動物病院HOME < 院長のコラム < 隠れ脱水、隠れ腎不全に注意!
梅雨入りしてから見事にそれらしい天候が続きますね。今年の梅雨ななんだか昔懐かしいシトシト雨も多く、ゲリラ豪雨に知らずに慣れてしまった私は、ああこういうのが梅雨だよなあなんて情緒を感じてしまいました。
小学校では、約2年ぶりに本格的な水泳の授業が始まり、子供達はワクワクしているようですが、気温と水温が合わせて50度を超えないとプールには入れないらしく、週間予報の天気にかじりついています。
夏がそこまできている気配に、春先から今までの慌ただしい日々を振り返るのも、今の時期ならでは。
いつも7月までなにをしていたのかの記憶がないことが多いのですが、今年も変わらず気づけば夏、という時の流れに巻かれそうです。
さて六月に入って、気圧と寒暖差で体調を急速に崩す子が増えています。
中でも脱水を起こしている子が多く、腎臓を悪くする例も後をたちません。
見ていると飲水量がとりたてて減っていなくても、毛艶がつやつやのままでも、尿量が多くなっていなくても、血液検査でスコアが悪い、という状況です。
要するに気付きやすい特徴がないのだけれども、隠れ脱水、隠れ腎不全になっている場合があるようです。
動物たちの飲水量は外気温に影響されます。
気温が上昇すれば体温が上がりやすくなり、体温を発汗ではコントロールできない猫は、口などからの蒸散で下げるためにも水分をより多く必要とします。
ですがこの気温というのが曲者で、湿度によっても体感温度が異なりますし、実は喉が渇いているよ、体が水分を欲しているよ!という信号を出していても、飲水欲求に結びつくには時差があるものです。
今のような気温が乱降下する時期は、体が水分を必要としていることを自覚しにくいのかもしれません。
たいていの子達は静脈点滴や皮下補液、経口補水液などにより回復するのですが、高齢だったり心臓が悪いケースでは中には腎不全が悪化しそのままになってしまうこともあります
注射の針を刺して行う点滴などは基本的に病院で行うものですが、経口補水液に関してはご自宅でも使用ができ、また予防的にも用いることができます。
当院で利用しているものは非常に嗜好性が高く、何かすごく惹きつける特殊な成分が入っているんですか?と真剣に聞かれたりします。マタタビ?的な?
マタタビといえば猫が蚊を避けるためにその樹皮や葉に含まれる成分を体にこすりつけていることがわかっています。
岩手大学の研究でネコのマタタビ反応といわれるこの行動は、マタタビに含まれるマタタビラクトンといわれる複数の成分のうち、蚊の忌避活性を有するネペタラクトールを体に擦りつけているために起こることを解明されたのです。
くわえて少し前に猫が噛んだりしゃぶったりすることで、葉が傷つき、分泌されるネペタラクトールとそれ以外のマタタビラクトンが十倍に増加し、より効果的に蚊の忌避効果をたかめていることがわかりました。
蚊は世界で最も多くの生物を殺している生き物ですので、忌避効果は生物にとってはかなり大切なものなのだと思います。
すごい!天然の虫よけなんだ!と驚くとともにどういう学習によりこの行動を獲得したのか、興味はつきませんね。
猫以外にもジャガー、ピューマ、トラなどのネコ科の動物たちにも同じ行動が見られていますが、一部のネコ科には見られないこともわかっています。
これはマタタビの生育地域や、蚊の活動地域などが関係しているのかなぁと勝手に思っています。
蚊が生育するためにはある程度の気温が必要です。活発に活動するためには25度から30度、これを超えても下回っても活動自体は低下します。蚊の吸血行動は基本的にメスの産卵のためのエネルギーを得るための行為なので、活動性が下がっている地域では被害自体も少ないはずです。
蚊による被害が少なければ、マタタビ行動を取る必要性はなくなります。
また野生のマタタビが自生するのは日本列島全体と朝鮮半島、中国などアジアだそうです。割と寒いところにも生えているようですね。世界的に見るとどうなのかな。マタタビに似た効果をもつ他の植物もあるようなので、そういったものに対するマタタビ行動もあるのかもしれません。
なんてマタタビと猫に思いを巡らせていますが、今後ももっと詳しく面白い事実がわかってくるかもしれませんね。
さて話がズレましたが、猫に関してはなかなか飲水を促すことが難しいのですが、経口補水液はそのハードルをかなり下げてくれるものだと考えています。これは脱水のケースだけではなく、尿量を増やしたい尿石症や循環血液量を増やしたい腎不全の子たちにも利用できる心強いアイテムです。これからの夏本番に備えて、用意しておくのも対策の一つかもしれません。
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2022-06-17
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