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日本最古の獣医医療
日本最古の獣医医療

梅雨が明けて一転、とんでもない高温が続きますが、皆様体調はいかがですか?

連日連夜の熱帯夜に多くの動物たちも体の具合をおかしくしています。

しかし未だに真昼間の午後二時、お散歩に行かれている飼い主さんがいらっしゃるのですが、飼い主さんも犬も命の限界にチャレンジするのはやめていただきたいですね。

地面のアスファルトに触ってみたらわかりますが、暑さもすごいですし、爪が食い込むくらい柔らかくなっていることもあります。

車内の放置したペットボトルが変形したりもするくらい暑い時期です。

空調をかけることが苦手な方も多いとは思いますが、どうぞご自身とご家族、そして動物たちの命を守るために空調を必ずつけてください。暑さに慣れない体は想像よりもずっとずっと消耗しています。こちらから助けてあげないと、手遅れになります。

それから朝ごはんを抜くと、同時に水分も抜いていることになります。人だとおおよそ一食で食事に含まれている水分はコップ二杯半分。よって食欲がないからと食事を抜けばそのぶん足りなくなります。どうぞ意識して水分をお取りください。

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さて、皆さんは日本で一番古くに行われた獣医医療はいつで、なんであったかご存知でしょうか?

じつはみなさんもよく知る、因幡の白兎のお話なのだそうです。

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あるところに、「八十神」という神様の兄弟神がいました。

神々は因幡の国にいる美しいと有名な「八上姫」に求婚をしに行く道中、毛をむしられて丸裸になり泣いている兎と出会います。

赤向けになっている兎とその理由を聞いた神々はそれを面白がって、「海水を浴びて、山の頂上で風と日光を浴びていれば治る」と言いました。

言葉を信じた兎が実際にやってみると、塩にかぶれた肌は炎症し、風にさらされてひび割れ血がにじみ痛みはひどくなる一方です。

そこへ、ほかの兄神たちの荷物を全部持たされていた大國主命という神様が遅れてやってきました。泣いている兎を見て理由を聞き兎はこう語ります。

「隠岐島にいた私は、どうにかして因幡の国まで行ってみたいと考えていました。しかし自分の力では渡ることができません。そこで一計を案じ、和邇にこう声をかけたのです。『あなたたちと私たちの種族は、どちらのほうが数が多いか数えてみよう。できるだけたくさんの仲間を連れて、並んでください』と。

そして兎は、ずらっと並んだ和邇の背中の上を渡って、因幡の国に行くことに成功しました。

しかしいざ降りたとうとする時に、『お前たちは騙されたのさ』とからかってしまったのです。そして和邇の怒りを買い、全身の毛を剥ぎ取られて丸裸にされてしまいました。

その後泣いているところへやってきた八十神たちの言うとおりにしたところ、このような有様になってしまったのです」

この話を聞いた大國主命は、兎をかわいそうに思い、「河口に行って真水で体を洗い、蒲(がま)の穂を敷き詰めたうえを転がりなさい」と教えてあげました。

兎が大国主の言うとおりにすると、体の傷はたちまち癒えていき、毛も元通りになりました。

感激した兎は「あなたこそが八上姫の婿になるお方。あの意地悪な兄神たちは八上姫を貰い受けることはできないでしょう」と伝えます。

さきに八上姫のもとに八十神たちが着き、求婚をしますが、八上姫は相手にしません。

そして、八十神たちの荷物を持って遅れてやってきた大国主の姿を見ると、「荷物を背負っているあなたの妻にしてください」と言い、兎が言ったとおりに2人は結ばれることとなったということです。

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この大國主命が清水で体を洗い、蒲の穂のうえを転がるように指示をしたのが日本最古の獣医医療だとされているのだそうです。

ちなみに和邇はサメのことではないかとされていますね。

実際蒲の穂の花粉は蒲黄(ホオウ)と言います。古代から,止血,通経,利尿薬として用いられています。傷の治す作用の有ることが分かります。成分としてはフラボノイドの isorhamnetin等が含まれます。立派な治療効果がみとめられているのです。

じつは八十神の兄たちがいった海水で体を洗う、というのも、かつて海水に殺菌効果があるとされていた、いわゆる迷信的な治療を表しているのではという話でした。

先日新聞に乗っていた記事で知ったのですが、このことから日本獣医師会の本部は島根県に置かれているのだとか。

大学でも聞いたことのなかった獣医医療の始まりが、まさか古事記まで遡るとは…驚きでした。

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猫のまたたびのお話もそうですが、昔から語り継がれた言い伝えや伝説などにはそれ相応の背景や理由が隠されていることがあります。

それらが科学のアプローチにより明らかになるのは、とてつもなくロマンチックな気がします。

たとえば狼男の伝説が狂犬病の発症症例を表しているのではないか、満月におかしくなるのは発作によるものではないのかなど、非科学的な話が科学にリンクする面白さなんとも言いようがありませんが、そんな研究をしたら面白かったなぁ、なんて思う梅雨明けの午後なのでした。

2022-07-04

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