動物病院HOME < 院長のコラム < 私は副医院長アリエル
私はアリエル。
ゴールデンレトリバーの女の子です。
今日も診察室でお仕事をしています。
お仕事の内容は、主に飼い主さんとお話ししてリラックスしてもらうこと。
自慢の金色のフサフサな毛並みをなでてもらったり、いつも濡れている湿った鼻先で手をつついて、匂いを嗅いであげたりします。
小さな子供たちは中にはちょっと怖いのか、おそろおそる近づいてきて、この自慢の毛並みに触るのに時間がかかったりするけれど、そういうときは何も言わずにそばにじっと寄り添って座ったりします。
たいていの飼い主さんは、「わあ!大きい!」「きれいね」「かわいい〜」「いい子ね!」って言ってくれます。
そうでしょう、そうでしょ?
私はとってもいい子で賢いので、こうやってお仕事を任せてもらえるのです。
そしてもう一つは緊張している動物たち大丈夫だよ、って教えてあげること。
他の犬が苦手な子達以外は、ケージ越しにそっと挨拶して怖くないよって伝えたりたり、ここは平気なところよ、誰もいじめたりしないわって病院内を歩き回って見せたり、静かに遠くから頑張って!とエールを送ることもあります。
ここは色々な人や動物の匂いがするし、苦手なお薬や消毒薬のにおいもします。
奥の犬舎からは入院している子やホテルの子の声が聞こえたり、検査機械やその他の器具が鳴る音も聞こえたりします。
聞いたことのない音に、見知らぬ人の匂い、お家の環境とは全く違うし、飼い主さんたちも動物たちも、初めて来るときはみんな硬い顔をしています。
それはここに来るときは、みんな体調が悪かったり、注射をしなければならなかったりするからだと、賢い私は知っています。
私がお仕事しているここは、動物病院だからです。
とっても楽しそうに来る動物たちもいます。
トリミングやホテル、もしくは診察で病院に来なれている子たちとは顔なじみなので、よくご挨拶します。
お互いに近況報告をして、あら今回はいつまでこちらに滞在予定?なんてお話しします。
診察の空き時間には病院内で追いかけっこしたりボール投げしたりして遊んだりします。
なかには診察を終えた後に涙の匂いがする動物や飼い主さんがいます。
そういうときはそばでじっと寄り添って見守ります。
私のなで心地の良い毛並みに少しでも癒されてくれたらな、と思います。
私の人より少し高めの体温にホッとしてくれたらいいなと思います。
この病院の主は、人の言葉と違うところを動物は慰めるといいます。
たくさんの言葉を尽くしてコミュニケーションをとる人間とは違って、言葉を持たない私たちは持たないからこそできる共感能力で、人の気持ちを理解するから。
たくさんの言葉を知らなくても、視線や仕草、表情、そこにいるだけで気持ちを伝えられるから。
辛い時、悲しい時、苦しい時、時に誰の言葉も響かないそんな心が迷子になったとき、私たちはそこにいることで人の気持ちを和らげることができるのだそうです。
そう言われては頑張るしかありません。私にできることはやらなきゃ!って思います。
多くの動物達が飼い主を愛しています。
その愛しい人達が、自分のことで傷ついたり悩んでいれば、同じように辛いのです。
どうか、悩まないで、悲しまないで、傷ついたりしないで、私はあなた達と家族でいられることが何より嬉しいのだから、と言葉にならない言葉で伝えているのです。
動物達と同じ目線で励ましてあげられるのは私しかできない大事な仕事です。
なので、毎日張り切って診察室に出勤します。
そうすると主はいつもお仕事ご苦労様ね、といっておやつをくれたり、夕ご飯には美味しい缶詰を内緒だよ、といいながら入れてくれるのです。
私自身はここが仕事場なので、時々ついでのよう薬を飲まされたり、注射をされたり検査をされるけれど慣れっこです。
同僚の看護師さんたちはとっても優しいし、飼い主さんたちに可愛いと言ってもらえるのはとても楽しいし、診察室から眺める外の世界が気に入っています。
じっと伏せたまま通り過ぎて行く人波を見ていると、時折不思議そうにガラスに近づいて来ては、私が顔を上げる様子を見て驚いたように笑ってまた離れて行く人たちもいます。
動かないせいで何かの置物だと思われているのかもしれません。
実際に待ち合室にはライオンの大きめのぬいぐるみ、もといベンチが置いてあって、たまに犬と勘違いされるのです。
ガラス越しに、むくりと顔を上げた時のあっけにとられた顔が面白くてわざと近くにくるまで動かなかったりします。
