気温が急激に下がり、朝晩の寒さに上着を慌てて取り出した方も多いのではないでしょうか?
かと思えば妙に昼間の陽射しは強く、紫外線との戦いはなおも継続せずにいられません。
今月の初め頃までとは異なり、湿度が低くなり乾燥が強くなってきたので、フケなども悩ましい時期ですね。
また急速な季節の変化に、体がついて行かず、今週は下痢でいらっしゃる患者さん達がかなり増えています。
元気な子でしたら二日から三日で治るものが、こじれてしまって、治療をしてもなかなか治らないケースもありますので、三日以上治らないときは頑張り過ぎずに治療にいらして下さい。
さて、この時期なのに、お話ししなければならないことがあります。
ノミです!
この秋も深まった時期にノミが大量に発生しています。
もうこれは地球レベルの環境変化に伴う異常気象のせいだと思うのですが、今年は本当にノミの感染例が多く見受けられました。
犬も猫も関係なく、大量のノミに寄生されて、ご家族まで被害に遭っているケースが後を絶ちませんでした。
診察の際に分かったり、トリミングで気がついたり、飼い主さん自身が気がついていないケースもしばしば。
当然ですがノミがついていると分かれば、その度に病院中が全清掃になります。タイミングが悪く来院されていた他の飼い主様には一度病院の外へ出て頂いたり、予防が十分でない場合は急いで薬を付けたりと、本当に大変でした。
ノミダニの予防は春から始まり、ピークは、夏。
この間の予防は皆さん当然してらっしゃるのですが、今ぐらいの次期になると予防をされていない方も増えてくるのです。残念なことですが。
今回は、その隙を狙ったようにノミが大発生。
写真はトリミングに来たわんちゃんから見つけたノミの一部です。もちろん飼い主さんは気がつかれていませんでした。
ノミダニの予防薬は、大きく分けて飲み薬と皮膚につけるスポットタイプとがあります。
どちらもメリットとデメリットがありますので、飼っている環境に合わせて選んで下さい。
またフィラリアの予防と一緒になっている便利なタイプもあり、こちらで通年的に予防されている方も増えていますね。
予防が大切なのはワクチンと同じく感染したらとても厄介だからです。
またノミダニに感染した子は、周りに卵や幼虫を振りまきますので、地域を汚染してしまうことになります。
予防されていなければいつどこで散歩中などに感染するか分かりません。
うちの子は外に出さないから、と自信を持っている飼い主さんもいらっしゃるかもしれませんが、とても残念なお知らせです。
今年当院でも全く外に出ない完全箱入りの猫ちゃんが、ノミに感染する、ということがありました。
なぜでしょうか?
ノミは、感染した動物の体表で交尾をし産卵します。その卵はとてもつるつるしていて、すぐに体のうえから滑り落ち、地面や床に振りまかれるのです。
落ちた卵はすぐに孵化し、幼虫は親ノミの糞などを食べ成長し、そしてまた成虫になって動物に寄生します。
ですから卵や幼虫は散歩中に感染した動物の体からぽろぽろと溢れ、振りまかれるのです。
もちろん小さくて目に見えません。そんな卵や幼虫は風に飛ばされたり、靴の裏にくっついて自分たちがいた場所から長い距離を移動します。
飼っている猫ちゃんは、あるいはわんちゃん自身は、家の中から出ないのかもしれません。
ですが飼い主さんも家から一歩も出ないのでしょうか?
それは絶対にあり得ないですね。
私たち飼い主が、感染の元を運んでいる可能性があるという自覚を持って頂きたいと思います。
そして感染させると周りに迷惑をかけてしまう、ということもあわせて考えて欲しいと思っています。
そして予防ですが、ちょうどタイムリーに飼い主さんから驚くお話をお聞きしました。
何でも市販されているスポット薬を使って体調を崩したり、最悪死んでしまった猫ちゃんのお話を聞いたのだとか。
とても驚きました、まだ市販薬を使って予防しているつもりになっている方がいるのかと。
市販薬のノミダニのお薬は全く効きません!
