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カリフラワーとハエトリソウ
カリフラワーとハエトリソウ

梅雨入りをしてから圧倒的に外耳炎が増えた今日この頃、皆さんはいかがお過ごしですか。

今の季節、日本で暮らす場合はもう外耳炎とは切っても切れない関係になりますので、やたらに頭や耳を振ったり、足で気にしたり、触られた時に鳴いたりする症状が見られたら、諦めて腹をくくり速やかに来院されてください。

かつてのように毎日使用しなければならない点耳薬でなく、一度つければ最長1ヶ月まで効果を持つ長期作用型のものが出ています。

私が就職した時のように、押さえつけて痛い耳を無理に洗ったりしなくても、お薬を使えばすぐに痛みが取れ、本人が楽になれます。

耳は苦手なの、とおっしゃる方も多いのですが、今は嫌がる暇もなく治療ができることもありますので、我慢しないでいらしてくださいね。

hr

さて話は変わって、先日帰宅するとリビングのテーブル上に小さな鉢植えがのっていました。

あれ、こんなのあったかな?

近づくと見覚えのあるフォルム。

唇のようにパックリと開いた緑の葉、先っちょには歯を思わせるトゲトゲ、あれこれはもしや…

そっと唇型の葉のはしを触ってみると、見る間にパチンと葉が閉じて小さな檻を作りました。

そう!ハエトリソウです!!花言葉は嘘と魔性の愛!!

「おお!」

思わずあげる歓声。いくつもある唇のところを順番につっつくと、思ったよりスローな速度で葉が閉じてあちこちに檻を作ります。

「やたらに可愛いな」

動きがある植物というだけでいとしさが爆増、生き物感が一気にこちらの心を鷲掴みにします。

じっと見入っていると、おそらく誘引物質に惹かれたのか、小さなコバエが自ら檻の中に入って行きました。

「おおお!」

感動、ちゃんとトラップに虫が!これはしばらく閉じたままになって、消化吸収していくのか。

どのくらいでこのコバエは吸収されるんだ、君の消化速度はどのくらいなんだ!思わずスマホで検索を始める私。

実はこのコバエ、旦那さんが趣味で育てているヒラタクワガタたちの土によってくるもので、毎回今頃から盛夏にかけて仁義なきコバエ戦争が我が家で勃発するのですが。これは!もしかしてハエトリソウは救世主になるのでは!?

隔離しているカブトムシクワガタルームに置いておけば彼は虫を食べ放題ってことになるのでは!!なにそれとってもエコじゃん!これぞ弱肉強食、自然の摂理、これであちこちにコバエトラップを置かなくとも、虫かごに洗濯ネットを被せたりしなくとも!速やかにハエトリ草が始末してくれる!ベリーナチュラル!一気にテンションが上がりかつてケニアに新婚旅行に行った時にタンザニア出身のホテルのショップのお姉さんが、生き方について語ってくれた時の口癖を思い出す。

ドキドキしながら今後のコバエ大戦争での勝利を確信しながら、コバエが入ったハエトリソウを見つめていると。

なんと閉じた檻の隙間からコバエがしれっと出てきたではないですか!!

「え、ええ〜ー!?」

おま、お前、中は粘着物質みたいなのが出てて、入ってきたらすぐにくっつくんじゃなかったか?

そういえば、閉じた隙間がやたらに広いな、トゲトゲがなんか噛み合ってないな、って思ったけども!いやもっとしっかり閉じたらいいんじゃないか!

私の動揺をよそに、コバエは新世界へと軽やかに旅立って行きました。

見送る私、閉じたまま獲物に逃げられたハエトリソウ。

シュールもいい光景。

hr

夕ご飯の時の話です。

冷蔵庫から先日買った黄色いカリフラワーを取り出しました。ビニール袋がかかったそれは、ちょっと珍しい色合いが目を引いて手に取ったもの。

余談ですがカリフラワーって素揚げにして塩をかけて食べると無限に食べられますよね。大人になってからカリフラワーとブロッコリーの素揚げの美味しさにハマった新参者ですが、今まで蒸して食べていたのはなんだったのかと思うほど美味しいです。

