ普段の生活時に入れる所においておくのもテクニックです。
時々中に美味しいおやつを入れたりして、この中にはいいことがある!と思わせられると中に入るのが楽になります。
狭くて体がきゅっとタイトになっている方が、猫は安心します。暴れてしまう子は洗濯ネットにいれると、それだけでパニックを防ぐことができます。ケージのなかにそのままよりも、一枚防護壁がある方が猫は落ち着くようです。
写真の子の場合、聴覚や視覚の刺激に敏感で、ケージに入れても興奮して鳴き続けてしまうのですが、飼い主さんお手製の手袋とソックスで作った見事なマスクと帽子により、気持ちが安定して連れてくることができるようになりました。
この素敵なマスクの効果はかなりあって、私も思わず写真を撮らせて頂きました。ナイスアイデアですね!
この他タオルでくるんだり、外が見えないようなケージを使ってあげるのもよいでしょう。
実は猫の視力は悪く、近眼です。およそ35センチから75センチの範囲しか見えないらしく、ケージなどで外が見えるよりも視覚刺激を遮断する方が安心する場合もあります。
元々家猫は外が怖い生き物です。雑踏や人の気配など外は緊張することがたくさんあります。外出に慣れている散歩にでている子達は別として、基本的には外界は見えない方がいい気もします。
診察台の上でネッククリップを使う場合もあります。猫は首の後ろの皮膚にゆとりがあり、ここを母猫がぎゅっと噛んで移動します。なので痛みよりも安心感が優先されることもあり、大きな専用のクリップできゅっとつまんであげると落ち着く子も多いです。見た目がちょっとびっくりしますが、製品としてもうっています。
わんちゃんと同じで来ている数が多いほど、猫も慣れてきます。
例えば腎不全などで治療のため定期的に点滴に来ている子は、一回目よりも二回目、二回目よりも三回目、だんだんとなれて暴れたり鳴いたり怒ったりしなくなります。それはみている飼い主さんにも顕著なので、ちゃんと治療してもらってるって分かるんだねえ、とよくいわれます。
爪切りや足裏バリカンなどのケアや、ノミダニのお薬や、フィラリアのお薬を貰いがてら体重チェックをしている子達は、定期的に来ることに慣れていて、あまりパニックになったりはしません。子猫のころから毎月来ている猫ちゃん達のなかには、診察台から降りて散歩を楽しんでから、自分のケージに帰る子もいます。もちろん捕まえても逃げませんし、抱っこも嫌がりません。
パニックになったり暴れたりする子達の大半は、怖くて緊張して、慣れていない環境に怯えているのです。
逆になれてしまえばそんなに暴れたりはしません。ここはどういう所か、ということがわかれば大抵の子達は静かに診察が終わるのを待ってくれます。
具合の悪いときだけ、年一回のワクチンのと気だけ、という子の場合は、とても怖がって緊張するのが当たり前なので、マスクやケージなどに一工夫してみて下さいね。
また、明日は防災の日ですが、昨今では地震や集中豪雨、最近では北朝鮮のミサイルの発射など、いつ避難することになるのか、分からない現状があります。
人が避難生活を送るのも大変なストレスですが、動物達は事情が理解できない分さらに苦しい思いをすることになります。避難所では当然、お家のように自由に歩き回ることはできません。
「うちの子はケージとかに入れてないから!」というお話をよく伺いますが、ケージに入ったりでたりすることに慣れておかなければ、いざという時に一緒に避難できない、もしくは命を落とすことになるかもしれません。
私の先輩はキャバリアを三頭その当時かっていましたが、いつでも避難訓練をしているといっていました。
「集合!」と玄関でいったら全頭が集合するように躾けていて、すぐさま首輪とリードをつけて逃げられるようにしていたのです。また一週間分ほどの常用薬や食事もリュックサックに入れていました。
心臓の薬や発作の薬など、常用するお薬がある子は、少し余分に手元においておくのもいいでしょう。お薬がない!となっても動物病院自体が震災などではいつ復旧できるか分かりません。
自分たちが安全に避難できること、同時に動物達もいざという時にはどうしたらいいのか、ぜひ考えて頂きたいと思います。
いかがでしょうか?
ちょっとしたことですが、効果的なことも多いと思います。
病院へ連れて行くハードルを上げず、必要なときはさっと連れてこられるように、練習しておきましょう。
2017-08-31
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