動物病院HOME < 院長のコラム < 食べることは生きること
学生服の衣替えも済んで、秋風もすっかり街の情景に溶け込むようになりました。
それでもなぜか30度近くになる陽気に、これが地球温暖化の影響なのかと少し遠い気持ちになります。
私が子供の頃から対策についての議論や政策は活発にやり取りされていたと思うのですが、それが実を結ぶにはまだまだかかるのでしょう。
エコ活動自体は昔よりも遥かに様々な所で多くの人々の考え方に根付いたとも思うのですが、難しいものですね。
早急な結果を求めてはいけないことだとは重々に承知しつつも、はてさてこの先、その対策が温暖化のスピードに間に合うのかなという不安もこみ上げてきます。
でもできることは自分の中で少し高額でもサスティナブルな商品を購入することだったり、なるべく地産地消を心がけたり、フードロスが少ないように無駄な食べ物を買わず、食べ残さないようにすることのような、とても小さなことなのですが、ちりも積もればなんとやら、こつこつと諦めずに続けていきたいなあと思います。
さて、全く関係のないお話ですが、紅茶のゼリーを作ることにはまっています。
紅茶が好きなのでやたらめったらティーバッグやら茶葉やらを買い込むのですが、毎日消費していてもだんだんと香りが飛んでしまうこともしばしば。
もったいないので捨てることもしていないかったのですが、先日大型のタッパー容器でつくる紅茶ゼリーの話をきき、やってみるとこれがなかなか楽しいし美味しい。
大型タッパに粉ゼラチンと甘味料のラカントをざあっといれて、濃いめに抽出した紅茶を注いで溶かし、一晩冷蔵庫で固めるだけ。
短時間でできて、材料も少なく、失敗もしないので不器用な私でも手軽にできる。ついでに全ての行程がタッパーの中なので、洗い物も少ないのがなおいい。
翌朝の冷蔵庫をのぞけば、プルンとかたまった琥珀色のゼリー、これを大きめのスプーンですくってグラスにたっぷりと入れ、その上からよく冷えた牛乳を注ぐと、見た目もなんとも華やかな紅茶ゼリーミルクに。
桃の季節はこれに切った桃を乗せて、上からマスカルポーネチーズをトッピングし、アールグレイの紅茶の茶葉を引いた粉をかけて、なんちゃってパフェにしていました。
ちなみにあまりマッチしない味ですが、見た目だけ綺麗でパフェを食べた気分にさせてくれます。
お茶にいくのすらはばかられた自粛期間中の無聊を慰めるためでしたが、なかなか作ってみると楽しいもので、ゼラチンの量を調整して柔らかさを変えてみたり、茶葉にフレーバーのついたものをつかったり、濃さを変えたりして至高の紅茶ゼリーを探求しました。
チェリーを入れたら綺麗なのでは!という思いつきで入れたところ、酸味と甘みが全くあわずについでに色も濁り大失敗だったのもいい思い出です。
いまでは計算せずとも好みの紅茶ゼリーが作れるようになりました。
仕事終わり、疲れ果てた精神はやたらに尖り、何もしたくないと大声で脳細胞全体が合唱しているような、ひりついた気分。
口にいれるものすら味が薄くて、何を食べたいのか分からなくて、何でも口に運ぶけれど胃を痛めるばかりで満足感はどこかに消えてしまっていて。
今日のあの子は大丈夫だろうか、いつものあの子は落ち着いているだろうか、誰も何も起きない夜を過ごすことができるんだろうか。
目を閉じればそんなことばかりが頭の中を埋め尽くして、目が覚めて眠りたいのに眠りが遠い、そんな夜に。
湯沸かし器のスイッチを入れ、お湯の沸く音を聞きながら好きな茶葉をブレンドして、ティーポットにはかりとり、粉ゼラチンのビニール袋にはさみを入れて中身を透明なタッパにざらざらと入れ、大さじでラカントをはかって白い山を作る。
