連休も過ぎてぐっと気温があがる日々も増えてきましたね。夏の気配がからりとした空気の中に感じられ、季節が変わるのをかんじることができます。
先日、日差しの強い晴れた日のあと、たっぷり降った雨上がりの道路に立つと、緑の濃いむせるような瑞々しさと命の気配をたたえた香りが立ち上っていて、おや、もう夏が来たのかと驚いてしまいました。
晴天から一転、強い雨が降れば気温が急降下するため、寒暖差で調子を崩す子が増えています。
具体的にはお腹のトラブルが多いのですが、椎間板ヘルニアなど神経損傷が持病としてある子たちは、痛みがぶり返したりすることもあります。
また発作などをお薬でコントロールしている子たちも、症状がきつく出ることもあります。
夏前の体づくりの時期ですので、無理せず早めの受診を心がけましょう。
気温が高くなると悩むのはお散歩の時間帯ですね。
よく何時位までに行けば良いですか?と聞かれますが、時間帯というよりも体感温度を重視した方がこの頃は良いのでは?と思っています。
私が就職したてのもう15年以上前は、お散歩は朝7から8時くらいまでに済ませてください、夕方は6時以降に、真昼は避けてくださいね、とお話ししていた気がするのですが、今ではこれはもう当てはまりません。
初夏になれば真昼を避けるのは当然として、朝は7時でもすでに地面は暑くなりますし、空気もねっとりと熱を上げてきます。日が落ちても夜の8時ですらムッと暑く、10時を過ぎてもなおコンクリートの地面は熱を持ったままになることも多いです。
昨年の夏、あまりの運動不足に夜ご近所をウォーキングしたのですが、まるでぬるいゼリーの中を泳ぐようなとんでもない湿度と空気に、家を出ただけでおそろしいほどの汗を書きました。
まるでサウナなのかと思うような暑さに、風があってもなくてもこれは犬たちも猫たちもウサギたちも外にでちゃダメだ、と実感しました。
死が身近に迫る勢いを感じ、なんの勇気試しであえて外に行くのか…と。昨今の熱帯化は動物たちの散歩がチキンレースになりかねないのです。
ですので、最近は真夏は散歩は無理をして行く必要はありません。まずご自身が暑いなと感じたらその時間帯は避けてください。日が暮れているからいい、朝日が出ていないからいいではなく、連れて行くのであれば、地面を触って暑さを感じないレベルにまで冷えてから出かけてください。行く際には水を持ち、必要なら冷却剤なども念のため用意してください。
でも何より、本当に暑い時はお家で過ごすようにしましょう。
排泄は家の外と中のどちらでもできるといいのですが、それが難しい場合もあります。
外でしかしない場合は、速やかに排泄のみをさせ、なるべく抱き上げて帰るようにしましょう。
大型犬だとそれも難しいのですが……。
副院長のアリエルは、雨と暑さが大の苦手なので、暑ければ病院から出た瞬間にさっさと排泄を済ませ、こちらが処理をするのも待たずさっさと院内へと戻って行きます。
あまりにも鮮やかな去り方なので見ていた飼い主さんに笑われることもあります。
まるっきり後ろを振り向かず、当たり前のように先に立って院内へ戻るその姿はなんとも見事なものです。
さてそのアリエルですが先日発売された抗体医薬である痛み止めが大変よく効いてくれているようです。
今まで立ち上がるためには何度か繰り返し地面をかき、滑ってしまう四肢をうまく使って体勢を少しずつ立て直していたのですが、今はその立ち上がりが軽やかで早いこと早いこと。
耳の掃除をしようとコットンを手にかがもうとしたら、あっという間に立ち上がってスタコラサッサと逃げ出しました。
思わずあっけにとられたのですが、そう、若い頃は耳掃除が嫌で逃げ回っていたことを思い出しました。
歳を重ねてからは、ちゃんとやらせるようになったな、大人になったな、なんて思っていたのは大間違いで、単に足が痛いから起きられず逃げられなかったようです。
結論。
逃げ足が早くなりました。
薬を使っておおよそ一週間ほどで効果を目に見えて実感しました。何より立ち上がり方に変化があったのですが、自ら立ち上がって歩き回る頻度も増え、明らかに活動性が高くなっています。
今度は2回目の接種なので、その後より効果が発現することを期待しています。
今回のアリエルの逃げ足でも実感しましたが、痛みの評価というのは実際我々が思っているほど、正確ではないのかもしれません。
動物たちは元から大変辛抱強く、痛みを周りにそうと悟らせないで生活する本能があります。人よりもずっと我慢強いその性質が、実は痛みを堪えていることを隠してしまっているのです。
年齢のせいにしがちですが、高齢になった犬たちの八割、猫の五割以上が何らかの痛みを堪えていると言います。
そういえば年取ったなあなんて感じている時、それは痛い時かも?
安全性の高い抗体医薬を試すチャンスかもしれないですね。
2023-05-22
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