梅雨入りの発表もあり、季節がまたひとコマ進んだ気配があります。
満開のバラが線路の両脇を彩る片隅で、アジサイの蕾も膨らみ始めていて、随分昔に六月の鎌倉を訪ねたことを思い出しました。
恐ろしいほど渋滞する市内を避け、少し離れたところに車を止めたせいで、アジサイが有名な神社や仏閣を巡るのには随分と歩くことになりました。
ベビーカーに乗せて歩くには道幅が狭く人の迷惑にもなることから、折りたたんだ重いそれと、それ以上に重い息子とを抱いて急な階段やら石畳やらを歩いて回りました。
あの時、人ごみにもつかれ大変でぐったりしたことばかりのはずなのに、思い返すのは、少し天気が悪くて空を覆った灰色の雲と、しっとりと水分を含んだ梅雨の空気、手のひらが温かかった子供と、時折降る雨に傾けたビニール傘ごしの街並み。
人の記憶は不思議なもので、見たこと、覚えていたいこと、こうであったらいいなと思ったこと、嫌だったことなどが種々様々に過去に色付けをして、あたかもそれが事実だったかのように思わせるのでしょう。記憶は匂いにひも付けされるという説もあるので、あの日の雨の香りがそういう記憶を呼び起こすのかも知れませんね。
今の用に外出がままならないと、余計に過去を思いだすものです。そういった振り返る時間が人には必要なのではないかな、とも思います。雨音をBGMにして思いを巡らせるのも良い季節です。
さて、荒川区でもコロナウイルスのワクチンの接種がようやく少しずつ進んできたようですが、ワクチンは打ってすぐに効くものではないので、打ったからといってむやみに出歩くなど無謀な活動は控えましょう。
これは動物たちが打つ混合ワクチンや狂犬病ワクチンでも同じことです。
よくホテルに宿泊する予定があるのでワクチンを打った証明書が欲しい、とワクチンを打ちにいらっしゃる方がいるのですが、ワクチンはその日に打つことができても、抗体ができるまでには二週間以上必要です。ですからせめてお出かけになる予定の二週間以上前に接種をすませてください。
『証明書が必要だから』ではなく『感染リスクの高い所に行く、または多くの人と接するため万が一噛んでしまったことまで考えて』ワクチンを打つのだと認識して頂きたいなと思います。
現在、犬では混合ワクチンと狂犬病ワクチンを基本的に年に一回づつ、猫では混合ワクチンを年に一回、接種することが推奨されています。
これは生まれてから最期の時を迎えるまで、毎年必ず必要です。
生まれた年に打つことを知っていても、その後の接種が必要なことをご存じない方も多いので、今一度お知らせしたいと思います。
もし生まれたとき以来打っていない!とお気づきになって、え、でも何からいつ打てばいいの?と思われたかたは、かかりつけの動物病院に相談に行きましょう。
お話は変わって、動物たちにも緑内障があることはご存知でしょうか?
緑内障というのは、眼球のなかをみたす眼房水が何らかの理由で過剰にたまり、眼圧が上昇する目の病気です。
眼圧の正常値は、犬では10〜20mmHg程度、猫では15〜25mmHgです。
ですが、検診でみる犬では大抵の子は眼圧が23を超えることはあまりありません。この辺りを超える場合は少しグレー、25以上は確定、と思っています。シニアになると緑内障リスクが上がることは指摘されているので、出来れば健康診断の際に計ってみるとよいでしょう。
眼圧が60〜70mmHgと非常に高値の場合には24〜48時間以内に完全に失明してしまいます。
白目が充血し、非常に強い痛みも伴いますので、顔周りを触られるのを嫌がるようなそぶりをします。また壁に頭をあてたまま動かなくなったり、じっと静かに部屋の隅に隠れたりします。
とにかく早急に眼圧を下げる必要がありますので、すぐに動物病院へ診察に行きましょう。
眼圧、といいましたが動物はどうやってはかるの?とよく聞かれます。
以前は割と計りづらい、もとい、動物たちに嫌がられる計測装置しかなかったのですが、いまは点眼麻酔もなく簡便で負担のない測定器ができました。簡単に測定できますので大丈夫です。
モデルのマルコちゃんは緑内障で点眼治療をしています。
定期的に眼圧測定しているので、すっかり慣れて全く抵抗なく測定をしてくれます。
その後のレーザー治療も大好きなので、診察台の上では保定いらず、本当にかわいいですね。
時間にして一分もかからない検査ですので、緑内障好発犬種とされている柴犬、シーズー、コッカースパニエル(アメリカン、イングリッシュ問わず)、チワワ、ビーグル、またそのミックスちゃん達は念のため見ておこうかな?くらいの気軽さで測定しましょう。 猫ちゃんもじつは案外嫌がらず測定させてくれます。
診察台の上では固まってしまうので、数秒の測定をされてもそのまま、ということが多いです。
採血やレントゲン検査などと違って、むしろ聴診くらいのフットワークの軽さがあります。
緑内障は早期発見が何より大切な病気ですので、ぜひ検査へのハードルを下げ積極的に行ってほしいなと思います。
2021-05-17
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