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 6月も熱中症にご注意を
6月も熱中症にご注意を

さて梅雨入りした日本列島は蒸し蒸しじめじめですが、これも夏に向けての生き物の準備。 実りの秋へ向かう恵みの雨でもありますね。

最近はしとしとと、情緒たっぷりに降る雨より、 ざああっと熱帯のスコールのように激しく降る雨ばかり注目されます。

確かにゲリラ豪雨なんて言葉はこの数年で一気に認知度があがった言葉のように感じますし、 実際、命さえ危険になるような急速で量の多い雨は、この数年で急激に増えたと思います。

異常気象なのか、と始めは感じたこのような気候事象すら 数年もたてば当たり前になってしまう、人間の「慣れ」とは本当に恐ろしいものです。

初心忘れるべからず、ということわざには、この意味は含まれていないかもしれませんが、それでもかなり本質をついているように思います。

 6月に熱中症にかかる子が、けっこういます
6月に熱中症にかかる子が、けっこういます

さて、梅雨時期に増えるものといえば、 外耳炎、内股の湿疹、脂漏性皮膚炎という風にムレからくるものが多いのですが、 実は、熱中症も増えていきます。

7月、8月ともなれば、冷房をつけている場合が多いのと、熱中症への警戒も十分高まるので、 日中、日の高い時間帯のお散歩や長時間のお散歩は控えていただけるのですが、 6月くらいだと、割に暑い時間帯に外出する姿も、しばしば拝見します。

蒸し蒸ししたこの気候は、 犬の舌での体温調節機構である、蒸散を妨げます。
平たくいうと、いくらがんばって、はぁはぁと、パンティング呼吸をしても、効率よく体温が下がらないのです。

ですから、空調をつけていない家に帰ったらぐったり倒れていたとか、 車で外出していて、エアコンとエンジンを止めた隙に意識がなくなっていたとか、 お散歩の後からぐったりして、水も飲めないとか、 恐ろしいお話を良く聞きます。

卒業してすぐに勤めた千葉の病院は海がそばだったので、 良く土日になると、海までお散歩をするわんちゃんの姿を良く見ました。 勤めていた三年間で一度も海を見に行ったことはありませんでしたが、 ライフジャケットを着て飼い主さんとサーフィンを楽しんでいる子や、 砂浜を優雅にかける大型犬の写真を見せていただいたりしました。

ある、6月の日、ゴールデンレトリバーが意識不明で運ばれてきました。
海に遊びにつれてきていて、ほんのわずかの間、車に入れて飲み物を買って帰ったら、倒れていたそうです。 熱は40度を超えて、血液検査ではほぼ全ての数値が異常値でした。

来た時点で熱中症と診断されたので、すぐに冷やし始めていたのですが、 意識もどらず、呼吸も戻らず、結局なくなりました。

ほんの、30分ほどの出来事でした。

熱中症は人間でも死に至る恐ろしい病気で、 何より自分の状態に気がつかないことが恐ろしいのです。

熱中症にならないために
熱中症にならないために

1暑い時間帯の散歩は避ける

出かける前に外の地面を手で触って暑いと感じたら、時間帯が早くてもやめておいた方が良いでしょう。
アスファルトは熱をためやすく、逃がしにくいため夕方過ぎでもじんわりと暑い場合があります。

2車内ででエンジンを止めて留守番をさせない。

エンジンを切った車内は1から2分で一気に気温が上昇します。

3お家でのお留守番には適切な設定温度でのエアコンを。

犬種によっては今の時期から既に冷房をつけなくては、呼吸が苦しいこともありますので、適切な温度管理をしてください。

4留守番の際には適度な空気の流れを

しめきったりはしないこと、エアコンも直撃は好ましくありません。
クールマットなどは良いと思いますが、 サークル内に敷き詰めてしまうと冷えすぎた体を温めることができず、 下痢になってしまったチワワちゃんが以前いましたので、ご注意ください。
半分くらいに敷いて、敷いていない場所で暖もとれるようにするのが良いでしょう。

ほかにも散歩の際に首に巻く、クール材みたいなものもありますが、 毛量が多い、コーギーや柴犬、レトリバー種にはどこまできくかなぁと思っています。 スムースや被毛の薄い子には適しているかもしれません。

こんな症状にご注意を!
こんな症状にご注意を!

水分の補給は当然のことですが、 お水が飲めても熱中症にはなりますので、水分があるから大丈夫!とはなりません。

お散歩中やドックランなどで楽しく遊んだ後、下記のような症状があった場合はすぐに病院へご連絡ください。

  • ひどく よだれをを垂らす。ぐったりしてへたりこむ。
  • 舌の色が濃くなって赤黒く見える。青く見える。
  • 目が充血する。
  • 呼んでも反応がにぶい。意識が低下する。
  • ふらついて倒れてしまう。自分で立てない。
  • 悪心や嘔吐、下痢をする。

さらに悪化すると、

  • 虚脱や失神、筋肉のふるえが見られたり、さらには全身性のけいれん発作
  • 尿を漏らす
  • 吐血や下血(血便)、血尿といった出血症状

などの症状になります。

熱中症に気づいたら
熱中症に気づいたら

もし、家にいるとき、熱中症になった場合

アイスノンや氷水などでとにかく冷やすことが大切です。

お風呂や流しに水を張ってありったけの氷や冷却剤を入れ、目一杯冷やした水に全身を入れて、どんどん流水をかけます。

人用の体温計でかまいませんので、2から3センチさきを、肛門から入れて、体温を測り、40度まで体温を下げてください。 下がってから急いで、病院へ来院してください。

外出先でなった場合

すぐにお近くのどうぶつ病院に連絡をして、熱中症で来院する旨を伝えます。

車にのせるなりして、なるべく短時間で移動してください。

この際ぬれたタオルやアイスノン、氷などを体に巻き付けて、これ以上体温が上がらないようにしてください。 冷やす場所は両脇、後ろ足の付け根、腹などです。

猫の熱中症

ちなみに、猫は熱中症になりませんよね?と聞かれることがありますが、そんなことはありません。

極端な例では、病院の待合室で熱中症になっていて、診察室でぐったり40度、慌てて血液検査したら、 アシドーシス(血液が極端に酸性に傾くこと。程度によっては危険な状態)まで起こしていて、ひゃああ!ということが大学病院でありました。

猫の方が見た目に症状が出にくいというだけで、実際には熱中症を起こすことがあります。 特に、スコテッシュホールドや、エキゾチックなどの短頭種に分類される猫は、 犬と同じく熱中症になりやすいと考えていただいた方が良いと思います。

熱中症はとにかく冷やすことと、そのスピードが大切です。

まずはならないこと、なってしまったときはパニックになるのをいったんぐっとこらえて、 冷静に冷却してください。

これから夏本番、皆様も動物達も、お体に気をつけてお過ごしくださいね。

2014-06-15

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