年の瀬も迫り、冬の準備で忙しくなりますね。
春支度、という言葉は知りませんが、冬支度、という言葉に備えをしなければならない昔からの人の営みが垣間見えるような気がします。
落ち葉が積もる道の街路樹に紅葉を見ながら、ああ、これも気の冬支度だなあ、 人は着こんで木は葉を落とすなんて、面白いなあと感じます。
さて、冬といえば、乾燥とおしっこの病気です!
これは犬も猫も関係なく!フェレットもです。
乾燥している、暖房等を使用している→肌のバリア機能が落ちる→かゆみ、細菌感染、ふけ、脂分過多→皮膚病・外耳炎
寒い→水を飲まない→尿の量が少なくなる→尿がたまっている時間が増える→細菌感染しやすくなる、尿が濃くなって結晶ができやすくなる→泌尿器疾患
等、悪循環になる場合があります。 トイレに何度も行くけれど、おしっこは出ていない、などは膀胱炎の初期症状ですので、要注意です。
また、毛をかき分けてふけが出ているようであれば、乾燥しているサインですので、 化粧水や美容液などで、 投薬の前に皮膚の状態を良化させましょう。
さて、今回は、少し昔のお話。
今の時期に来ると、毎年国家試験の勉強をしていたことを思い出します。
さらにさかのぼれば受験勉強につながるわけで、冬=勉強地獄といったところでしょうか。
国家試験の勉強は、私の時代は6年生の一年間をかけて前期で講義、後期で自主勉強といった形でした。
勿論、定期テストはあって、国家試験の範囲をひたすら勉強するのですが、 解剖、生理学、組織学、生化学、の基礎から始まって、繁殖学、病理学、外科学、内科学などの応用、家畜衛生法規や伝染病学、公衆衛生学や、衛生学、家畜疾病学、寄生虫学に魚病学など、それはもう目の回るような種類の分野になります。
こういった場合、一人でコツコツタイプ、研究室単位の十人以上の大所帯でわいわいタイプ、5人くらいの小規模グループで和気あいあいタイプ、など個人の交友関係と性格によって、試験に望む方法は異なります。
が、重要な事は情報だったりする訳で、 一人で勉強していると、その情報を取りこぼして今年の傾向とは全く異なる方向に一人突っ走っていても誰も止められない、といった場合もあります。
久々に集まってお互いの進歩を確認したら、自分だけ全く違うところをやっていて青ざめる、といった事もしばしば。 友人関係は本当に大切だと、しみじみ感じます。
小学生の時に読んだ小説に、情報がこの世を操作する、といういささか子供の読み物らしくない記述があり、今後はその傾向はもっと高まる、情報ほどの価値を持つものはない、という結びに、なるほどと納得したのですが、そんな事をぼんやり思い出したりしました。
新学期や新年度が春な関係で、多くの国家試験は2月~3月に行われます。 よって戦う相手は、膨大な獣医学という情報の塊と、乾燥とともに襲いくるインフルエンザや風邪、そして日に日に短くなる日照時間と、徐々に足りなくなる試験までの時間、次いで焦燥、諦め開き直り諸々になります。 こういった体力面と精神面での戦いの日々を、支えあうのが友人達なのです、もはやここまでくると戦友ですが。
試験は私のときは、某有名私立大学で行われ、こんな機会でもないと足を踏み入れる事もないなあと、 睡眠不足と心臓が口からでそうな異様な緊張に包まれ、もこもこに厚着したおしゃれ要素ゼロのわれわれの横を、女子力の塊のような女子大生達が奇異なものを見る目つきで見ていました。
それはそうです、なぜなら横断幕を持って応援に来てくださる大学などもあって、教授達が頑張れよ!!と親さながらに声をかけている訳ですから。
ちなみに私の大学はその辺は非常にドライなので、そのような盛り上がりはなかったように思います。
試験は二日にわたって行われるので、前日からホテルに皆で泊まり込みで、夕ご飯をここで食べたら合格するらしい!という代々の先輩からの口伝を守り食べにいったり、(ぶら下がっている牛の骨のディスプレイに、あ、大腿骨頭だ・・とか名称を呟くものが続出)夜に流れる真偽など全く分からない怪情報におもいっきり左右されたり、まあ非常にがやがやと恐ろしい試験が終わるので、 終了のベルとともに、全学生の魂が綺麗に抜け出る辺り、毎年恒例の光景でしょう。
