動物病院HOME < 院長のコラム < 正しい点眼をご存じですか?
梅雨入りしてから、雨と暑さのダブルパンチな日々が続いていますね。
今日は暑くて、明日は寒い。 今日はジメジメ、明日はかんかん。 この寒暖の差は人間にも、動物にもきついようで、 このところ、食欲不振や何となく元気がない、といった主訴で、病院にいらっしゃるこたちが多いです。
また飼い主様が体調を崩されていることもしばしば。 動物たちは、家族である飼い主様の具合を敏感に感じ取りますから、そんな時はつられてなんだか元気が無かったり、いつもと違う様子だったりすることもあります。
獣医師としてのお願いにしたら、少し変なことかもしれませんが、 飼い主様ご本人が元気でないと、動物たちは健やかで幸せにはなれません。
どうか、ご自身の体調も注意して、この夏前のきつい時期を乗り越えてほしいと思っています。
先日ちょっと気になることがありましたので、今回はそれを取り上げたいと思います。
みなさんは、点眼をされますか?
実は動物たちも人間と同じように点眼を必要とすることがあります。
寧ろ、彼らは自分の目を傷つけてしまうことが、多々あるのでその機会は多いと思われます。
では正しい点眼をご存知ですか?
目は血管分布が少なくお薬を飲むことではなかなか有効な成分が届きにくいところです。
ですから目に直接触れる点眼をするわけですが、点眼に用いる液体は、通常、さしてから五分くらいしかとどまりません。
涙が流れているため、自浄作用で流されてしまうのです。
ですから、緑内障の点眼薬のように、回数の指定があるものはのぞき、 一般的に使用する抗生剤や消炎剤の液体点眼薬は、かなり頻回に点眼しないとならなくなります。 何種類かの点眼薬を併用する際に、「間を五分あけてください、」とお願いするのはこのためです。
先日、初めて来院されたわんちゃんで、目を酷く傷つけ、治療をしていたのだけれど、よくならない、ということでいらした方がいました。
かなり沢山の黄色い目やにが、目を覆っていて、周りの毛も束になって固まり、目に入っています。
角膜は穿孔(穴があいてしまうこと)し、目の中が膿んでいる状態。 これはあまりいいことではありません。
点眼を嫌がってしまうワンちゃんも多いので、それでかな?と思っていたら、とてもおとなしくて目の洗浄も協力的。
お使いになっていた抗生剤の目薬も、消炎剤の目薬も、一般的に用いるものです。
はて?なぜこんなにひどくなってしまったのでしょう?
点眼の様子を教えていただくと、原因が分かってきました。
まず、点眼に際しては目を覆っている目やにをきれいに水を含ませたコットンなどでふやかして取り除かなければなりません。目やには菌の塊ですから、目やにの上から点眼しても全く意味がないのです。
また、点眼瓶は無菌状態のものですが、液体が流れ出る先を、瞳に触れさせてしまったり、周囲の毛に触れさせてしまうと、これは汚染されたことになって、
点眼液の中が菌だらけの菌液状態になることもあるのです。
菌が繁殖した液を目にさすというのは、考えただけでも恐ろしいことです。
そして、一日で点眼する回数。私は状況によって、多いと、一日6から8回は使ってくださいとお願いします。
定期的が理想ですが、難しければ頻繁にさす意識を持ってくださいとお願いします。
また開封した点眼液は基本二週間から長くて一か月程度でしょうか? 正直なところ、頻回の点眼をお願いしている場合、そんなに長くは持たないはずなのですが、 二か月以上前の点眼薬をお持ちになるケースを見かけることもあります。
事の重大さにもかかわらず、悪気なくついやってしまいがちだと思いますが、これらは非常に大事なことなので、どうかしっかり守っていただくようお願いしたいと思います。
また、特殊な血清点眼というものがあります。 これは角膜を酷く傷つけてしまった場合、自分の血液から作った自己修復作用の成分が豊富に入った点眼液です。
自分の血液で作りますから、何よりも早く良く効く非常に有効な点眼液ですが、取り扱いがとても大切なのです。 防腐剤なんて入っていませんから、使えるのはたったの三日間。 保存は冷蔵庫、常温はもってのほかです。
また一回に何本かまとめて作成しますが、すぐに使用しないものは冷凍庫で保存し、凍結管理します。 これは中にたくさん含まれた傷を治す成分が死んでしまわないように、なるべく眠らせた状態で保管するのです。
結構厄介で、お忙しい日常ではともすればわからなくなってしまうので、 ジャンボどうぶつ病院では、血清点眼をお出しする場合、病院でストックの血清点眼を管理させていただくこともあります。 希望される場合はお気軽にご相談ください。
今回の場合、非常にひどい感染があり、目やにも尋常でない量だったので、しばらくの間は毎日来院して目の洗浄に通っていただくことになりました。
目はひとたび感染を起こしてしまうと、2日で角膜が穿孔(穴があいてしまうこと)し、取り返しのつかない状況になることがあります。 軽い傷だから、と決して油断しないでくださいね。失明や、さらに眼球を摘出しなければならなくなる可能性もあるのです。
実は、知らなかった正しい点眼、といった文言(どこの局のテレビでしたっけ?)が頭をよぎりますが、みなさんの点眼は正しくできているでしょうか?
今回のお話を読んで、あら?そうなの?と思っていただけたら、きっと目にとって良い状態になる第一歩かもしれません。
点耳もそうですが、非常に基本的な操作がきちんとできていないと、なかなか良くならない、ということは実はたくさんあります。
綿棒を使った耳の掃除はよくない、とか、ちゃんと浸透時間を15分以上待たなければ効果がないシャンプーだとか、そういったごくごく基本だからこそ大切なことを、もう一度振り返っていただけるといいな、と思いこの記事を書きました。
なぜか、あまり簡単なことを質問すると獣医師に怒られるのでは?と思われている方がいらっしゃるのですが、ジャンボどうぶつ病院はむしろこういう基本的なことを、丁寧に説明したいと思っています。
ですから、目薬のほか、飲み薬や塗り薬の使い方など「こんな簡単なこと聞いちゃっていいのかしら?」なんて考えずに、ぜひどんどん聞いてください。 質問していただくのを、病院でお待ちしています。
2014-06-30
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