動物病院HOME < 院長のコラム < 飼っていた動物たちとの再会?!
見事な入道雲がもくもくと空へと登り、飛行機が細い白い筋雲を引いて、空をキャンバスに変えます。
強い太陽光がすべての輪郭を鮮やかに浮き上がらせ、夏が作り上げた絵の中に自分自身が焼き付いてしまいそうな気持ちになります。
陽炎の上グラウンド、遠く響く学校のチャイム、コンビニ前でアイスの袋をもどかしげに開く夏服の学生たち、プールバッグの揺れる音、どこかから聞こえる風鈴の音。
夏にまつわるすべてはなぜかノスタルジックで、空が真っ赤に焼ける黄昏、道に長く伸びた影の持ち主が子供の時の自分のような気がして思わず耳をそばだててしまう。
幼い頃の自分がどこかの季節、どこかの情景に閉じ込められている気がして、それを探してしまう。
そんな風にやけにセンチメンタルな気持ちになるのが、普段の忙しさに情緒が死にかけている暑さに弱い大人にとって、唯一の夏の良いところなんだと思います。セミなど、地中にいる間に頭上に道路や家が建ってしまうこともあるでしょうし、そもそも地中生活でうまく成長できない幼虫もいるでしょう。
さて、お話は変わりますが、ゴールデンレトリバーの犬種発生地域はスコットランド北部だそうです。
1868年、グイシカン・ハウスのサー・ダドリー・マージョリバンクスによってゴールデンレトリバーは猟犬として生み出されました。
英ケネル・クラブに正式に種として登録されたのは1913年だそう。認められるには結構かかりますね。
先日、ネットニュースでその生誕の地を記念して、ゴールデン・レトリバーが100頭以上集まったそうです。
その映像の凄まじさたるや。
最高に、最高に可愛かったです!!
金色の毛並みがそこかしこに揺れる会場!笑顔全開の犬たち!そこここで人に可愛がられているゴールデンたち!可愛い!かわいい以外の言葉もない!
モッフモフ天国でした。いつか参加したい。
でもアリエルがスコットランドまで飛行機で貨物室に長い時間に閉じ込められているのを想像しただけで泣けてしまうので、きっと連れて行くことはできない。
仕方ない、おひとり様で行くしかない。
ただ、数え切れないほどたくさんのゴールデンの揺れる波の中に立っていたい。
それを至福と言わずなんというのでしょう。
うちのゴールデンレトリバーはアリエルで5頭目になります。
最初の子は涼輔、お嫁にきたジャニス、二匹の息子の仁くん、飼育放棄から引き取った隆二というオス三頭メス一頭の犬たちがいました。
どの子も本当に可愛くて大切で、ずっとずっとそばにいたいと願った子達でした。
今はどの子も虹の橋を渡って、お空で仕事に励む私を心配しつつ見守ってくれています。
さていきなり話は変わりますが、日本の仏教では死後の世界で裁判にかけられるのですが、そう、有名なのは閻魔大王の裁きですね。
元々この裁判は十人の裁判官によって順番に行われ、有名な閻魔大王は五番目の裁判官です。そこに至るまでに、秦広王、初江王、宗帝王、五官王と4度の裁判を受けます。この辺りは針の山を超えて、三途の川を越えるなどのメジャーな地獄が続き、五官王のところの業の秤などにかけれます。この秤も割と有名なので、ご存知の方も多いのではないでしょうか?
閻魔大王が有名なのは逸話が多いのもありますが、一番最初に地獄か極楽かの判決を出すからとも言えます。
そのあとの王たちは再審要求による高裁、最高裁みたいなものですね。
六番目は変成王、七番目は泰山王、平等王、都市王、五道転輪王と続きます。
なぜ唐突に死後の話をしたのかというと、二番目の裁判、初江王の裁判がとっても気になるものだからです。
ここでは三途の川を、きちんと決まりに従って渡ったかどうかを調べるのと同時に、生前死者と関わりのあった動物たちが呼ばれ証言台に立つ、という制度があるのです。
この罪人、要するに死者の飼っていた動物たちが証言してくれるんでうす。
生前自分を飼っているときに、この飼い主はこれこれこうでこうしてくれたので良い飼い主だと思います、減刑して極楽へやってください、的なことを言ってくれるらしいのです。
ここ!絶対ここでうちの犬たちに会えるってことですよね!
我が家の犬たちは非常にクールなのか、夢で会うこともほとんどできず、首輪を鳴らす音や、一度だけ尻尾を目撃したことがあるくらい。
獣医師という仕事に就いた大元の犬たちにはもう少しこちらを元気づける意味でも、出てきて欲しいのですけれど、本当に切羽詰まって心が挫けそうになった時にすら、顔や体どころか音としっぽという塩対応ぶり。
でも、ここでなら堂々と再会できるわけですね!
しかも生前どう思っていたか伝えてもらえる!
動物たちと暮らしている我々にとって、なんてボーナスタイム!
ずっと会いたかったあの子たちに会えるだけではなく、おそらく通訳もしてもらえる。翻訳機みたいな物があるのかもしれませんね、バウリンガルの高性能版みたいなものが。
でも会えただけで、姿を見れただけで、きっと涙で獄卒の皆さんが見えないくらいに思い切り泣いてしまう自信があります。
これで、「週末しか散歩に行ってくれなかった」とか、「耳掃除の練習を勝手にされて迷惑だった」とか「採血の駆血の練習をされて嫌だった」「卒業アルバムの撮影の時めちゃくちゃ時間かけられたの面倒だった」とかそういう文句で埋められたらちょっと悲しいのですが…。
しかもこの職業です、きっと証言台に立ってくれる動物たちは一般の方より多いやもしれない、と期待が高まります。
死んでしまった後にそういうご褒美的展開があるのなら、それはそれでいいかもしれないと結構真剣に思うのです。
動物たちと暮らすということは、生きている時間が異なる生き物と寄り添うということ。
それは奇跡みたいな時間で、巡り会えたことはただひたすらに幸運なことだと思うのです。
そしていつか来る別れもまた、避けて通ることのできない辛く悲しいことですが、それも含めた時間がお互いにとっての幸せであってほしい。
別れをつらくなくする、なんてできないけれど、ただその悲しみよりもっとずっと大きな楽しさがそれまでの過程でいっぱいあったことを、思い返して欲しい。
そうやって過ごす最期に、少しでも勇気づけられる存在でいられるように、私たち獣医師はいるのだと思うのです。
今一緒にいられる時間を、どうか大切に。
そして死後再び会うこともちょっぴり楽しみに。
そんなふうに今の季節を過ごすのも悪くないなと思います。
2023-07-31
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