二種のハーフであるロマネスコも同じく美味しいのですが、あれを綺麗ととるかグロテスクと取るかは集合体恐怖症などにも関わる気がしています。

話は戻って黄色のカリフラワー、ビニールから出した瞬間に違和感。

何やら黒い粒がいくつかついているのです。

変色じゃなく、菱形のようなとても小さなそれでいて形の揃った、黒い何か。

背筋に戦慄が走りました。

見覚えがあります。

いつかブロッコリーを買った時、同じように黒い何かがついていたのですが、汚れかな〜なんて軽く考え、水洗いするために傘の部分を何気なくひっくり返して覗き込んだところ、でっぷり太ったナメクジが三匹も張り付いていたのです。黒い汚れだと思ったそれは、虫の糞だったのでした。

「!!!!」

あまりのことに声も出せず、大変申し訳ないと思いつつそのままビニール袋に戻し、ゴミ箱に旅立っていただきました。

蘇る記憶、強い既視感、あれだ、ここにはアレがいる!!

丸ごと捨てようと思ったものの、待てよ、ここにアレがいるのであれば、ハエトリソウのご飯になるのでは!?

昼間に小蝿に逃げられたハエトリソウは食事を取ってはいません。

しかし、このカリフラワーにいるであろうアレは、糞のサイズ的にとても小さいと考えられる。

うまく見つけ出せば、ハエトリソウの初めての食事が見られるかもしれません。

ちなみに消化するには一週間から十日ほどかかるそうです。

拳を握り固め、覚悟を決めます。

やらねばならぬ、先ほどしくじった彼の餌を取るために!

意を決してカリフラワーの解体を進めると、二匹の蛾が亡くなられていました。羽化している…遅すぎたようだ。蛾は大きすぎてミニマムサイズのハエトリソウには難敵です。

もしかして餌の捕獲は失敗やもしれぬ。

しかし諦められずに探していたら!

いたんです!爪の先ほどの鮮やかな青虫が!まるまって死んだふりをしている!

これならばサイズはピッタリ、問題はこれをどうやってハエトリソウに運ぶか…

結論は早く、カリフラワーに載せたままハエトリソウのそばに持って行きます。

母のただならぬ気合いに息子と旦那さんも息を呑んでそばに待機。

息子がつま楊枝で葉の中に落とそうとすると、なんと芋虫が危機を察知して飛び上がったではないですか!

「〜〜〜!!」

植木鉢の中で逃げ惑う芋虫の姿に三人分の悲鳴が口の中で噛み殺され、最終的に無言の攻防ののち、旦那さんが芋虫を無事にハエトリソウの口の中にいれ、葉がきちんと閉じるところまでを確認しました。

「や、やった!」

大仕事を成し遂げた気持ちで汗を拭います。

これで彼は初めてのエサ、しかもかなりの大物を捕食し元気がより出てくれることでしょう。

ニコニコしながら食事をとり、しばらくして様子を見に行くと。

「えええ?!」

なんと、またあの閉じた口のすきまから、元気百倍な芋虫がこんにちは!と言わんばかりに捩り出ているではないですか!うちのハエトリソウ、どうやらしっかりと口が閉じられないタイプらしい。

芋虫はその間にも決死の覚悟で体を外へと押し出しています。しばしよじよじした挙句、ポトリと脱出に成功。その姿は先ほどの小蠅に重なります。いや君を逃すわけにはいかない。結局再び捕獲しましたが、ハエトリソウの実力ではこの生きのいい芋虫を食べることはできない、ひいてはまた脱出され、この家に青虫が放たれるリスクを鑑み、人為的にお外に出させていただきました。

「もしかして、割とポンコツなハエトリソウなのかな…」

彼の活躍に期待しすぎていたかもしれません。しかしまだ小さな株ですし、今後の成長と共に万力の如く葉を閉じるようになるやもしれません。

私も彼についてもう少し知識をつけなければ。

とりあえず水はたっぷりあげて成長を見守ることにしました。

夜の間にカブトムシ部屋に入れておく夢はまだ胸に秘めています。

ちなみになんで彼を買ってきたのか、購入者の旦那さんに聞いたところ、「君が花が欲しいのかなと思ったから!」という明快な答えが返ってきました。

なんでわざわざハエトリソウにしたのか膝を詰めて聞いてみたいです。

2023-07-07

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