これは何度もコラムでもいっていることですが、効果が乏しいものばかりですし、本当に効きません。
見た目が似ているからいいいか、と思う方がいるのが不思議でしょうがありません。
人間みたいに薬として売っているんじゃないの?という意識なのかもしれませんが、そもそも犬猫のお薬はドラッグストアで売られているでしょうか?
薬剤師さんが常駐し、薬の内容を説明して売られていますか?ペットショップや雑貨店やスーパーで売られていませんか?
薬は薬です。使い方を正しくしなければ副作用だって起きるものが、なぜ雑貨屋さんで売っていると思ってしまわれるのでしょうか?
ああいうお店で売ることができる、というのは薬としての有効性がなく逆に副作用も少なく、サプリメントに近いような効果しかないからこそ、無造作に販売されているのです。
しかし今市販されている薬の中には、皮膚に塗布することでは害は出なくても、舐めたりして口に入ると毒性を発揮するものすらあります。
例えば、近年OTCとしてロキソニンが市販されるようになりましたが、これも購入する時には薬剤師さんからの説明が義務づけられていますね。
効果の高い薬だからこそ、使い方を誤ってはいけないのでそういった販売の仕方をされているのです。
どうか勘違いしないで欲しいのですが、病院で処方される薬剤はそうしなければならない事情があります。
市販できるものはその薬と同じものではありません。どうして安いのか、値段が安いだけの事情があるんだなと想像をめぐらせていただきたいのです。
こういった薬がなぜ市販されているのか、という批判もあったようですが、飼い主さん達が「動物病院に行って予防についてきちんと話を聞き、その上で自分の大切な家族に合ったお薬を処方してもらおう」という意識を持っていないことには、問題は解決しないのではないでしょうか。
もし、多くの飼い主さんが予防薬とはいえお薬はお薬、ちゃんと病院で出してもらわなければ、と思っているのであればそんなお薬は売れませんから商売にならないでしょう。
けれど、現在、イギリスやアメリカに比べ、日本の飼い主さん達は「安いから買おう」「動物病院へ行くのが面倒だから市販薬でいいや」と考える方が多いようです。
ですからそこにつけ込む製品が出てきます。それは明らかに飼い主さんをあなどった商売戦略だと思います。
日本のペット業界が駄目だ!というのは簡単です。
でも、なぜ駄目なままなのか、ほんの少しでも、立ち止まって考えていただけたらと思います。
・法で定められた狂犬病ワクチンすら国内にないからという理由で打たない。
・家から出さない猫だからという理由で混合ワクチンを打たない。
・フィラリアの予防やノミダニの予防もしない。
・外に出してはいけないと言われても、かわいそうだからという感情論で外に猫を出し、糞害などの問題からは目を背ける。
・避妊や去勢をしなければ病気になりますよ、といわれてもかわいそうだからとせずに、結局病気にして死なせてしまう。
・病気の予防や知識を知らずに誤った飼い方をして病気にし、保険に入ることもなく治療費が高いからといって治療もしない。
・経済的に余裕がなくてもかわいいからとその場の気持ちで飼育を決め、結局飼いきれずに手放す。
残念ながらこういったことは全く珍しくないのです。
動物病院へ来て相談して頂ける方は、正しい情報を受け取る機会があるのですからまだ良いのです。でも病院にすら来ない方がどれだけいるでしょうか?
考えるだけで苦しくなるほど、残念な状況は続いています。
それでも少しずつ、正しい知識を身につけ、きちんと予防をし、適正な食事管理をし、飼育をしている方が増えてきたおかげで、犬も猫も平均寿命が伸びてきているのです。
まわりの人がそうだから、ネットで見たから、ではなく、どうしたらいいのか、どういう行動が動物達の幸福に繋がるのか、全ての飼い主さんに今一度考えていただけたらと願っています。
飼い主さんたちにはどうか、聞き触りのいい、自分にとって都合のいい情報だけを鵜呑みにするのではなく、本当に必要な考え方や行動が何かを自ら考える姿勢でいて欲しい、そういう飼い主さんたちをサポートできる病院でありたいと思っています。
2018-10-31
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