台風が一気呵成に押し寄せる日本列島、遅い夏休みを取られる方々に取っては、本当に迷惑なお話ですよね。
気圧の変化が大きくなり、寒暖差もあり、雨も降るので、動物達にとっても厳しい季節です。
また急に寒くなるこういう時期は、発作や神経疾患がでやすい時期です。
今回は発作のお話を簡単に。
「発作とは脳(灰白質)の異常な電気的放電の結果として起こる突発性の定型的な運動性,感覚,性,行動,情動,記憶あるいは意識の変化を伴うエピソードである(Fisher R, 2002, in ILAE homepage)」とされています。
発作とされる病体の原因は、代謝性の障害による高アンモニア血症や低血糖などのほか、てんかんのような神経性のもの、不整脈などによる心臓性のものなどがあります。また発作のように見えて呼吸器の問題があったりもします。
よって発作のような症状がみられた場合、どこが原因なのかを探っていくことになります。
発作と混同されがちなのが痙攣ですが、これは発作の症状のひとつで、随意筋の病的な持続性あるいは反復性の収縮を指します。なかでも 持続性の筋収縮を強直性痙攣といい、反復性の筋収縮を間代性痙攣といいますが、言葉はあまり一般的には聞かないと思います。
次に、神経性の発作の原因の主体となる、てんかんについて簡単に書いていきます。
てんかんは「種々の病因に起因する慢性の脳疾患であり、大脳神経細胞の 過剰な発射に由来する反復性の発作(epileptic seizures)を主徴とし、変化に富んだ臨床・検査所見の表出を伴う (WHO, 2001)」とされています。
てんかんはその病因で分けると
に分けられます。
特発性てんかんは、原発性てんかんともいわれ、遺伝的素因以外には原因がみられないてんかんです。
初めて症状が起きるのが年齢依存性で大体が三歳までのかなり早い段階で起こります。MRIなどで見ても脳の器質的な異常が無く、正常な形をしています。
脳波的特徴や遺伝性病因などによって規定されますが、一般に,発作間欠期(発作と発作の間の発作がない時期) の脳波以外の臨床検査は全く正常です。
要するに発作の症状がでているとき以外は、全く異常が見られないのです。
犬に多く、猫では滅多にみられませんがいない訳ではありません。ビーグル、シェルティー、ラブラドールレトリバーなどでは遺伝的に発作を起こすことが知られています。
症候性てんかんは続発性てんかんともいわれ、てんかん発作の原因が中枢神経系の障害(器質的病変)によることが明らかなもの、またはそうであると推測されるものです。
MRIを撮影すると、脳腫瘍や脳の奇形、脳梗塞や出血、脳炎、感染などがみられ、画像上でその変化を見ることができます。よって特発性と異なり、神経学的検査で異常がでたり、発生年齢に一貫性がなく、腫瘍などが原因の場合は高齢期でみられることになります。
猫に多いとされますが、犬でももちろんみられます。
おそらく症候性(潜因性)てんかんは、症候性てんかんと考えられるけれども、原因を特定できず、一見すると特発性に見えるものを指します。
曖昧な言い方ですが、おそらく現代の医学ではその器質的原因を特定できないと考えられるものです。将来的にはその原因を見つけることができるようになるかもしれません。
またてんかんにともなう発作のおこり方によって、部分発作(焦点発作)、全般発作にも分けられます。
今回お話ししておきたいのは、ある特定の状況では発作で亡くなることがあるためです。
それはてんかん重責といわれる状態です。
てんかん重責とはてんかん発作が30分以上持続している状態、もしくは一回の発作後、完全な意識回復がみられずに次の発作が始まってしまう状態です。
もしこの状態になってしまったら、様子を見ることなくすぐさま動物病院を受診して下さい。深夜であっても関係なく、緊急病院等へいかなければなりません。
通常のてんかん発作は五分以内に収まることが多く、収まってしまえば本人はけろりとして全く異常を感じない状態になります。こういう場合は命に危険性はなく、起きた状況や時間、誘発された原因などを冷静に記録し、後日病院に提出するので十分です。
けれど重責の状態となると、治療しない時間が長くなるほど脳が損傷を受けてしまうことにより、深刻な自体が引き起こされます。
長く続く発作により、焦点領域あるいは脳全域に細胞毒性浮腫がます。細胞の中に循環しているべき水分が取り込まれるため、それを補うために脳脊髄液・脳血流量による代償がおこなわれます。
すると脳と体の間にある血液脳関門が破綻し、血管障害性浮腫により頭蓋内の圧力が高くなり、脳が頭蓋骨内から押し出され脳ヘルニアを引き起こし、死んでしまうのです。
てんかん重責は、神経症状の中でも非常に危険な状態であり、一刻を争う事態です。
初めて発作を起こした時点で、もちろん受診するべきですが、重責になってしまったら何をおいてもエマージェンシー(緊急事態)の状態と判断してください。
30分以上様子がおかしい場合、死ぬかもしれない!と意識をしてすぐに病院へ行く手はずを整えて下さい。
その際、
を用意し、病院へ向かって下さい。
発作を起こしている状態というのは非常にショックな光景です。見慣れないその状況に恐怖を覚えるのは当然です。飼い主さん自身がパニックになっていることも多いのですが、発作を起こしているそのこのために、一度冷静になって様子を説明できるようにして下さい。
一二もなく、病院を受診すべき時というのはいくつかありますが、てんかん重責はその中の一つです。
けれど遭遇する頻度が少ないために、対処を誤り命を落とすケースも後を絶ちません。
分かりやすい症状ではないからこそ、どうか頭の片隅にこういった症状があることをおいておいて下さい。
病気は突然訪れることの方が多いのです。
それは本当は突然ではなく、動物達が自分で隠してしまっているせいもあります。
ですから突然のようにみえても、前から徐々にその前兆があり、それを見過ごしていただけかもしれないのです。
そうなってから後悔をするのは本当に苦しいものです。
些細な違和感でもそれをそのままにせず、適切に対処して頂きたい。そういった症例に遭遇するたびに願ってやみません。
さて今回の一枚は、診察室で住処を見つけたさくらちゃん。
籠からでるとそっと歩いていってここに収まりました。
狭い所が好きなんですね。
可愛いくておちゃめなさくらちゃん、診察中もごろごろいって最後は寝てしまいました。
もう一枚は、手術のあとなのに診察台の上でご機嫌なスモモ君。おっとりとした大変可愛いブリティッシュショートヘアの男の子です。
採血も触診もお手の物。全く手のかからない奇跡の二匹でした。
2018-09-30
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