湯気の上がるお湯をポットに注ぎ、濃いめにだした琥珀色の紅茶を白い山に向かって静かに注ぐと、あっという間に解けてゼラチン独特の香りに紅茶の芳しい匂いが入り交じる。スプーンでぐるぐるとかき混ぜて粉を溶かし切ったら、しばらくそのまま放置して、あら熱がとれたら蓋をして冷蔵庫へ。
これでおしまい、明日にはあのすっきりして香りのいい紅茶のゼリーが、食べきれないほど出来上がっている。
誰に遠慮することもなくめいっぱい食べても大丈夫、糖質に配慮されたヘルシーなゼリー、しかもたくさんたくさん。あのゼリーをすくい取った断面はきらきらと反射して、宝石のようにすら見える。罪を感じなくても食べていい、素敵なおやつ。
冷えた牛乳の準備は万全、お気に入りのあのグラスに入れようか、それとも花柄のマグに入れようか。
そう考えるだけでなんとなくわくわくして、誰もいない台所をあとにすることができるのです。
ベッドに戻ろう、取りあえず眠ろう、そうして明日の朝一番であのゼリーを一杯食べよう。
そうしたらきっと、必ずきっと、明日一日もまた頑張れる。
そう言い聞かせて枕に頭を埋めると、微かに自分から紅茶の香りがする。そんなことを考えていると肉体の限界が来てようやく眠れるようになるのです。
おいしい食べ物は、それを食べた先の幸福を想像するだけで人の生活を豊かにしてくれるものだと思います。
特別な日にこっそり食べる少しお高いクッキー、お誕生日にこっそり注文されているお気に入りのお店のケーキ、お祝いの席に背伸びをする気持ちで食べた懐石、年越しのおそば、一年お疲れさまのふぐ鍋、夏の日のお肉いっぱいのバーベキュー、お盆のお墓参りのあとによる和菓子屋さんのところてん、元気を出したいときにいくやたらに美味しい焼き肉、記念日にいく老舗のほっぺが落ちそうなうなぎ、仕事のお疲れさまをしたい時の豪快な釜焼きピザ、遠出した時にサービスエリアで食べるご当地ソフトクリーム、買い食いするのが楽しい肉まんと焼きぐり、女子会専用のホテルのアフタヌーンティー、仕事の合間にランチで食べるローストビーフ、遠足で食べる唐揚げとおにぎり、運動会のお弁当に入っている素麺、合宿で食べた肉のはいっていないカレー、差し入れで頂いたチャプチェや手作りのマフィンにシュトーレン、今までありがとうございますとわたされた可愛らしいクッキー、これからよろしくお願いしますとわたされたエネルギー飲料。
人は生まれてからずっと、食べることの記憶にあふれていて、そこにリンクした思い出を食べるたびにとりだしてみることができます。
ああ、あのときはこうやって、これをたべたな、となりにいたのは誰で、そう、こんな話しをしたんだった。
味覚からもたらされる鮮明な気持ち、視覚から得る記憶の光景、嗅覚から想起されるあの日の時間と温度。
食べることは生きること、それはこういった記憶を編みながらこの人生を生きていくということなのだと思います。
だからこそ、食は大切で、こだわってしかるべきことなのだと思います。
動物達においてもおなじことで、だからこそ飼い主さん達が悩まれることも多いです。
特定の食事を食べなければならなかったりすることは、病気によってままあるのですが、それを「本当にこれでいいんだろうか」と気にやまれるケースもよく見ます。
そういった時は是非一人で悩まれずに、疑問や不安を相談して下さい。
量や種類だけでなく、どうやってあげていくことがベストなのかを一緒に考えていきましょう。
食べ物は一生のこと、気を長く、あまり難しく考え過ぎず、大きな視野でみていく必要があります。
その助力になりたいと思います。
2021-10-15
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