そのまま打ち上げに出かけるもの、自宅に直帰して泥のように眠るもの、お茶でもしながら、答えあわせという苦行をはじめるもの、などなど、皆三々五々散っていく祭りの後は、結果がでる二週間後までは地獄で裁定を待つ亡者のようだというか、それはもう日々気にしないようにしてもカウントダウンを無意識にしてしまう状況です。
卒業旅行にでかけらけれるのはこの時しかないため、私たちは某スキー場へ二泊三日の旅行にでかけました。
帰った日の翌日が合格発表という、もっとも危うい精神状態の時間を、旅行のテンションでぶっ飛ばそう!という訳です。
今後卒業すれば、進む道は全く異なり、学生の時代のように夜中まで一緒に過ごす事はなくなるのでしょう。六年間毎日あっていた、そして国試という大きな戦いを共に戦い抜いた戦友達は、それぞれの将来に向かって道を分つのです。
私たちの職業の世界は狭いのですが、臨床分野に進むものと、公務員では休みの日にちが異なるので、中々会う事が難しくなるとは、先輩から聞いてはいました。
だからこれが最後の旅行だね、今後は中々簡単には会えなくなるね・・そんなセンチメンタルな気持ちは帰る間際の夜までで、帰りの電車内は明日の合格発表への気鬱で口も重くなっていました。 「このままどっかとおくにいっちゃいたいなあ」 ぽつりと呟いた言葉は、一斉に私も!という言葉をあげてくれた戦友達に救われました。
無情にも電車は東京に着き、皆大荷物と、それ以上のプレッシャーを背負って、また、明日!と儚い笑い顔を残して帰路につきました。
家に帰れば、家族の気遣いが身にしみます。 全力は尽くした、でも、それでも落っこちたらどうしたらいいのか。 皆は合格して、自分だけ一人、一年また勉強する事など、恐怖でしかありませんでした。
遠慮がちに、明日の合格発表が農水省のホームページにのる時間はいつか、と訪ねる母に、確か十時くらい・・といってもう寝ますと私室に引き上げ、そこからは何も考えずに眠りにつきました。
死ぬほど午前中スキーに興じてよかった、疲労は最高の睡眠剤です。
翌朝、目が覚めたのは十時過ぎで、家に一台しかないパソコンを慌てて開きにいった私の携帯電話に、メールが。 【合格おめでとう!】 自分が見る前にまさかの合格連絡!
急いで開けば、合格者一覧には自分の名前が記載されていました。
今は個人情報保護の目的で、受験番号しか表示されませんが、当時はフルネームで表示されましたし、翌日かなにかの朝刊にも名前がでたのです。 だから自分以外の人にも合格だと分かった訳ですが。
そこからは大学に集合して祝勝会です。
各研究室無礼講で、あっちで秘蔵のワインがあいたと聞けば、所属関係なく、おしかけさんざん飲み食いし、そうして朝を迎えました。
ああ、これで本当に獣医になったんだ、これから沢山沢山いろいろな事を経験するだろうけれど、どうかこの合格の時の使命感と初心を忘れずに、一生過ごしていきたいなあ。 朝日を見ながら思った覚えがあります。
それからあっという間に年月が過ぎ、結婚して子供ができ、開業して、あのとき朝日を見ながら合格にうち震えた私は、様々な人生のステージをへてここに立っています。
それでも、あの時に合格した事が本当に嬉しかった事は、忘れはしないと思います。
そして、一緒にあの苦しい時代を過ごした友人は、今も大切な親友達であり、未だに集まればその当時に回帰する事ができることが幸せだなあと思います。
もう少し落ち着いたら、また、皆で温泉にでも行きたいねえというと、 年取ったね、スキーじゃなくて温泉の方が魅力的だもんね、と返ってきました。
後何十年経っておばあちゃんになっても、どうかこんな風な関係でいたいなあと、色あせる事のない思い出を、この時期になると思い出すのでした。
2014-12-15
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