通りがかりに手を振ってくれる人や、歓声をあげて寄ってくる小さな子供たち、みんな私を見ると笑顔になるので私も嬉しいのです。
お散歩もよく行きます。
いつもお仕事の合間に腰にレーザーを当てているので、本当は歩けないくらいに骨が変形しているのだそうですけれどそんなことちっとも感じません。
1時間弱のお散歩を気ままにします。
妹分のベルは私が一緒についてきているかどうかをしきりに気にしながら散歩します。
先に行きたがるくせに、私が止まるとすぐに戻ってきます。
雨が降っていたり、気が乗らないときは短い散歩にするときもあります。
病院の自動ドアをでてトイレだけ済ませ、すぐに戻って来るので、「一二歩三歩だね!」といわれます。
散歩の行き先はいつも私が決めることにしています。
無理に行きたくない方に引っ張られても、絶対に動きません。
リードを引っ張られて首輪が食い込んでもテコでも動きません。
道路に伏せてジロリとにらめば、いつだって私の意見が通るのです。
散歩をしてあげていると飼い主は思っているのかもしれませんが、逆です。私が連れていってあげているのです。
1日の診察が終わるとご飯の時間です。
なんだかよくわからない薬やサプリメントをいっぱい入れられていますが、内緒の缶詰がとっても美味しいので気になりません。
たまに器に張り付いている薬をわざと残すとおやつに包んで飲ませられます。
このおやつが欲しくてわざと残すこともありますが、まだバレていないようです。
全く主は抜けているのです。
そのぶん私がしっかりしなくては。
今年の夏に、私は大きな病気をしました。
急に気持ち悪くなって目が回ったようになり、歩きたいのによろよろとして体が言うことを聞かなくなりました。
たくさん検査をしました。
小脳梗塞、と言う病気だったと聞きました。頭の血管が詰まってしまう病気だそうです。
もう歩けなくなるかもしれないと言われました。
主はメソメソと歩行補助具を用意し、カートを用意し、歩けない生活への備えを始めました。 とんでもないことです!
歩けないなんて冗談じゃありません。
美味しいおやつを盗み食べるのにも、好きな公園に行く時も、海の砂浜に行くためにも歩けないと困ります。
メソメソしている主人の横で、私は断固として歩くと決意しました。
夜、ふらつく体を踏ん張って入院ケージの外に出すように要求しました。
まだ下半身がしっかり立たないのが悔しいのですが、安静にしていろと言う指示に従う気はこれっぽっちもありません。
断固たる覚悟で外に出すようにと睨んでいると、主は折れてケージの扉を開きました。
点滴を止め、思うように動かない体をケージの外に引っ張り出されました。
そうして補助具で後ろ足を主が支え、ゆっくり一歩づつ歩きました。
ほら、やっぱり!ちゃんと歩けるじゃない!と主を振り返れば、顔をくちゃくちゃにして泣いていたので、全く情けないことです。
翌朝には自力で立てるようになりました。
二週間で階段を歩けるようになりました。
今は少しだけ足が揺らぐこともあるけれど、走ることもできるようになりました。
何事も意志の力に勝るものはないと思います。
そんな私は13歳になりました。
歴代の犬たちの中でも若々しく、元気で綺麗だと自負しています。
毎日出勤をしているせいでしょうか、クッチャネだけしていたらきっとボケてしまうのだと主人は言いました。
気持ちの張りは大切です。
少し耳が遠くなったので、都合の悪いことは聞こえないふりもできますし、注意されても無視することも覚えました。
おやつやご飯をもらっていないとシラをきるとまず騙される主はどうかと思います。
私はこの病院が好きです。
たくさんの飼い主さんに会えること、どうぶつたちに会えることが好きです。
私がいることで誰かの気持ちを慰められたらいいなと思います。
ついでに主のフォローをしてあげなくてはならないと思っています。
これからもマイペースにしっかり仕事をしていきます。
ジャンボどうぶつ病院 副医院長 アリエル
2022-11-16
「うちの子の様子がおかしい?」「狂犬病の注射を受けさせたい」「避妊手術はいつすればいいの?」など、お気軽にご相談ください。
tel03-3809-1120
9:00~12:00 15:30~18:30
木曜・祝日休診
東京都荒川区町屋1-19-2
犬、猫、フェレットそのほかご家庭で飼育されている動物診療します