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動物愛護の法改正
動物愛護の法改正

始まったら一気に加速する新年ですが、既に一ヶ月が経過しました。

時間の感覚は絶対時間ではなく相対時間なのだそうです。よって時の流れの速度を可視化できるとしたら、その人その人で確かに早さが異なるはずです。

子供ならば1日が長く、年を重ねるごとに早く。

もしそれができるなら一体、どのようにみえるのかしら?とぼんやりと考えることがあります。

体の周りを取りまく空気の色や触れる感触が異なるのでしょうか。

もし動物達の時間をみることが出来たとしたら、それは私たちのどんな年の人よりも早く、凄まじい速度で流れていることでしょう。

人である身でみればおそらく恐怖を感じるほどの。

どれだけ長く共にいたいと願っても、二十年足らずがお互いに共有することができる時間です。

多くの人たちが尽力し、飼い主さん達の意識が高まり、獣医医療が進歩し、それでもまだたったそれだけの時間しか共有できません。

これからもその努力は積み重ねられていきます。

獣医療の研究を、正しい知識を飼い主さん達に伝える努力を、公衆衛生としての国の取り組みを、躾や愛護についての法的取り組みを。

毎日ほんの少しでも動物達が人とともに生きていきやすくするために、多くの人が多方面から協力することが大切です。

動物に関わる全ての人たちが、少しずつ意識と努力を持ち寄ってよりよく変えていけたらいいなとおもいます。

動物虐待の通報が義務化されます
動物虐待の通報が義務化されます

さて、今回はそんな取り組みの中で、法的な整備が一つ進みましたのでご連絡いたします。

2022年6月1日より、動物の愛護および管理に関する法律が施行されます。

いくつか改正点があります。関係性が深い所を上げますね。

(1)獣医師による虐待の通報の義務化 ※努力義務から義務へと変更されました

みだりに殺された、傷つけられた、虐待されたと思われる動物を発見した際に、遅延なく都道府県等に通報すること

第41条の2
獣医師はその業務を行うにあたり、みだりに殺されたと思われる動物の死体またはみだりに傷つけられ、もしくは虐待を受けたと思われる動物を発見したときは、遅延なく、都道府県知事、その他関係機関に通報しなければならない。

これは以前まで努力義務でしたが、完全な義務となりました。

『遅延なく』、かつ『しなければならない』というかなり強い言葉に置き換わったことにより、通報を躊躇わず行うことを指示しています。

(2)動物虐待の例示の削除 ※虐待の具体的な例示が削除されました

積極的(意図的虐待) ※やってはいけない行為を行う、行わせる
・殴る、蹴る、熱湯をかける、暴力を加える、酷使することなど
・身体に外傷が生じる行為だけでなく、心理的抑圧、恐怖を与える行為も含む
ネグレクト ※やらなければならな行為をやらない
・健康管理をしないで放置
・病気を放置
・世話をしないで放置など

読んでいて非常に不快になる文言です。

該当する具体的なケースについて
該当する具体的なケースについて

もっと具体的にいえば、
●多頭飼育による飼育崩壊
●炎上を見込んだ虐待動画の投稿

また実際にしている様子はみえなくとも、それが示唆されるような状況、たとえば
●犬が餌を与えられず外につながれたままどんどんやせ細っていく
●尋常ではない鳴き声が家の中から聞こえ続ける
●切断した体の一部を画像などで投稿する
なども入ることでしょう。

同じ人間がすることとは到底思えない下劣な行為ですが、一定数の症例があったからこその規制だと思うと胸が苦しくなります。

個人的には、掃除機のパイプでチワワを殴りつけ結膜下出血を起こした例、チワワを素手で殴りつけ両眼ともに失明したケース、チワワに煙草のホグチを押し当て、いわゆる根性焼きを複数長期間与えた例、ラブラドールを家の外に綱で結びそのまま夜逃げした飼育放棄、ダックスを階段の下へ投げ落とし殺害したケース、元々内飼いだったシュナウザーを外に放置し、背中の皮膚にウジが湧いて皮膚炎を起こさせたケース、チワワに食欲不振が長期間続いて明らかに病的であったにも拘らず、治療をせずに放置し死後硬直が始まってから「死んでますか?」と来院したケース、ダックスに適切な食事を与えず痩せこけた状態で来院、「こんな犬、飼いたくなかったのよ、くそ犬!」などの暴言で大騒ぎをし、ケージでもないボストンバッグに詰めてジッパーを完全に閉め呼吸不全を起こさせたケース、などの経験があります。

これら全て法的規制がかかる前でしたが、法的な整備が行われたので、今後は積極的に通報するべき症例だと思っています。義務化されたことでこういった今まではこちらが動くのが難しかったケースで解決の糸口を得ることは、動物たちにとって大変よいことではないかと思います。

法を犯した場合の罰則について
法を犯した場合の罰則について

 またこういった虐待に対しての罰則も強化されました。

第44条第1項
愛護動物をみだりに殺し、または傷つけた者は、五年以下の懲役、または五百万円以下の罰金に処する。

第44条第2項
愛護動物に対し、みだりにその身体に外傷が生じる恐れの在る暴行を加え、またはその恐れの在る行為をさせること、みだりに、給餌もしくは給水をやめ、酷使し、その健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束し、または飼育密度が著しく適正を欠いた状態で愛護動物を飼育しもしくは保管することにより、衰弱させること、自己の飼養し、または保管する愛護動物であって疾病にかかり、または負傷したものの適切な保護をおこなわないこと、排泄物の堆積した施設または愛護動物の死体が放置された施設であって自己の管理するものにおいて飼養し、または保管すること、その他の虐待を行ったものは、1年以下の懲役または、100万円以下の罰金に処する。

44条第3項
愛護動物を遺棄したものは、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処する。

殺し傷つけた場合の懲役の長さが二年から五年へ延長され、罰金も200万から500万へと増額されたのに加え、虐待、遺棄に1年以下の懲役刑が加算されました。よって罰金が払えない場合は懲役刑で償うことになります。

この他に、2020年からマイクロチップ装着等の義務化も始まります。 6月19日の交付から三年以内に施行されますので、詳細はかかりつけの動物病院にお問い合わせ下さいね。

法律整備は粛々と進み、動物を取りまく環境も大きく変化していくことでしょう。 二次情報も良いのですが、真正度を見極め、しかるべき機関から発表された正しい情報を元に、今後も動物との良い関係を続けていきたいですね。

2020-01-31

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